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(9)貴族の悪知恵(1)

 俺がポーションを購入しようと店に来たのだが、その店で売り切れと言われて店から出ようとした所でヒムロ達がニヤニヤしながら両手に抱えきれない程のポーションを持ちながらこっちを見てきたのだ。


 くっそ、こいつらはこう言った悪知恵だけは無駄に働く奴らだった。


 嫌がらせの為ならば、自分の家から真逆の位置にあるこの店に来る事も厭わない程無駄な努力ができる事を忘れていたけれど、ここで挑発に乗る訳には行かないので、痣に意識を入れつつ、何とか返事をする。


「別に、いつもの日課で来ているだけですよ」


「そうかそうか、ならこれはいらないな」


 わざと目の前でポーションを廃棄し始めるヒムロ達だが、俺はこれ以上状況が悪化しないように表情は一切変えない。


 だが、心中は穏やかではない。


 あいつらの自尊心を満たすためだけに行われているこの行為だが、そのせいであのポーションを本当に必要としている人に行き渡らなくなるのだ。


 俺が怪我をする分には構わない、いや、正直致命傷だと困るのだが……


 しかし今あの薬を必要として苦しんでいる人の事を思うと、我慢が出来なくなっていたのだ。


「何をしているの!」


 そこに、スミナが現れた。


 店内にいる俺を見ながら無駄な作業をしているヒムロ達は、突然背後に現われたスミナに驚いたようだ。


「えっ、あぁ、驚かせるなよ、スミナ。別に大した事じゃない。公爵家嫡男である俺にとってみれば、ただの散歩と言った所だ」


「そうそう、ヒムロの言う通り大した事はしていないけれどね。安物のポーションを廃棄しているだけですよ」


「こんな品質の売りモン、廃棄されても当然だろ?でも優しい俺達はキチンと対価を払ったぜ!」


 何故か対価を払うと言う当たり前の事を偉そうに伝えている。


 これでスミナの気を引こうとしている節があるのだから、頭に蛆でも湧いているのだろう。


「何を言っているの?あなた達は家に帰れば、もっと高級なポーションがあるでしょう?この町の人が使うポーションを使いもしないのに買い漁った上で無駄に捨てて、ホント最低!」


 見た事もない位怒っているスミナ。


 何故ここにいたのか疑問に思うところもあるのだが、このままだと少しまずいか?


 いくらこいつらがスミナに惚れていそうでも、正論を言われて大人しくしている訳もない。


 と言う俺の心配をよそに三人は互いを見るとバツが悪そうにしつつも、不敵な笑みを浮かべたままこの場を去って行った。


 拍子抜けだ。


「ジニアス君、大丈夫?ジニアス君はきっと明日の球技大会の為にポーションを買おうとしたんでしょ?」


 ハイ、彼女はお見通しでした。

 まっ、あの三バカが分かるくらいだから、優秀なスミナが分からないはずはない。


「これ、良かったら使って!」


 差し出されたのは、この店にあるポーションよりも数段品質の良いポーション。


 コレを薄める事によって品質を落として安価に販売しているのがこの店のポーションであり、世の中に販売されている一般的なポーションだ。


 きっと、彼女は俺の為に家からポーションを持ってきてくれたのだ。


 俺は悩んだ。いや、とても嬉しいのだが。


 ここまで来てしまったら、さっさと斑の卵の力を得てあいつ等と正面から対抗するべきなのか?


 しかし卵を今から手に入れても、明日には間に合わない。


 孵化の工程が必要だし俺は全系統の力を手に入れるつもりでいるので、それぞれの系統に属した修行も必要なのだから、どうあってもあいつらに対抗するには時間が足りなさすぎる。


 俺が斑の卵を手に入れずに今まで我慢してきたのは、卵の力を得る事によって身体能力が格段に上がってしまい、何かしらの能力を手に入れただろうと言う事を第三者が明らかにわかってしまう為だ。


 そんな事をしたら学園から何を言われるかわからないし、鑑定されてしまっては能力を得ている事が明らかになり、結果的に卒業できなくなるかもしれないからな。


 ふ~、今更焦っても仕方がない……か。


 ここまで来たら覚悟を決めて、普通に活動するしかないな。


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