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「ねえ、本当に今の状況でゴブリンの森に行くのよね?」
「そりゃな。レベルも上げないといけないし。金属も欲しいけど、普通にこっちで薬草採取をした方がいいだろうからな。それに、今のレベルだと、山は厳しくないか?」
「ゴブリンも厳しいわよ? まともな前衛が居ないのに」
「武器は沢山作ってきたから、3体までならなんとかなる。5体以上になってくると、何処まで魔法で削ってくれるのかの勝負にはなるかとは思うが」
そんな訳で、ゴブリンの森へと再びやってきた。まずはポーションを作るために薬草類を採取する。それとレベルを上げつつって感じだな。黒魔導士は限界レベルが20である。ゴブリン換算で1000体って所だな。2人パーティーならそのくらいだろう。後半になればなるほどレベルは上がりにくくなるし。まあ、MAGが圧倒的に足りないだろうから、MPが足りないだろう。そうすれば、帰らなくてはならない。メイジ職がMPも無しに戦えるわけがないからな。戦闘は俺がメインで戦う事になるんじゃないかな。普通の時は、だけど。
「おっ。この木は良いな。白樺じゃん。こっちは松だし、雑多な森だから木材にも困らないな。こっちはどんどん伐採するから、その音で呼ばれたゴブリンの処理は頼むわ」
「解っているわ。私に任せておきなさい、って言いたいところだけど、黒魔導士としては初めてだから少しミスはあると思うわ」
「なんのなんの。そのくらいはHPが守ってくれる。最悪逃げれば良いんだし、な!」
コーンコーンコーン
いい音が鳴るな。音の響きが良い木は木材としても良いのだ。響きが悪いと、中が腐っていたりするからな。しっかりと身が詰まっている音がする。良い事だ。
ズズズズー―ン
倒れた木を回収する。後で枝打ちもするけど、それは森を出てからでも出来るからな。まずは木材を確保だ。それと一緒にその辺に生っている薬草を回収する。優先順位が高いのがポーション系統の素材で、レンゲ草が一番重要。これと水素材で初級MPポーションが出来るからな。非戦闘時に使うポーションだ。緊急時に使うのであれば、初級MPヒールポーションになる。こっちは即時回復系だから。それの素材はこれ。イタ草だな。これと水素材で出来るぞ。
「ストーンバレット! ……やっぱり反則だわ。発動までこんなに早いなんて」
「あ、ゴブリンは回収するからな。これでもお金には困っているんだ」
「借金生活だもんね。まあ、この調子なら直ぐにでも帰ってきそうではあるけど」
「パーティーには生産職を組み込むのは普通の事だぞ? そうしないと戦闘職のインベントリだけだと成果を持って帰るのが難しいからな」
「普通は生産職をパーティーに組み込むなんてしないのよ。貴方が異常なだけよ。普通の生産職は、もっと安全にレベルを上げるもの」
「見解の違いだな。生産職だって採取には参加した方が良いんだよ。特にフィッシャーやコリマーは外に出てこういう場所で経験値を稼ぐものだ。炭鉱夫だって駆り出されるだろ? それと一緒だよ」
経験値を稼ぐ場所は厳選した方が良いんだよ。効率よく経験値を稼がないといけないんだから。そうしないと出遅れるんだよな。まあ、確かに死亡する可能性があるのは怖いから、普通は護衛を雇って行うのが普通だ。俺だって初めは野良パーティーで頑張ったものだ。目的の物が欲しい時は、なんとかしないといけないから、臨時で雇って討伐に参加したこともあるけどさ。
そんなこんなで、ゴブリンを狩りつつ、採取をしてレベルを上げた。……1日で3も上がってくれたんだ。この調子なら、ゴブリンが絶滅しなければ、結構なペースでレベルを上げられるな。1次職だし、そこまで厳しい経験値を要求されないのが良いよな。
