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不遇と呼ばれる能力の卵を孵化した、少年ジニアスの成り上がり  作者: 焼納豆


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(95)不穏な空気(1)

 突然店主が昔話を始めそうになったので、ジニアスは慌てる。


「アハハハ、やめてくださいよ。この流れで恥ずかしい話をされると困りますから」


 店主と本心から楽しそうに話しているジニアスを優しい微笑で見つめているスミナは、さりげなく店主が言っていたジニアスの恥ずかしい話を聞きたい気持ちに駆られていたのだが、グッと堪えていたりする。


「で、これはいくらで卸してくれるんだ?」


「そうですね、相場の一割で良いですよ」


 いつも通りに、店に多大な益を与えられるようにしているジニアス。


「……何時も悪いな。その分、しっかりと周囲の連中には還元するからな」


 もう長い付き合いになっているので、店主は遠慮する事は無いしジニアスも店主の言葉通りに周囲に還元してくれている事を知っているので、スムーズに売却は終わる。


「そうそう、ポーションの在庫は大丈夫ですよね?」


「いつも気にしてくれて助かるよ。スミナ様もいつもありがとうございます。本当にこの周辺に住んでいる連中は助かっています。感謝してもしきれません!」


「いえいえ、当然のことをしているだけですから、お気になさらないでください。ね?ジニアス君!」


 振られたジニアスも微笑むのだが、店主の言葉で表情が濁る。


「ジニアス。実はポーションなんだが少々不足気味でな。まだ在庫があるから大丈夫だけど、もう少しこの状況が続いたら相談に行こうと思っていたんだ」


「え?どうしたのですか?」


 軽い確認の気持ちで聞いたのだが、ポーションの在庫が減っていると言う事を教えられて、周辺住民に何か異常があったのかと心配になるジニアス。


 まさかダイマール公爵家が買い漁ったのか……と一瞬思わなくもなかったが、公爵家にある最高級と言われているポーションですら三人の嫡男には今以上の効果が無かった事は知れ渡っているので、その線は無いだろうなと思い直す。


「なんでも、町の外に向かう冒険者連中の怪我が酷くてな。特にダンジョンでの依頼が経験通りに行かないらしいんだ。そのせいで傷を癒す者、予防的に購入する者が増えている」


 店主の話を聞いてスミナを見るジニアスだが、スミナも帝都周辺のダンジョンに関する情報を持っているわけではなく、アズロン男爵領のダンジョンでは異変が見られないのか、何も聞いていないようで首を横に振っている。


「そうですか。とりあえず……ブレイド」


 護衛のブレイドが、ネル特製のポーションを相当薄めた……一般的に販売できるレベルのポーションを多数取り出して店主に渡す。


 ここでも自分の収納魔法を使う事は無いジニアスだ。


「また不足しそうであれば、遠慮なく言って下さい」


「本当に助かる」


 このポーションも相場の一割で販売しているので、その分のお金を渡されたジニアスはスミナ達と共に店を後にして家に戻る。


「スミナ、アズロンさんからダンジョンの話って聞いている?」


「何も聞いていないけれど、夕食時に聞いてみようか?」


 夕食時の話によれば、実際に店主の言っていた通りに帝都周辺のダンジョンについては今迄の常識が通じない状況になっているので、冒険者側としても安全と思って受けた依頼でも怪我をする事が多くなっていたとの情報を得た。


 皇帝シノバルも度重なる冒険者ギルドからの報告でこの現象が事実であると把握し、ダンジョンの安全度を再度見直すような指示を出している所だと確認できた。


「ブレイド、ネル、何か知っているか?」


『申し訳ありません、ジニアス様。自分では正直多少の誤差の範囲としか判断できません』


 ブレイド曰く冒険者が苦労するほどの変化であったとしても、ブレイドにとってみれば誤差の範囲なので何も判断が出来ないと言っているので、当然同格の強さを持つネルも感覚的には同じだと思ったのだが……


『私の感覚では、アズロン男爵領とは逆方向、シラバス王国ではない方向にあるダンジョンに変化が起こっているように感じます、ジニアス様』


 多少大雑把なブレイドとは異なり、ネルは微妙な変化も把握できているようだ。


 二人の話を聞く事は出来ないスミナは、黙って成り行きを見守っている。


「そっか。アズロンさんの領地には異常はないのだよね?」


『『もちろんです』』


 暫く考えこむジニアスは、ある事を思い出した。


「そう言えばさ、前にソフィア様達を救出するために潜ったダンジョンで、魔獣ではなく魔物に遭遇したよね?人言を話す魔物に。何か今回の現象に関係があるのか?」


『確かに何かがいました!とてつもない雑魚だったので記憶にすら残らない程でしたが』


『あら、ブレイド。よ~く思い出してほしいわ。魔物の中には、手下を使って私の大切なお花畑を踏みにじって逃げたままの不届き者もいるのよ?』


『い、いや、もう塵も残らず消えているから、自分では思い出せない』


「落ち着いて、ネル、ブレイド。とりあえず不確定な情報で踊る訳にはいかないから、少し調査しようか。霞狐で対応出来そうか?」


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