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超弩級超重ゴーレム戦艦 ヒューガ  作者: 藤 まもる
第1章 転生、目指せマタドール編
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第9話「闘牛ギルド」

 初めて迷宮に挑戦してから、早1年。

 週1~2回迷宮に通い、扇風機を作って売り、妹に勉強を教えたりと色々と充実した1年だった。

 迷宮に入る日数を抑え、なおかつ3階層までしか潜らなかったが、俺のレベルは飛躍的に上昇している。

 新たに盾術を取得し、特殊剣術レベルを4に、身体強化レベルを3にして、

 平均的にもレベルを上げている。


 別に最強を目指しているわけではないが。

 チートだと、手を抜いてもやはり目立つな。

 母や父からは神童扱いされる。

 困ったものだ。



レベル14


ヴァイタル 203/203


スキルポイント 0P


特殊種族スキル 【魔王レベル3】

特殊種族魔法  【封印中】


スキル(6/20)

【特殊剣術レベル4】【盾術レベル2】【身体強化レベル3】


【鍛冶魔法レベル3】【土木魔法レベル2】


【魔法陣作成レベル2】



 お金に関しても順調に貯まっており、少々無駄使いしているが、それでも金貨は30枚も持っている。

 本当は金貨40枚あったのだが、10枚は家に納めた。

 それでお金を貯めてる理由だが、魔牛を買うためだ。

 

 闘牛ギルドに合格すれば、訓練を受けることが出来るのだが、最終的に闘牛士マタドールになるためには、魔牛と実際に手合わせして訓練するのが、一番上達が早いらしい。だから俺は金を貯めているわけだ。




 俺は今年、かぞえで15歳になる。

 闘牛ギルドでは、満15歳でなくても試験が受けられるのだ。

 俺は今、木の柵の中にいる。

 大きな囲いで、同い年の男が15人ほど囲いに入っている。

 俺を含め全員、上半身に赤いシャツを着ている。


 柵の外を見ると、人間族のおっさんが2人立っている。

 偉そうな男と帽子をかぶった男だ。

 帽子をかぶった男が怒鳴る。


「準備はいいな。最初に自己紹介だ。俺はウーゴ・バスケス。闘牛ギルドの教官だ。後ろにいるダンディな男が、ギルドマスターのゴンサレス・スルバラン様だ。」


 後ろのゴンサレスも叫ぶ。


「よし、では試験を開始する! 10分間逃げ切れば合格だ。治療師は準備してるからケガの心配は無い。ではスタート!」


 柵の向こうの仕切り板のある囲いに200キロ級魔牛が現れた。角は折ってある。

 俺は今日、闘牛ギルド入会の試験を受けている。

 試験内容は単純。

 10分間魔牛の突進をかわし続けるだけだ。

 

 仕切り板が外され、200キロ級魔牛が猛然と俺達に突っ込んでくる。

 さっそく逃げ遅れた2人が吹き飛ばされた。

 

 全員蜘蛛の子を散らしたように逃げ出す。

 魔牛は俺の後を追いかけて来るようだ。

 俺の後ろを走っていた男が、刎ね飛ばされる。


 俺が右側を確認すると、男2人がこちらを凝視している。

 フッ、我が野望のために、お前らには贄になってもらうぞ。


 俺は急激に方向転換してダッシュ。

 そのまま凝視している男達の間を抜けた。

 男達は慌てて左に逃げるが、間に合わず2人とも吹っ飛ぶ。

 作戦は成功だ。

 魔牛は遠くの赤シャツの男の方に突っ込んでいく。

 ふう、しばらく休憩できるな。

 

 遠くから眺めていると、集まっていた5人に魔牛が突っ込んでいく。

 皆必死に逃げるが、魔牛のほうが足が速く、3人が吹き飛ばされ、1人は真上に跳ね上げられた。

 こりゃ最後の1人も吹き飛ばされるな、と思ったが、

 最後の青毛の男は、横っ飛びして回避し、走って距離をとる。


 やるなあいつ。

 俺は青毛を鑑定してみた。



名前 エヴァートン・バリュス・リーリョ

種族 人間族

職業 猟師


レベル8


ヴァイタル 63/63


スキルポイント 10P


種族スキル 頑丈



スキル(5/9)


