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(99)閑話-ネル-(3)

 何やら自分に関する事を説明してくれると言うので、とりあえず何も情報がない今は藁にも縋る思いで黙ってここで待つ事にしたのだが……怖い!怖すぎる!


 非常に苦しんでいるのは分かるのだが、何をしているのか、きっとあの狼も何をされているのかわからないままに苦しみぬいているのだろう。


 あっ、漸く苦しみから解放されてお亡くなりになりましたか……って、それは?どこからともなく取り出した液体……を、何故か狼にかけているのだが、アレ?確かに狼は事切れていたはずなのに、何故か全快しているように見えるのだが。


「申し訳ありません。もう少しだけお待ちいただけますか?あまりにも躾がなっていないので、少々厳しめに調教しようと思いまして。あと数回、苦しんで、再生して、を繰り返していただこうかと思っています。フフ、それでこの飼い主の元に一匹だけ戻してあげれば、今後余計なちょっかいをかけてくる事は無いと思うのですよ」


「・・・・・」


 お、恐ろしすぎる。


 正直、もう情報はどうでも良いからこの場から消えたい気分になっているのだが、あの笑顔の裏に隠れた怒りがこちらに向かう可能性を完全に排除する為に、あの女性から指示されていた“待て!”をこの場に留まって全力で実行していた方が賢明だ。


 何故か生まれたばかりの自分でも理解できるぞ!良し、そうと決まれば他の事を考えて、目の前で行われている大惨事から意識を逸らしておこう。


 ムムム……そうだ、折角だからこの上限のレベルと言っていた三つの系統能力についてもう少し自分なりに調べてみればどうだろうか?


「お待たせいたしました」


「うほぉ!いや、失礼。申し訳ない」


 いやいや、少し意識を他の事に持って行ってしまった所に突然声をかけられて変な声が出てしまったが、どうやら躾と称した虐殺は終了したようで一匹の微弱な気配がとてつもない勢いで遠ざかるのを感じるのだが、どう考えても必死で逃げて、この女性が言っていた飼い主の所に戻っているのだろう。


 もう一匹の気配は全くないし姿も見えないのでどうしたのかはわからない、わかりたくもないが、今は別の世界で幸せに過ごしている事を祈るとしよう。


「では、先ずは貴方の種族ですが……あっ、私は精霊族で名前はまだありませんが、このダンジョンで生まれた者です。貴方と同じ、言うなれば姉と言う立場ですね。魔族さん」


「ま、魔族……そして精霊族。更にここはダンジョン。何故か全て意味は分かるところが不思議だが、なるほど、理解した」


 どうやらこの精霊族の女性の言葉がきっかけになったようで、ダンジョンやらの話も不思議と知識がある事に気が付かされ、その知識によれば……自分、目の前の女性もそうだが、ダンジョン内部で生まれる獣、魔獣ではなく相当格上の存在である魔物と呼ばれる者で自我があり、有り得ない力を手にしている存在のようだ。


 これは僥倖ではなかろうか?

 どうせならば先程の狼の様に甚振られる側ではなく、如何様な脅威からも安全を担保できる力が有った方が良い事は間違いないからな。


 あ、一応付け加えておきたいが、目の前の精霊族の女性に勝てる等と自惚れてはいないので、そこだけははき違えないで頂きたい。


「もう私は長くこのダンジョンにおりますが、散々調査した結果、これより下の階層はありません。つまり、上に向かって地上に行く他ないのですが、中途半端な獣や魔獣、魔物までいる上に相当上に移動しなくてはならないため、面倒になりこの階層に根を張りました。幸運な事に綺麗なお花を育てる事が出来る環境なので、退屈はしておりません。そうだ!是非私の自慢のお花畑を見て頂けませんか?」


「よ、喜んで!」


 ここで断れるような強者は、このダンジョン……いや、この世界に存在していないだろう。


 もちろん私にも断ると言う選択肢がない事は分かっているぞ!私は生まれながらにして空気の読める魔族なのだから。


「では、参りましょうか」


 うわ!速い、速いぞ!まさか自分も全力で付いて行っているのに、簡単に引き離されてしまうとは……これが年季の差だろうか?仮にこのまま距離を開けられても、一応気配はつかめるので迷う事がないのだけは救いだろう。


「こちらです!一部はあの狼に荒らされてしまいましたが、自慢のお花畑です!」


 余程この精霊族の女性は花が好きなのだろうか、狼を躾ている時の何とも言えない微笑ではなく、心の底からの笑顔のように見える。


「や、確かに見事な……アレ?この花は、何やら不思議な力を感じるような」


「わかりますか?そうなのです。私が丹精込めてお世話をしましたところ、先程狼の躾で使用したポーションの原材料になる程にまで育ってくれたのですよ。それに気が付いた他の魔物がああやって手下を使って奪おうとしているのが許せませんが……」


 自分と似た存在が、どう見ても敵わないとわかる精霊族の目の前の女性が手塩にかけて育てている事を知った上で、奪いたくなるほどに貴重な花なのか。


「他の魔物だが、その……聞きにくいが、自分より、そして貴殿よりも強い者がいるのだろうか?」


「そうですね。世界の全てを知っている訳ではないのでどこかにはいるのかもしれませんが、このダンジョンでは私の知る限り、私より強い者はおりませんね」


 となると、このダンジョン最強の女性と共にあれば、いくら生まれたての自分でも生存できる確率が非常に高くなる……と言う事で間違いないな!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 と、このような事があって出会ったのだが、その後ジニアス様の魂をお持ちの方との出会い、そして自分達に名をつけて頂いて深い繋がりが出来るとともに有難くない二つ名が定着してしまうのだが、それはまた今度にしよう。


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