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超弩級超重ゴーレム戦艦 ヒューガ  作者: 藤 まもる
第2章 迷宮探索編
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第14話「パーティ結成」

「きゃああああっ!!」


 ソフィアの大きな叫び声が迷宮に響く。

 俺は最短ルートで、ソフィアの元に走る。


 回廊から横道に入り部屋の中に。

 そこからもう一つ向こうの部屋に突入すると、

 ソフィアをすぐに発見した!


 ソフィアはゴブリンに取り囲まれていた。

 やはり戦っていた時に、後ろからゴブリンに襲われたのだろう。

 レイピアは床に落ちており、

 左手の湾曲短剣ファルカタを必死に振り回して、

 ゴブリンをけん制していた。


 状況を見た俺は、手甲剣セスタ・エスパーダを外し、

 背中の投擲短槍ショート・ランザーを1本引き抜き、

 ソフィアに殴りかかろうとするゴブリンの背中に向けて、

 槍を投擲した。


「ギャア!」


 槍は見事にゴブリンの背中を貫き1匹を倒した。残り6匹。

 俺は手甲剣を装着し突撃、相手が混乱してる隙に2匹を刺殺。

 床に落ちていたレイピアを、ソフィアの方へ蹴り飛ばす。


 続けて前方のゴブリン2匹に突撃。

 1匹目を突き抜き、2匹目を斬撃で打ち倒す。

 残り2匹は、棍棒をソフィアに振るうが、ソフィアはなんとか回避。

 俺は横から高速接近。

 横なぎに2匹のゴブリンの背中を切る。

 慌てるゴブリンに突きを入れ、止めを刺してゴブリンは全滅した。


 しばし呆然としたソフィアだったが、

 両目に涙を溜めて、レイピアも湾曲短剣ファルカタも放り出して、

 俺に抱きついてきた。


「うああああ、怖かったよー!」


 ソフィアは俺の胸の中で、激しく泣いた。

 強気な女の子だったのに意外な反応だ。

 本当は怖くて、一杯一杯だったのだろうか。

 俺は周囲を確認してから、ソフィアの頭を撫でた。

 ナデナデ……

 しばらく泣いて落ち着いてきたので、優しく話しかける。

 