【猟師レベル2】【身体強化レベル2】


【弓術レベル2】【短剣術レベル1】


【剣術レベル1】



 ほうほう、猟師か。

 14~15歳の年齢の割にはレベルが高いな。

 平均はだいたいレベル5程度なんだけどね。

 身体強化のレベルは2か。

 だから身のこなしがいいんだな。


 最初、ここには15人立っていたのだが、今は6人になっている。

 魔牛は囲いの中心でしばらく停止。

 それから、急に青毛の男を含む3人に魔牛が突撃した。

 2人がぶっ飛んだが、青毛の男がこっちに走ってくる。


 その手にかかるか。

 俺は走って魔牛と距離をとる。

 青毛の男は残り2人の男に近づいて左に曲がる。

 魔牛は2人の男に突撃し、2人をはねる。


 青毛の男は、魔牛に追われつつ俺の所へ走ってくる。ちっ。

 俺はあえて魔牛に全力で突撃。

 ぶつかりそうになった所で跳んだ。

 そしてそのまま魔牛の左側を抜け、1回転して魔牛の背後に着地。

 魔牛をかわして距離をとる。


 残るは俺と青毛の2人のみ。

 魔牛は囲いの中心で交互にこちらを睨む。

 フン。青毛君、なかなかいい走りだった。

 だが最後に残るのは俺なんだよ。


 魔牛が再び走り出す。

 と、唐突に「ピーッ」と笛がなる。


「よし、10分経過した。そこの2人、合格だ!」


 俺と青毛は思わず目を合わせる。

 そして示し合わしたように、後ろにダッシュした。

 俺達は全力疾走で柵に手をかけ、柵を飛び越える。

 着地した瞬間、後ろで魔牛が柵にぶつかっていた。

 あぶねぇ、ギリギリセーフだったな。

 教官ウーゴ・バスケスが声をかけてきた。


「よくやった2人とも。2年ぶりの合格者だ。今から闘牛ギルドの加入手続きを行なう」


 しばらく休憩し俺達は息を整え、手続きのため教官についていく。

 青毛が俺に話しかけてきた。


「やっと合格だね。俺はエヴァートン・バリュスっていうんだ。君すごい体術だったね。これからヨロシク」


「君もなかなか良い走りをしてたよ。俺はソールヴァルト・ローズブローク。こちらこそヨロシク」



 お互いに自己紹介する。

 そのまま闘牛ギルドに加入。翌日から週3の訓練を開始。

 ほぼ実技中心に学習する。


 練習は一輪車に牛の角をつけた模擬牛を使う。

 1人が模擬牛で牛の役を勤め、もう一人が半円赤布ムレータや剣打ちの訓練をする。

 俺とエヴァートンで交互に訓練を行い、

 教官ウーゴの指導を合間合間で受ける。


 俺とエヴァートンは闘牛士マタドール希望なので、まずは闘牛士補佐スバルテルノになる必要がある。

 本番を何回か経験してから、自分で魔牛を買って出演。下級の闘牛士マタドールとして闘牛場でデビューすることになる。

 




    超弩級超重ゴーレム戦艦ヒューガ

   ⇒第1章 転生、目指せマタドール編





 1ヶ月が経過した。

 今俺は町の外、すぐ北側にある「グラナドス牧場」に向かっている。

 遠目で何回か見たことはあるが、入ったことは無い。

 

 俺が何故そんな所に向かっているかというと、魔牛を買うためだ。

 教官によればリリアの町付近で、魔牛が手に入るのはこのグラナドス牧場だけという。

 ここには、闘牛の練習場もあるため、

 闘牛ギルドのカードを提示すれば、無料で練習できる。

 もちろん魔牛を購入しなけりゃダメだけどね。


 グラナドス牧場に到着。

 木で作った門をくぐる。人影はない。

 内部には柵で区切られたスペースがいくつかあり、

 色々な動物が飼われている。


 馬、牛、羊、鶏などを飼育しているようだ。

 4本足の牛は地球と変わらんが、6本足の大きな牛がいる。

 見慣れないので、そのヘンテコな牛を観察。

 600キロ級ぐらいか、デカイな。

 

