幼馴染の顔を見て射精した
幼馴染の顔を見て射精した。
幼馴染のことが好きというわけではない。
美味しいスープを飲むと射精するのだ。
物心ついた時から、精通を迎える前から私はスープに快感を覚えた。
それを初めて自覚したのは、隣に住む幼馴染がスープを作ってくれた時だ。
スープを作ってくれた理由は覚えていない。どんなスープだったかも覚えていない。風邪だったとかそんな理由だろう。
得も知れぬ快感。私はその時、それは恋だと勘違いした。
それは間違いではない。あれは間違いなく恋であり、初恋だった。
しかし、それは美咲に対してではなく、美味しいスープへの恋だった。
それ以来、美味しいスープを飲むたびに射精した。
嗅いで射精。
啜って射精。
飲んで射精。
いつしか私は快感の虜となった。
スープが好きなのか射精が好きなのか。もし後者ならスープへの侮辱なのではないか?
自問自答を繰り返しながら美味しいスープ、より気持ちの良い射精を求め続けた。
やがて私は至る。
「この小さな町でこれほどの快感を得られるのなら、世界にはどれほど美味しいスープが存在するのだろうか?」
「美味しいスープを求めて旅に出る? バカじゃない? スープくらいならアタシが作ってあげるのに」
私はそんな幼馴染を無視して旅に出た。
「究極のスープ」、或いは「至高の射精」を求めて。
世界は広かった。
フランスのマルセイユでは店の前で射精した。それから三日間、あの匂いのブイヤベースを想像しただけで射精した。
中国の広州ではフカヒレスープを視界に収めた。あの美しいスープを蹂躙する。それを想像しただけで射精した。
タイでは街を歩くだけで射精した。多くの屋台から漂う酸味と唐辛子の刺激。トムヤムクンを想像しただけで射精した。
しかし、飽きた。物足りなくなった。
どれほど高級で精緻なスープも回数を重ねるごとに快感はどこか表層的で「作業的」なものになっていったのだ。
どれも初めて飲んだ時の快感には及ばなかった。いや、想像している時がもっとも楽しく、もっとも強い快感を与えてくれた。
しかし、やがては勃起すらしなくなった。それが飲んだことがないスープであってもだ。
「私はスープに飽きてしまったのか……」
疲れ果て、味覚も股間も限界を迎えた私は、ボロボロのトランクを引きずって故郷の町へと帰ってきた。
季節は冬。偶然に、いや、必然だったのかもしれない。幼馴染と再会した。
「美味しいスープは見つかった? なに? 飽きた? バカでしょ。世界中の美味しいスープを飲んだアンタの口には合わないだろうけど味噌汁でも飲んでく? 昔はあれで満足してたんだから」
幼馴染は呆れたように笑うと家へと誘った。
そして慣れた手つきでコンロに火をかけた。
コトリ、とテーブルに置かれたのは、大根と油揚げが入った何の変哲もない味噌汁だった。
私は飽き飽きしながらも無言で椀を手に取り、冷え切った身体に流し込むように一口すすった。
幼馴染の顔を見て射精した。




