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  作者: ルケア
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 さて、メルモットで1泊してからシリエラへと向かう道中、大量のアントと戦闘を繰り返していた。何度も何度もアントが津波の様に押し寄せる。それを、平気で薙ぎ払う前衛。打ち漏らすかと吹き飛ばす後衛。士気は滅茶苦茶高いんだよなあ。戦力がしっかりと整っているって素晴らしい。何もしないでも良いからな。ただ歩いているだけで、シリエラへと到着していた。


 ゲートは破壊され、外壁は壊され。見るも無残な光景だ。そこから大量のアントが押し寄せてくる。これ以上は行くなと言わんばかりに押し返そうとしてくる。


「陣地を構築する! 生産職500名は急いで陣地を構築しろ! 地面を平らにして、天幕を張れ! まずは寝床の作成からだ!」


「「「「「おおおおお!!!!」」」」」


「前衛5000人! 後衛5000人! 露払いだ! 町の外の掃除を頼む!」


「「「「「おおおおお!!!!」」」」」


「前衛10000人! 後衛5000人! パーティーを組んで町の中へ! まだアリの巣は駆除しなくてもいい! まずは地上に居るアントを殲滅だ! 夜になるまでには帰ってこい!」


「「「「「おおおおお!!!!」」」」」


「後は待機と食事! 睡眠も軽くとっておけよ! お前らは夜に活動する! 不慣れかもしれないが、夜も魔物は増える! 夜も戦わないと終わりは無いと思え! では、作戦行動開始!」


「「「「「おおおおお!!!!」」」」」


 あらかじめ班編成は終えてある。やることは明確だ。まずはこちらで陣地の構築を進めないといけない。休む場所すら無いのは問題だからな。休憩は必須だ。睡眠は必須だ。魔物だってそうだ。睡眠不足では戦えない。MPだってHPだって回復させないといけないからな。だけど、まずは徹底的に外の掃除だ。もう外壁も半分以上は壊されているし、中の建物は無事な建物を探す方が難しい。既に野に還ろうとしている。それでもまだ、残っているだけマシなんだよ。直ぐにこんなものは解体されるからな。アントは1級工作員でもあるんだよ。工事なんて簡単なんだよな。それに任せて平らにしてもらうのも有りかもしれないんだけど、まずは穀倉地帯を手に入れないと話にもならない。大量の土地を確保しないといけない。幸いなことに、スタンピード中の魔物は、その穀倉地帯には巣を作らないんだよ。統率種によって統率されている状態では、そう言った場所には何故か巣を作らないんだよなあ。その辺はよく解らない。魔物の性質なのか、それとも何かしらの力が働いているのか。見回りだと言わんばかりに侵入はしてくるんだけどな。何故か巣は頑なに作ろうとはしないんだよ。


 生産職が500人も居ると、本当にあっという間に陣地が構築される。まあ、突破されたら一発で壊滅する様な陣地ではあるけどな。突破さえされなければ良いのである。そのために人員は残してあるんだし。


「まずは食事を交代で取れ! その後に交代で睡眠だ! 2時間程度は寝ておけよ! そのまま徹夜になるんだからな! 夜組は厳しい戦いを強いられると思えよ! 負けは許されないんだからな!」


 葉っぱをかけるが、俺はそれどころじゃなく緊張しているんだけどな。もしもこの作戦が上手くいかなかったらどうしようとか、色々と考えてしまうんだよ。まあ、考えても無駄なのは解っているんだが。考えたところで、負けたらそこで終わりだからだな。負けることは許されない。負けは死ぬのと同じなんだよ。命はってここまで来ているんだ。びびってんじゃねえよって話なんだけどな。……俺も睡眠を取らないといけない。この状態で寝れるのか? 緊張しっぱなしで、ちゃんと眠れるんだろうか。それすらも心配になってくる。