 ふと気づくと、足元に犬が走りよってきた。

 この犬も変わっているな。

 中型のブルドックだが、頭から背にかけて硬い皮膚が走っている。

 尻尾を振っているので頭をなでると、ベロベロ舐められた。

 かわいいなぁ。


「あっ、いらっしゃい。何か御用ですか?」


 突然声をかけられたので、顔を上げて声の主を見た。

 そこには同い年ぐらいの女の子が立っていた。

 牧場の人だろう。


「どうも。勝手に入ってすみません。誰もいなかったもので」


「ああ、気にしないで。ここ広いから」


 女の子は茶色のショートカットの髪に、青目。

 頭に黒耳がふたつ見える。お尻に柔らかそうな尻尾。

 獣魔人族というやつだ。同い年くらいか。

 

 分厚い白上着に、黒色の獣皮のズボン。

 茶色のチョッキを着ている。

 この世界の人ってチョッキ好きだよね。

 ときおり母親が何故だか買ってくるから、

 俺も家にもチョッキが10着ぐらいある。


 彼女の尻尾はぶんぶん振られている。

 ぬう、異常にモフモフしたくなる。

 手触りがよさそうだ。


「い、犬耳……」


「犬? いきなり失礼ね。私は獣魔狼族よ」 


「ああ、ごめんなさい。獣魔人族はよく分からなくて」


 彼女は一瞬キッと睨んだが、すぐに笑顔に戻る。


「私はパッツィ・グラナドス。この牧場を経営しているグラナドス家の娘よ」


「俺はソールヴァルド・ローズブローク。闘牛士見習いだ。よろしく」


 そう言いながら、パッツィを鑑定してみる。



名前 パッツィ・グラナドス・カランカ

種族 獣魔狼族

職業 猟師


レベル7


ヴァイタル 56/56


スキルポイント 5P


種族スキル ハンドラー



スキル(7/9)


【剣術レベル1】【弓術レベル2】


【身体強化レベル2】【猟師レベル2】


【家畜飼育レベル1】【商人レベル1】


【経営レベル1】




 エヴァートンと同じ猟師か。

 スキルに経営とか商人とかあるな。

 牧場経営見習いって感じかな。

 

「へぇー、闘牛士見習い。ということは今日は魔牛を買いに?」


「そうなんだ。練習用の魔牛が欲しいんだよ」


「魔牛は一番安いのでも金貨10枚するわよ。大丈夫?」


「ああ、お金については大丈夫。貯金はあるから」


 というわけで、パッツィと一緒に魔牛を見に行く。

 頑丈な牛舎に、魔牛が6匹ほどいた。

 人に馴れることはないので、1匹ずつ厳重に隔離してある。

 魔牛は200キロ級で金貨10枚。250キロ級で金貨20枚。

 300キロ超で金貨40枚もするのだそうだ。

 俺は200キロ級の魔牛を購入することにした。

 パッツィに金貨を払い、魔牛所有証明を貰う。


「それで、今度から言ってくれれば魔牛を練習場に出すわ。あそこの小屋が事務所よ。管理費は年金貨3枚、ほとんど餌代だけどね」


「餌代で年間金貨3枚。けっこう安いんだね」


「魔牛は迷宮産だから、基本栄養は大気中の魔素をとるのよ。それでも毎日水と、たまに餌が必要なの」


 へえ、魔牛は魔素を吸収できる能力があるのか。

 普通の牛とは違うんだな。 

 今日はとりあえず町に帰って、明日から練習することにしよう。




 次の日、さっそく練習のためグラナダス牧場に向かう。

 事務所に行くと、落ち着いた感じの獣魔狼族の女性が応対する。


「こんにちわ。私はパッツィの母よ。あなたがソールヴァルド君ね。フフ、アベルさんから聞いてるわよ」


「あっ、うちの父と知り合いだったんですか。」


 そりゃそうか、アベルも闘牛士なんだから知らないわけが無いな。

 でもパッツィの母は、父からどんな風に俺のことを聞いてるのだろうか?


