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私の最高傑作は冥王です  作者: 屋猫
第一章 出会い
23/48

23 執務室

残酷な描写あり

 砦に戻ると、オズウェルは隊長の寝室の前に同じように寄りかかっていた。

 エディッツが砦の状況を話そうとしたとき、オズウェルは突然扉を開き、寝室の中に入ってしまった。

 おまけに、エディッツが扉を開けようとしても扉はびくともせず、全く動かない。

 

 「なんだ?隊長の執務室みたいだな?」


 扉の前で首を傾げていたエディッツだったが、何かがぶつかる音を聞いて扉を叩いた。

 暫らくすると、オズウェルが出てきて、その後ついて執務室に向ったのだが。

 

 「おまえの言った通り、誰もいなかった」


 先に執務室に入ったオズウェルを追いかけ、エディッツも中に入った。

 エディッツの声が、人気のない執務室に響く。

 

 執務室の中には血の臭いが篭っていた。

 机にしがみつくようにして、一人の男が倒れこんでいる。背中しか見えないが、見覚えのある鎧を身に着けていた。

 男の足元には血溜まりが広がり、臓物がこぼれ落ちている。

 血の渇きぐわいから、半日以上は経っているだろう。


 「・・・、グリアンソン隊長」


 机にしがみつき、苦悶の表情を浮かべて絶命しているのは、ディラン・グリアンソン中級騎士だった。

 この砦を預かる騎士団、小隊の隊長である。


 「お前が、やったのか?」


 執務室にある机の上から、通信に使う水晶を取り上げたオズウェルに、エディッツは静かに尋ねた。


 「いや、殺してない。殺し損ねた」


 オズウェルはエディッツを見もせずに答えると、薄青い水晶、魔水晶を机の台の上に設置した。

 ちなみに、台はディラン・グリアンソン中級騎士が握りしめていた。


 「まぁ、そんなところだろうと、思ってたよ」


 エディッツは疲れたように呟くと、オズウェルが通信魔術を起動しようとしていることに気がついた。

 

 「おい、何してんだ?」


 エディッツの質問にオズウェルは今まで無表情だった顔に、笑みを乗せた。

 その、笑みはぞっとするぼど、残酷な気配を潜ませていた。


 「少し、挨拶をしておくだけだ」


 通信魔術はソルスト帝国の中心、帝都クリスタバルにある騎士団の本拠地と繋がっている。

 通信魔術は映像と音声のみを、やり取りする事が出来る。

 というよりも、それ以上のものをやり取りする事が、魔術では難しいのだ。物質は勿論、生物を人間の使う魔術で移動させる事は、非常に大量の魔力と繊細な魔術を構築しなければならないと言われている。

 不可能ではないのだが、現実的な方法ではないので、研究もあまりされていない。


 オズウェルは通信魔術を作動させると、通信が繋がった瞬間に、展開された魔法陣に無造作に右手を突っ込んだ。

 

 「なっ!」


 本来で在ればありえない光景だ。

 物質の移動魔術が広く知られていない上に、魔晶石に刻み込まれている魔法陣に強引に割り込むことも、普通出来る事ではない。

 よしんば出来たとしても、魔水晶が不可に耐えられず砕けてしまうだろう。


 魔法陣の向こう側、繋がっているほうで何が起きているのかは分からないが、聞くに耐えない悲鳴が魔法陣から漏れ聞こえている。


 オズウェルは、手を突っ込んだときと同じように、唐突に右手を引き抜いた。

 その瞬間、負荷に耐え切れず魔水晶は砕けた。


 右手は手首まで血に濡れ、何かを掴んでいるようだ。

 オズウェルは無造作に手を払うと、何かを床に投げ捨てた。

 それは、べちゃりといやな水音を響かせて床にへばりつく。丸く、白い糸のようなものが絡みついている。誰かの眼球のようだ。

 余計に血で汚れた床に対して、オズウェルの手は一振りしただけで、元通り白い手に戻っていた。


 「えぇ、・・・は?何だ?・・・って、おい、お前っ、何処に行くんだよ!?」


 エディッツは驚きすぎて、口が開いたままになっている。

 オズウェルは用は済んだとばかりに、さっさと執務室から出ていった。

 エディッツは慌ててその後を追いかける。

 オズウェルは一階の食堂に降りていく。どうやら食堂の奥にある調理場に向っているようだ。


 「おい、今度は何をするんだよ」


 調理場に入ったオズウェルに、エディッツは疲れたように呟いた。

 それに対して、オズウェルはさも当然のように答えた。


 「朝食を作る」


 「・・・・・・」


****


 「どうした、何が起こった。騒がしいぞ!」


 ソルスト帝国にある騎士団の本拠地、その通信室で数人の騎士達が騒いでいた。

 そこへ、通信室の責任者の一人であるマスクート中級騎士が訪れた。


 「は!申し訳ありません。し、しかし、通信室でナジラ騎士が、負傷しまして」


 「負傷?」


 マスクートは不思議そうに首を傾げた。

 基本的に通信の魔術は魔法陣が刻み込まれているため、コントロールが難しい事も無く、事故などまず起きない。


 「原因は?」


 「それが、・・・」


 混乱しているのか、騎士の説明は要領を得ず、全く状況は分からなかった。


 「もう、いい。私が直接様子をみよう。医務室に行って、負傷者を運ぶ旨を伝えておいてくれ」


 マスクートは青ざめている騎士に指示を出すと、自分は通信室の中に入っていった。

 中には二人の騎士がいて、暴れるもう一人の騎士を押さえつけている。

 おそらく、その暴れている騎士がナジラという名前なのだろう。


 「あぁ、ああ、目が!俺の目がぁ!!」


 ナジラは両手で顔面を押さえている。指は血に汚れいるが、既に出血は止まっているようだ。


 マスクートは二人の騎士に目配せをすると、ナジラの両腕を引きはがし傷の具合を見ようとした。


 「・・・一体、どう、なってる。」


 ナジラ騎士の顔は負傷しておらず、血に汚れているだけだった。




 「原因は、はっきりとは分からないけど、幻覚でも見たんじゃないかしらぁ?」


 医務室でマスクートはナジラの容態について説明を受けていた。

 医務室には医者であるバーバラと、マスクート、そして、寝台に寝ているナジラがいるだけである。


 「幻覚?」


 「そう、疲れていたんじゃないのぉ?ここ最近、忙しそうだったし」


 バーバラはやる気なさそうに呟くと、長く美しい脚を組み変えた。


 「出血、していたようだが?」


 「でも、傷はなかったわよぉ」


 マスクートは厳しい顔をして、バーバラを見ていたが、バーバラは面倒くさそうに返事をするだけである。


 「あーもぉ!面倒臭いわねぇ、何か分かったら連絡するわよぉ」


 バーバラは痺れを切らして、マスクートを医務室の外に追いやると、扉を勢い良く閉めてしまった。


 「ふん、うだつのあがらない、格下げされた中級騎士のくせに!」


 バーバラは忌々しそうに呟くと、簡易の調理場に向いお茶の準備を始めた。


 




 


 ここにきて、オズウェルの名前が打ち辛くて

 イライラしています・・・

 そして、エディッツも・・・

 なぜ、この名前にした、私・・・

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