「大丈夫だった? ここは危険だから、ドロップ品を拾って一旦迷宮の外に出よう」


「うん……」


 ソフィアは素直に言うことを聞いてくれた。

 幸い出口までに他のゴブリンとの接触はなかった。

 迷宮の外に出て、入り口付近で座る。

 右手を痛そうにしていたので、移送リングから低位ポーションを出して、

 ソフィアに与えた。


「ごめん、ありがとう。色々……」


 ソフィアは俯きながら礼を言う。

 強気だったのに、しょぼくれた犬みたいになったソフィアを見て、

 俺はなんだか彼女が可哀想になってきた。

 それからしばし、生き埋め現象の説明。

 しばらく雑談してると、ソフィアはポツポツと自分の身の上を話す。


 なんでもソフィアの母親が病弱で、薬を手に入れる為に、

 迷宮でお金を稼ごうとしたようだ。

 父親は冒険者だったが、彼女が幼い頃に死んだらしい。


「そっか、だったらさっきのゴブリンのドロップ品、全部やるよ」


「えっ、そんな悪いよ……」


「いいから、いいから。お母さん元気になるといいね」


 彼女は辞退したが、半ば強引にドロップ品を渡す。

 ソフィアの右腕はまだ痺れているようなので、

 今回は探索は諦め、家に戻ることにする。

 ソフィアもリリアの町に住んでるとの事。

 というわけで町まで送ることにした。

 俺も探索って気分じゃないし。



 二人で海岸沿いに町に向かう。

 ふとソフィアの横顔を眺める。

 潮風に吹かれて、肩まで伸びた黄白色の、

 いや、クリーム色の髪がなびく。

 表情が鬱としているが、

 エルフ特有の美しい顔が、

 背景の海の色によく映える。


 それにしても、すんげぇ落ち込んだ表情だな。

 でもなんか助けたくなるんだよなぁ。

 せっかくの機会だから、思い切って聞いてみるかな。


「なあソフィア。一緒にパーティー組まないか?」


「パーティ?」


 ソフィアは意外そうな顔をする。


「ああ、俺も雑貨迷宮を本格的に攻略したいしさ。3層以上はできればパーティを組んで欲しいって母にも言われてるんだ。」


「うーん。私でいいなら……。でも一応お母さんに話しておきたい」


「そっか。俺も付き合ってる彼女がいるから、許可が出たらでいいかな? 君は女の子だし」


「ふうん。彼女……」


 というわけで、許可を取り次第、

 ソフィアとパーティを組むことになった。

 明日、朝に総合ギルドの前で集合と約束してから、

 俺はグラナドス牧場に向かった。





    超弩級超重ゴーレム戦艦ヒューガ

   ⇒第2章 迷宮探索編





「はあ、なるほど……」


 ちょうど昼にグラナドス牧場に着いた俺は、

 パッツィを見つけて、一緒に昼飯を食いながら、

 ソフィアのことを話した。


「まあ別にいいけど。私もソールが心配だし、ソロで探索するよりマシだと思う」


「あっ、本当にいいの? 相手一応女の子だけど……」


「何、そういう雰囲気なの?」


「いやいやいや、絶対違うから、それは保障する」


 俺にも彼女にも恋愛感情は無い。

 それは間違い無いだろう。

 最初から俺にケンカ腰だったし、

 ソフィアを助けて、多少しおらしくなったけど、

 だからと言って、信用できると思われても、

 恋愛に発展するとは思えない。


「俺が付き合ってる彼女がいる。って言ったけど、特に関心は示さなかったしね」


「だったらただのパーティーメンバーでしょ。私は大丈夫よ」


 パッツィはにんまりと笑った。

 筋さえ通せば、パッツィは大抵はサバサバ対処してくれる、

 あまり細かいことは気にしない性格だ。

 ただ怒らせるとかなり怖い。

 なんというか覇気がある。と言うのかな。


「どうせ…………独り占めは無理……なんせ声が……だからねぇ……」


 なにやらパッツィは、小声でボソボソ喋ってる。

 なんの話だろ。聞き取れないなぁ。


「ん、何?」


「ううん。なんでもないわ。フフフ……」


 パッツィは俺に微笑み、俺もつられて笑う。

 きっと独り言だったのだろう。

 何はともあれ、これで俺もやっとパーティ結成できそうだ。




 翌朝、総合ギルドの前で待っていると、ソフィアがやって来た。

 向こうも母親の許可が出たそうだ。

 俺達はさっそくパーティ結成の手続きをすることになった。

 受付のおっさんの所に行き、

 パーティ結成の手続きを行なう。

 するとおっさんがソフィアに話しかける。


「おいおい、お前ソフィアじゃないか。いつの間に探索者になってたんだ?」


「ギルドマスター……」


 えええ、このおっさんギルドマスターなの!

 総合ギルドでよく見る人だから、

 てっきりただの受付の職員かと思っていたよ。

 ギルドマスターに一応挨拶を。


「気づきませんでした。まさかギルドマスターが受付やってるとは……」


「ハハハ、ここは小さなギルドだからね。ギルマスでも受付ぐらいするさ。俺はこの総合ギルドのギルドマスター、ホセ・アントニオだ。ついでにソフィアの総合剣術デストレーサの師匠でもある」


「そうなんですか」


 ギルマスから剣の扱いを教えてもらったわけか。

 ソフィアはバツの悪い顔をしている。


「なんだその顔、お前はまだ未熟者だから、雑貨迷宮行くならパーティー組めと言ったのだが、まさか1人で行ったのか?」


「ごめんさない……」


 ソフィアが謝る。

 どうやらギルマスに黙って迷宮に挑んだようだ。

 ソフィアは、ホセさんにこれまでの経緯を話した。


「ふん。ソールヴァルト君が助けてくれなければ、危なかったわけか。彼に感謝しなくてはいけないぞ、ソフィア」


「はい。もちろんです」


「それで今日は、ソールヴァルト君とパーティーを結成するのだな。私からもソフィアのことをよろしくお願いする」


「あっ、いいんですよ。俺もパーティーメンバー欲しかったですから」


 それからパーティー結成の手続きを行なった。

 パーティー名はとりあえず「ケンタウロ・マキア」とした。

 ギリシャ神話のケンタウロスの戦いの事をそう呼ぶ。

 意味は特にないのだが、牛繋がりということで。


 それから魔法水晶に俺とソフィアが手を当てて、

 ギルドカードに情報を登録。

 正式にソフィアとパーティーを組んだ。

 グフフフ、魔王の手下ゲットだぜ。


 なんていうのは冗談だが、

 イレーネの様子とステータスは毎日チェックして、

 魔王の配下扱いされても、特に悪い影響は見受けられなかった、

 ということは確認している。


 それはそうと、ソフィアにもスキル【魔王軍団】が適用されるので、

 戦闘での経験値20倍が適用される。

 話しておかなければ、すぐにバレるのでソフィアに教えておく。

 正直には言わず神様の加護ということにしておこう。


「俺さ、神様の加護がついてるんだ。だから俺のパーティーに入ると経験値が20倍多く入ってくるんだ」 

 