「なんでも11歳で魔道具を開発した天才少年と聞いてるわ」


「いやいやー。それは過大評価しすぎです。ただの親バカですよ」


 あの野郎、そんな話をばら撒いてるのか。

 あんな単純な魔道具で天才とか、ありえないし。


「ところでパッツィはどうだった。なかなか器量が良いでしょう?」


「あっ、はい。かわいいお嬢さんですね」


「自慢の娘よ。健康で凄く頑丈。風邪以外病気にかかったことはないわ。健康な赤ちゃんを産めるわよ」


「はあ……」


「お尻も胸も大きいし、安産型だから産後も回復は早い。経営も学んでるから財産管理もバッチリなの」


 ええ?

 なんかおかしい方向で話が進んでる気がするんだけど、

 気のせいなのか?

 と、パッツィが家の方からやって来た。

 顔を真っ赤にして母親につっかかる。


「何変なこと言ってるのよ母さん! ああ、ソールヴァルド君気にしないで、練習に来たのよね、練習場にすぐ行きましょう」


 そういうとパッツィは、俺の手をとって引きずるように離れる。

 一体なんなんだ。

 パッツィの尻尾はもの凄い勢いで左右に振れている。

 後ろからパッツィの母親が声をかける。


「頑張ってねパッツィ!」


「うっさい!」


 パッツィは顔を真っ赤にしながら、母親に叫ぶ。

 何コレ? 反抗期かなんかか?

 俺達は早足で練習場についた。

 パッツィは魔牛を鞭で叩きながら、練習場に誘導する。

 頑丈な木の柵の通路で隔てているので危険は無い。


「じゃ、魔牛は出したから。今日はいつまで練習する予定?」


「うんと、午後3時くらいまでだね」


「分かった、その時間に魔牛は牛舎に戻すわ。チャオ!」


 パッツィはそう言って鶏舎のほうへ走っていく。

 さて、落ち着きを取り戻した俺は、魔牛との訓練を開始する。

 持ってきた半円赤布ムレータを持って、

 魔牛の突進を軽くいなす。


 スペインの闘牛は、こういう訓練をすると学習してしまい、

 次からは赤布に反応せず、赤布を振っている本人に向かうという。

 赤布は初見しか通用しないわけだ。

 だから闘牛で訓練するのは金がかかるし大変だ。

 とネットで読んだことがある。


 しかし魔牛は牛より頭が悪いのか、何回訓練しても赤布に向かってくる。

 学習能力が無いので、まことに闘牛向きの牛と言えよう。

 こっちの世界の闘牛が、牛を使用せず魔牛を使うのは当然と言える。


 2時間ほど闘牛技ランセを練習して柵の外に出る。

 そこにはいつのまにかパッツィがいた。


「さすがね。なかなか格好良かったわよ」


「ど……どうも……」


 なんか照れるな。

 練習しているのを他人に見られるのは、

 これが初めてだ。


「もうお昼だけどご飯はどうするの?」


「ああ、サンドイッチと水筒持ってきたんだけど……」


「じゃ、あっちにテーブルとベンチがあるんだけど、一緒に食べない?」


 というわけでパッツィと一緒に食事することになった。

 のどかな牧場に芝生の風、真っ青な青空。

 うーん。スローライフだなぁ。


「朝はごめんねソールヴァルド君。お母さんはせっかちというか……」


「ううん。別に気にしてないよ。それと俺のことはソールって呼んでくれ。家族もそう呼んでるし」


「分かったソール。じゃ私のことはパッツィと呼んで。フフッ……」


 そういうとパッツィは青い瞳で俺を見つめ、

 わずかに頬を染めながら、こちらに微笑みかける。

 その可愛い表情に、俺の胸は少し高鳴った。




    第9話「闘牛ギルド」

   ⇒第10話「探索者登録」


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