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私の最高傑作は冥王です  作者: 屋猫
第一章 出会い
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7 遺跡にて

 遺跡は草木に埋もれ、元の姿を見出すことが難しいほどに、崩壊が進んでいた。


 この中に、オズウェルを魔の森に飛ばした魔法陣があるという。


 --・・・うーん。微かに魔力を感じるけどなぁ


 黒の森を出発して一日半、ジュラとオズウェルは遺跡に到着していた。昼を少しばかり過ぎた時刻である。

 徒歩なら一月、馬などの地上を走る騎獣を使用して十日の道のりだ。

 一日半でたどり着けたのは、空を飛ぶ獣系の騎獣の中でも、最高速度を誇る天虎であるヴァスだからである。


 「・・・中に入るのは、無理そう、ですね」


 「そうだねぇ」


 遺跡の入り口があったと思われる場所は、激しく崩れており、入り口は完全に塞がってしまっていた。中に入ることは出来そうもない。


 「どうしますか?」


 旅装束のオズウェルが、ジュラを見上げてくる。濃いグリーンのローブを羽織った黒髪の美少年である。小柄なジュラよりも頭一つ分ほど背が小さい。見上げてくる眼は紫と金の異色の目である。


 「うーん。せっかくここまで来たんだし、もう少し遺跡の周りを探索したら、今日は近くで休もうか。」

 

 「そうですね」


 2人の荷物は少ない。ジュラは背に弓やを背負っているが、オズウェルは完全に手ぶらに見えた。寝泊りに使う道具はヴァスに載せている。

 ジュラが遺跡の探索、オズウェルはヴァスに乗っている荷物を解き、宿泊の準備をすることになった。


 遺跡は古びていたが、太古のというほど古くはないようだった。遺跡は、高さ3メートルほどの石版を円形に並べて造られていたようだ。中の様子は分からないが、おそらく半地下の構造になっているのだろう。ここに来るまでに、オズウェルから聞いたところ、内部は一階しかなく、広場のようのな構造になっているらしい。

 そして、その中央の天井に魔法陣が描かれていたという。

 

 「天井に、ねぇ。侵入者を防ぐ、罠なら分かるけど、一部屋しかないなら、入り口に仕掛けるよね?」


 ジュラは遺跡を一周すると、激しく崩れている入り口のところに戻ってきた。崩れた瓦礫を足がかりに、遺跡の上に登っていく。

 遺跡の上部は入り口付近が壊れているものの、ドーム状に造られていたようだった。上部は苔に覆われており、下の石材の様子は分からない。ジュラはローブの下から、ナイフを取り出すと苔をそぎ落とした。


 「・・・んー。この模様は、確か」


 苔をはぎ落とした石材には大、中、小、三つの三角形を重ねた模様が彫られていた。


 

 

 「星読み、の民?ですか」


 「うん、そう。多分その遺跡だねぇ」


 野営テントの中で、ジュラはオズウェルに遺跡について判明したことを話していた。2人の前には、夕食の果物がある。

 

 「200年くらい前のものじゃないかな。星読みの民が栄えたのも、丁度そのくらいの時代のはずだから」


 「では、あの魔法陣は、彼らの?」


 「んー、実は、星読みの民は、占いの民族で魔術は使わない、呪術の民なんだよなぁ」


 ジュラは夕食の果物の皮を向きながら、今日見た遺跡と、感じた魔力について思い出していた。


 「と、いうことは」


 「・・・オズウェルが見たっていう魔法陣は、この遺跡にあったものじゃなくて、誰かが後から施したものだと、思う」


 そう、魔法陣と思われる魔力は、僅かにしか残っていなかったが、それはどう考えても真新しいものだった。ジュラの話しを聞いて、オズウェルは考え込むように沈黙した。食事の手も止まっている。

 その手は、指の形も爪の形も美しく、芸術作品のようにさえ見える。


 「オズは、このことを知っていたんじゃないかなぁ」

 

 ジュラの呼びかけに、オズウェルが顔を上げる。直視する事が罪に思われるような、美しい顔だ。特に、紫と琥珀色の目は本物の宝石でさえ、見劣りすような輝きを放っている。


 「オズは、私に話していない事が、沢山あるねぇ」


 きらりと、二つの宝石の輝きが増したような気がした。ジュラは眩しそうに僅かに目を細めたが、逸らすことはしなかった。


 「ひょっとしたら、話せない、のかもしれないけど・・・」


 オズウェルは無表情に沈黙している。そうしていると、完成された人形のようでさえある。


 「それでいいよ。それで、いいと思う。私も、話してない事が、沢山あるからねぇ」


 ジュラは美しい人形のようなオズウェルに、そっと微笑みかけた。やさしく、儚い、微笑みだった。

 その表情を見て、オズウェルはそっと目を伏せた。


 「ところで、オズの用事は明日でいいの?」


 ジュラは、空気を変えるように努めて明るい声を出して尋ねた。ここへは、オズウェルも用事があって着ている。遺跡の損壊が激しかったため、調査の時間が短くなり、予定の日程を調整しなければならない。


 「ええ、明日で大丈夫です」


 「朝、早く発つ?日程に余裕はあるけど、遠い場所なら早いほうがいいよねぇ」


 「急いで発つ必要は、ありませんよ」


 「そう?」


 「ええ、大丈夫です」


 淀みないオズウェルの返答と聞いて、それなら明日の起床時間は、家と同じ時刻と言う事を決めて、二人は就寝した。


 

 

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