そして、帰ってきたらゴブリンの討伐報酬を貰う為に冒険者ギルドへ。ゴブリンの討伐報酬が宿代だけで飛んでいく。やっぱり1人部屋は普通にお値段的によろしくないらしいが、女性冒険者はそもそも1人部屋でないと襲われかねないので、やむを得ないらしい。……カミラはウィザード時代にそこそこ稼いでいたらしく、まだまだ金欠とはいかないらしい。お金持ちは良いよな。そう言う事を気にしないでも良いのは純粋に羨ましい。
「だがまあ、それも今日までだな。ここからが本番だし。MPを使い切ったら生産をする。生産職を入れているパーティーなら当然の事ではあるんだけど、こっちの報酬も普通に山分けするからな。杖は、木材的にはそこまで更新されないから作るつもりはないけど、角材としては結構売れると思うんだよな。建築関連の職業の人に売れる。商業ギルドが買ってくれると思うんだけどな。そうしないと借金が返せない。割と町に入るための金額が馬鹿にならないってのが本音だ」
「ここがレンタル工房なのね。初めて入ったけど、ここでは何をするの?」
「さっきも言ったように、ここでは木材を加工する。大工やクリエイターがここをよく使うんじゃないかな。とまあ、こんな感じで、角材を作っていくんだよ。こっちは乾燥機。ここで角材を乾燥させる。乾燥させないと木材として売れないからな。乾燥は必須だ。後は松があったから、これから樹液を絞りだして、松脂を作る。そうしたら乾燥させた木材に満遍なく塗ってもう1度乾燥させる。そうすると、建築に使える角材の出来上がりだ。まあ、そこそこの値段で売れるとは思うけど、本命はポーション関係だからな。そっちはまた後だ」
「……随分と手慣れているわね。幾つも並行して動かせるものなの?」
「慣れだな。こういうのは時間との勝負だからな。クラフトマンをパーティーに入れると、こういう所で時間が取られる。だから嫌だって人も一定数いるのは知っている。けど、こっちの方が結果的に報酬が上がるから、パーティーに組み込む方が得なんだけどな。レベルだけを考えると、非効率なんだけど、装備には金がかかるからな。どうしても金策が必要になってくる。良い装備を揃えないといけないのは解るだろ?」
「……そりゃあね。それに良い装備は高いだけでは無いのよ。そもそも良い職業の人たちは貴族に抱え込まれるの。だから良い装備品なんてそうそう出回らないのよ」
「何処でも貴族様なんだな。貴族は糞だってのはよく解っているつもりだ。大体利権に絡んで面倒な事をやらかすのも大体は貴族様だ。全く、いい迷惑だっての」
「いや、そこまでじゃないからね? 特にここはルッテンドルフ辺境伯の領地だし、そこまで変な人ではないわ。色々と冒険者にも優しくしてくれているし、良い貴族様よ?」
「どうだかな。裏で何をやっているのかは解らないしな。信用しないに越したことはないって。貴族関連の依頼は受けるかもしれないが、お抱えの話が来ても断るからな。胡散臭いし」
貴族様というのは、何処でも糞になりがちなんだよ。碌でもない奴らなんだ。信用するだけ無駄である。良い貴族なんてのは害が無いからなんだよな。裏で何をやっているのか解りゃしない。どうせ色々とやばい事をやっているんだろうと思う。
「さてと。木材の加工はこれで良いな。後はインベントリの中で作業をすれば良い事だし、それじゃあ、お楽しみの薬師のレンタル工房に行こうぜ。そっちの方が稼げると思うし」
なんか天職なんて物を信用している感じ、ポーションの価格がおかしなことになっているかもしれない。だったらチャンスだ。大量に売っても価格破壊にならない。寧ろ足りていないポーションを供給することで、有難がられるかもしれない。これは一気に借金を返済できるかもしれないな。まあ見ていろって。生産職はこうやって稼ぐというのを見せてやろうじゃないか。