 焦るな。まだまだ始まったばかりじゃないか。緊張を表に出すな。周囲に不安が走る。負の感情を表に出すな。周囲に不信感が生まれる。……良し、覚悟はある程度決まった。俺も食事をしておくかね。喉を通るかの確認をしておかないといけない。吐くなんてみっともない真似は出来ない。大丈夫だと鼓舞するためにも、俺が積極的に動かないと。


「……美っ味。誰だ? こんな料理が上手い奴を連れてきたのは。生産職の奴らじゃないはずだが……。料理なんて教えてないし、なんじゃこの味。美味すぎて食べるのが止められねえ」


 一口食べて、ある意味感動した。ここまでの食事を作る奴が居るのか? そいつには悪いが、冒険者とか兵士とか職業を間違えているぞ。お前は料理人だ。確かに食料は大量に持ち込んださ。調味料は士気を高めるために奮発したさ。でも、ここまでの料理を作れるのであれば、お前の天職は料理人だよ。生産職でも料理関係の職業は無いしな。これはもう天性のものだと思う。なんでこんな討伐に参加しているんだよ。お前の担当は戦闘じゃない。炊き出しだ。そっちの方が向いているし、なんなら士気も上がる。誰だよこんな料理人を連れてきた奴は。


 探したら案外簡単に見つかった。なんでも料理が趣味らしく、パーティーでも食事を作っていたそうだ。なんで在野の料理人が居るんだよ。聞いてないぞ。そりゃあ野営料理なんて普通は作らないからな。日帰りするのが普通だし。でも、ある意味日帰りが常識じゃなかった時代があるんだよ。なんでも話を聞いてみると、ダンジョンで泊まり込みの経験もあるそうだ。料理スキルが磨かれたのは、それもあるらしいが、それにしたって間違えている。お前の配属は決まった。戦闘にいかなくても良いから、料理だけをしていてくれ。それの方が士気が上がる。今日からお前は料理長だ。戦場コック。かっこいいじゃないか。まさか将軍やそれらの指揮を執る人材よりも、料理長が早くも決まるなんて誰が思ったよ? 俺は完全に予想外だよ。こんな予想誰が出来たよ? ギルドマスターもこんなことになるなんて思っていなかったはずだぞ?


 そんな事もあって、緊張が吹き飛んだ。美味い料理って良いよな。転生物でよくあるよな。料理マウントを取って成り上がる系の話。あれってある意味正しくて、ある意味間違っているんだよな。料理が上手い奴は、こっちの世界にも居るし、そういう奴らも成り上がるのかって言われたら違うんだよな。そもそも作れる料理のレパートリーが多いってのは転生者向けかもしれないが、下手な奴だと、作って貰った方が美味しいまである。料理チートはある意味無理なんだよ。そもそもの料理スキルが無いとな。それと、あくまでも日本の料理であって、味は美味しいのかもしれないが、味覚が違う連中の舌に合うのかって問題もあるんだよなあ。何処かの国の人は、苦いって味覚がないらしい。逆に辛いって味覚はあったりもする。実は辛いって認識できない人種は多いらしい。あくまでも刺激物としての感覚であって、辛いとは感じないらしいんだよな。詳しい事は専門家に聞かないと解らないんだけど。


 地元民にあった料理ってのがあるんだよ。よっぽど食文化が進んでない国ならなんとかなるかもしれないが、食事チートで成り上がるのは難しいと思う。それならまだ武力で成り上がる方が確率は高いんじゃないかなとは思うな。俺か? 俺はゲームのシステムのまま来ているからな。チートって言われたらそうなんだけど、こっちが発展してなさすぎたんだよなあ。天職なんて物がある所為だとは思うが。完全に成長の邪魔をしているからな。何でそんなものを追加したのかは知らない。真のルーセントダイバーって話だったが、新要素で組み込まれる予定だったのかね? 要らないシステムだとは思うけどな。今の状況を考えると特に。

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料理人は戦わなくて済むと考えるか 料理人は戦わせてもらえないと考えるか 難しいところではあるが、貴重で重要な才能なのは間違えない できれば料理の道を突き進んでほしいよな
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