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私の最高傑作は冥王です  作者: 屋猫
第一章 出会い
14/48

14 砦の中で

 木製の扉が激しく叩かれている。

 職人でもない奴隷達に作らせた粗末な扉は、今にも壊れそうである。


 「隊長!一体何が合ったんですか!?」


 扉が上げる断末魔の悲鳴に負けじと、声を張り上げるものがいた。


 「隊長!答えてください、他の騎士団員たちはどこですか!?」


 扉の奥からは返答なく、扉が憐れな悲鳴を上げるだけである。


 「くそ!だめだ。何の返事もねぇ」


 「だめか、・・・もう、いい。行くぞ、ザック」


 「・・・ちっ」


 ザックと呼ばれた男は、忌々しそうに舌打ちをすると、最後に扉を一蹴りして踵を返した。


 「どうなってるんだ。帰ってきて、いきなり厳戒態勢とか言い出して、そのくせ、何の説明もねぇ!」


 「確かにな、他の連中は、誰一人帰ってきてないしな」


 「そうだよ!お前もおかしいと思うだろう、バース!」


 ザックはいらいらと自分の爪を噛み、落着きなく目をきょろきょろとさせている。

 一方、バースと呼ばれた男は、一見落ち着いて見えるが、その眉間には深い皺が刻まれている。


 2人とも帝国の下級騎士の出で立ちをしているが、どことなく荒んだ気配をしており、騎士というよりも、傭兵と言われたほうが納得のいく雰囲気である。


 「とにかく、一度食堂に戻るぞ」


 バースの言葉に、ザックはしばらく悪態を吐いていてたが、おとなしく後ろを着いて歩き出した。

 

 一階には騎士達が食事をとる食堂があり、2人がそこに辿り着くと他に三名の騎士が2人を待っていた。


 「どうだった?隊長は?」


 「だめだ、返答も一切ない」


 バースの答えを聞いて、三名の騎士の顔が暗くなる。


 「・・・遺跡で、何があったんだ?」

 

 「隊長以外は、誰も帰ってねぇし・・・」


 「そんなの、決まっているだろう!!魔獣なんかじゃなくて、魔物が妖魔が出たんだよ!みんな殺されたんだよ!?」


 騎士達の言葉に、ザックがヒステリックな声を上げた。


 「直に、直に、この砦にも来るかもしれねぇ!早く、逃げたほうがいい!!」


 ザックは両手を振り回し、唾を吐きながら喚き散らした。


 「・・・落ち着け、何も分かっていないのだ。早合点するわけにはいかないだろう」


 鬼気迫るザックの様子に顔色を無くしていた騎士達が、バースの窘める声に僅かに顔色を取り戻す。


 「そ、そうだな」


 「何か、急用で、隊長だけ帰ってきたのかもしれん」


 「他の団員は、現地で野営をするのかもしないしな」


 騎士達は、どうにか楽観的に考えようとしているようだった。


 「そんな、悠長な事してたら、みんな殺されるぜ!!」


 ザックは更に声高に叫んだが、他の騎士達は迷惑そうに顔を顰めただけだった。


 「・・・とりあえず、明日の昼まで待とう。それまでに討伐隊が戻らなければ、隊長に要請して調査隊を出してもらう」


 バースの提案に三名の騎士は頷き、ザックは喚き続けていた。


 砦にいる15名の下級騎士のうち、10名が討伐に向かっているため、砦の中は閑散としていた。

 警備にすら奴隷であるトムスク族を使っている。


 砦には50名ほどのトムスク族が、労働力の為に残されていた。

 200名ほどいたトムスク族は、戦闘の際に50名ほどが命を落とし、見目の良い者は別の場所へと連れ去られ、若い男は下級兵として連れていかれた。

 残った者も農奴として別の土地に連れいかれ、砦に残っているのは、森の開拓の為に壮年の男達と、中年の女たちが50名ほどなのである。


 「要請なんか、出来るのかよ」


 食堂を出ようとしたバースを、ザックが呼び止めた。

 その目には先ほどまでの狂気は見えない。


 「隊長が、部屋から出てこなかったらどうするんだ」


 「そのときは、また考えればいい」


 バースの返答にザックは、馬鹿にしたような目を向けた。


 「ふん!考えてる間に、死なねぇと良いけどな!」


 捨て台詞のように吐き捨てると、ザックはバースとは反対の方へと歩いていった。

 バースは暫らくその姿を見送っていたが、視線を二階の部屋に移した。

 グリアンソン隊長の部屋だ。カーテンが閉められ中を窺うことは出来ない。


 今日の早朝、十名の騎士を連れて遺跡へ魔獣退治に向ったはずのグリアンソン隊長は、昼過ぎに突然一人で帰ってきた。

 帰ってきたグリアンソン隊長は、出向えたバースに砦も門を全て閉め、厳戒体制を布くように怒鳴ると、自室に篭り出てこなくなった。


 夕方になっても隊長は姿を現さず、帰ってくるはずの団員も帰ってこなかった。

 団長に理由を聞こうとしても、応答は無い。


 残った五名の騎士達には、重苦しい空気が漂っていた。


 しかし、非常事態とはいえ、やらなければなら無い事はある。

 人員が急激に減り、人手は完全に足りていない状態だった。

 

 バースはグリアンソン隊長が討伐に向っている間、砦の管理を任されていた。

 本来であれば、隊長が帰還した時点で、その任は隊長に移るはずだった。

 しかし、帰還したグリアンソン隊長は部屋から出てこず、バースは未だに砦の管理をしている状態だった。

 

 溜息を吐いて、バースが隊長の部屋から視線を外した直後、どこかで、爆発音が聞こえた。


 「な、何だ!!」





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