序
何故目覚めさせたのか。
君の力が必要だからだ。
何故僕なのか。
君の持つ能力が私達には必要だからだ。
僕の能力とは一体なんなのか。
いずれわかる、安心しろ。
あんたらは一体何がしたいのか。
簡単に言えば、この世界から逃げ出すためかな。
僕は元の世界かには帰れるのか。
オメーのいた世界は今ここで目覚めた瞬間に消えたよ。
四人の男女に囲まれて、我ながら、よくもまあこんなに冷静に言葉を並べられたもんだと思う。
思い返す記憶はあいも変わらず色褪せることを知らず、脳裏に焼き付いていた。
これから僕はどうすればいい。
君はどうしたい。
どうしたいって、どういうことだよ。
だからいってんだろ、俺達の助けになれって。
なんでいきなり見ず知らずの人たちに協力しなきゃいけないんだ。
選ぶのはキミだよ、それでどうなろうと責任はとれないけどね。
脅迫かよ。
オメーが俺らに協力することで救える命があるっていったらどうする。
え?
医者である君にしか治せないモノがあるんだ。
僕は、医者なのか?
そうだよ、まだ記憶が曖昧…ってお前、なんで泣いてるんだ。
よくあることだよ、ちなみに
頭上で爆発音が鳴り響いた。
その会話が、僕の、近瀬ミクリの人生における最後の会話となった。
一発であったが、何か大きな建物が崩れ落ちるとてつもない破壊力だった。
死んだわけではない。
喋れなくなったわけでもない。
ただ少し、この世界の見え方が、文字通り「変わった」にすぎなかった、ということである。
意味はわからないままがいい。
冬、窓の外から観える色は一色。
降り積もる雪に触れようと手を伸ばしても、思い出すのはあの憎たらしい顔のみ。
結局のところ、僕のあの選択は間違っていた。
少しだけ…時間を遡る。
できるものなら時間を巻き戻したい、あの世界ならきっと簡単に出来る。
だが、僕ら自身が壊してしまったあの世界、もう戻ることはできない。
そう、僕らの失敗は、およそ半年前の夏のことだった。