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ロシアとドイツと「戦争と平和」
「戦争と平和」を読んだ時にちょっと驚いたのは、トルストイがドイツのことを極端に書いていることだ。第一次大戦や第二次大戦でドイツがロシアに怒って虐殺のように攻め込んだのは、十九世紀最高の文学とされる「戦争と平和」に書かれたドイツの極端な記述が原因なんじゃないかと心配する。ドイツはロシア人を七百万人は虐殺した。
取り越し苦労なら良いが、万が一を考えて、「戦争と平和」の誤解を説明しようと思う。「戦争と平和」は、語らずの手法で全四巻を記述した奇跡のような大長編だが、その高い完成度において、傷があるとしたら、ドイツに関する記述のただ一点だ。これが必要以上に誤解を生んだとしたら、悲しいことだ。この完全な文学の中で、なぜ、トルストイはドイツを極端に描いたのか。
おそらく、トルストイはドイツを尊重していた。それが「戦争と平和」を読解することのできる私のたどりついた唯一の答えだ。トルストイの極端な記述に耐え、ドイツが死地から蘇る。その時、ドイツは目的を何度でも果たすだろう。