「ええっ、本当に!」


「それとレベルアップした時の取得スキルポイントも、5Pから8Pにアップするんだよ」


「ちょちょちょ、何それ凄いじゃん!」


 この話にソフィアはえらく興奮した。

 しかし、誰にも話さないように口止めしておいた。




****


 午後からはとりあえず、ソフィアのレベルアップを、

 雑貨迷宮で重点的に行なうことにした。


 最初のうちは、かつてイレーネがやっていたように、

 赤盾レッドエスクードでゴブリンを挑発し、

 俺が多くのゴブリンを受け持ち、

 ソフィアに少数のゴブリンと戦わせて、

 戦闘に馴れさせた。


 戦いながらソフィアに迷宮のイロハを教え、

 1層のボス、ハンマーゴブリンを倒し、

 2層に降り、ソフィアを前衛、俺を後衛にして、

 ナイフゴブリンと沢山戦わせた。

 

 夕方、探索が終了した俺達は雑貨迷宮を出て、

 ソフィアに自分のステータスを確認させる。


「ひゃああああ。レベル11。午後だけしか戦ってないのに、こんなにレベルが上がった。神様の加護って本当なのね」


 ソフィアは驚きつつも興奮。

 さっそく取得したスキルポイントで、

 【剣術レベル2】【短剣術レベル2】を、

 それぞれ3に上げた。



レベル11


ヴァイタル 75/75


スキルポイント 10P


種族スキル 精霊赤魔法



スキル(4/9)


【剣術レベル3】【短剣術レベル3】


【料理レベル1】【裁縫レベル1】



「うっ、私本当にソールヴァルド君とパーティー組んで良かったよ。ヒック、やっと私にも運が向いてきたのね」


 そう言うとソフィアは泣き出してしまった。

 おいおい、泣くことはないだろう。

 なんか色々……つらかったのかな。


「そんなに泣くなよ。それから俺のことはソールと呼んでくれ」


「分かったソール。あたし頑張るから、これからもよろしくね」


「ああ」


 ソフィアと握手して、俺はハンカチで涙を拭いてやった。



 次の日も、朝から雑貨迷宮に入る。

 ソフィアも大分戦闘には馴れたものの、

 レベルアップの速度が落ちている。

 やっぱ経験値20倍と40倍じゃ、

 成長に差が出るんだな。


 昼に適当に切り上げてから、迷宮の外に出て、

 近所の古代遺跡の石に座って昼食を取る。

 海風が気持ちいいな。


 俺は、イレーネに作ってもらったサンドイッチを出す。

 肉や野菜がたっぷり詰まった、上手そうな大きなサンドイッチだ。

 家にいる時は、1日5回食事を摂ってるが、

 さすがに迷宮へ入っている時は、食事は1日3回としている。


 俺が海を見ながらサンドイッチを頬張っていると、

 隣から「ゴクッ」と音が聞こえた。

 ソフィアをチラッと見てみると、

 俺のサンドイッチを凝視していた。


 ソフィアが手に持っている食べ物は黒パンと水のみ。

 ああ、そういうことか。

 多分かなり貧乏なのだと思う。

 敗残兵でも、もう少しまともなもん食ってるぞ。

 どうするべきか。


 俺はサンドイッチを3つ食べて、

 残り2つをソフィアにあげることにした。


「なんかお腹一杯だなぁ。そうだソフィア。残りのサンドイッチ食べる?」


「え、いいの?」


「いいよいいよ。家に持って帰っても不味くなるし」


 遠慮するソフィアに無理やりサンドイッチを渡す。

 ソフィアは上手そうにモキュモキュとサンドイッチを食べた。


「おいしー。ソール君ありがとう。このサンドイッチ凄くおいしいよ」


 いかん、ソフィアが可愛い。

 ソフィアは夢中でサンドイッチを頬張っている。

 なんというか母性本能ならぬ父性本能が刺激される。

 なんか子猫っぽい。

 デザートに市場で買った林檎も半分に割って、ソフィアに渡した。


 そうだな、今度からイレーネに頼んで、

 お弁当をもう一つ作ってもらおう。

 俺とパーティを組んで貰ったし、

 病気のお母さんもいるようなので、

 それぐらいはしてあげたい。



    第14話 「パーティ結成」

   ⇒第15話 「雑貨迷宮第4層」


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