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(88)戦闘祭り(2)

「さぁ、ご来場の皆様!急ではございますがジェイド陛下肝いりの戦闘祭りが始まります!なんと今回、隣国であるヨルダン帝国の公爵家より、上限レベル7のお三方が参加して頂ける運びとなりました!ご紹介いたしましょう。ダイマール公爵家の攻撃系統レベル7、ヒムロ様!」


 出場者控室にいた三人は、会場に来るように言われて付いて行くと突然大きな声が聞こえてきた。


 丁度自分達の紹介をしているようで、目立つ事が大好きな三人は頬が緩む。


「続きまして、スラノイド公爵家の補助系統レベル7、レグザ様!」


 一応呼ばれた際には一歩前に進み出て、恭しく一礼する余裕を見せている。


「最後に、ホワイト公爵家の攻撃系統レベル7、ビルマス様!」


「はっ、この扱いが俺達公爵家嫡男に対する正しい態度だ」


 最後に紹介された為に周囲を見る余裕があったビルマスは、一礼しつつも悪態をつく程の余裕が生まれていたのだが……アナウンスの続きを聞いて他の公爵家嫡男と同時に渋い顔になる。


「異国の地ヨルダン帝国の公爵家嫡男三人。何と言っても我らが敬愛するソフィア様一行を亡き者にしようとしつつも、平然とこの場に来られるほど分厚い面の皮を持っているので精神面においては最強でしょう。ですが、戦闘面ではどうでしょうか?契約によれば、死亡しても問題ない事になっておりますしジェイド陛下も追認されているので、私、非常に楽しみです!」


「「「「うぉ~、ぶっ殺せ!」」」」


 会場からは地響きがするほどの怒りの声が聞こえてくるのだが、余裕を取り戻している三人は紹介されていたように精神的に強くなっているので恐れるばかりか、逆に観客方面に向かって睨み返すほどだ。


「盛り上がってまいりました!それでは早速第一試合を始めたいと思います。皆様待望の惨殺……失敬しました。待望の戦闘が見られますよ!我らがイリス様対ホワイト公爵家嫡男のビルマス(・・・・)!」


「おいビルマス!手加減なんてするんじゃねーぞ!」


「愚民に私達の力を見せつけるべきです!」


「当然じゃねーかよ。まぁ、二人には悪いがあの女(イリス)が勝ち上がる事は無いぜ?じゃじゃ馬(イリス)を躾ける事が出来るのは俺だけだ!」


 余裕の表情で首をコキコキ鳴らしながら一段高くなっている闘技場に上がって行くビルマスと、既に待ち構えていたイリス。


お前(イリス)を倒した後はヨルダン帝国のメンバー同士の戦闘が続く事になるな。観客としては面白くねーだろうが、シラバス王国の連中とはレベルの違う戦いになるから、きっと何が起きたか理解できねーぞ?」


「余計な心配すんな。お前等ゴミ三人をこの私がギタギタにする所を目撃できるんだ。そもそもこの祭りの趣旨はそれだからな。そりゃー楽しくって仕方がねーだろう」


 二人が会話をしている間、戦闘に参加しないメンバーは控室に強制的に戻されるので、ヒムロとレグザは各部屋から戦況を確認している。


 実はこの行為にも意味があり、トーナメントの配列も意味がある。


 イリスが勝ち上がる事が大前提にあるのだが、先ず攻撃系統の一人を潰し、その次に補助系統を潰す。


 こうなると最後に残った攻撃系統のヒムロは焦るはずであり、既に戦力増強の要である補助系統の力を持つレグザも潰された後なので、成す術なくイリスにしてやられると言う寸法だ。


「その余裕の表情を、直ぐに絶望の表情に変えてやんぜ!この俺、ビルマス様がな!」


 攻撃系統を持つビルマスは剣術を最も得意としているので、帯剣している剣を引き抜く。


---シャラン---


「はっ、獲物だけはきっちりと作り込まれた物を持っているじゃねーか。どう見ても宝の持ち腐れだがな」


 流石は公爵家嫡男だけあって、かなり高価な剣を持っているレグザ。


「俺の攻撃系統は剣術が最も得意だ。俺だけ武器を持っているので負けたなんぞ言い訳にもならねー事位は、田舎者でもわかるよな?」


 ビルマスの煽りには呆れた様子しか見せないイリスだが、確かに指摘の通りイリスは今武器を持っていないように見える。


 実際は各種暗器を装備しており、手の中には見えない形で小さいながらも非常に重く硬い球が握られているのだが、ビルマスにはもちろん見えていない。


 レベル8の体術を使って初めて成し遂げられる攻撃であり、質量のある球を高速で敵の意識の外、見えない位置から放つ事ができるのだ。


 本来自分よりもレベルが高い人物を相手にする事、そして同一系統を持っている相手である以上は相当な秘策があるか、熟練の技があるか、が無ければ勝つ事は難しいのだが、自分の優位を無駄に疑っていないビルマス。


「さ~、いよいよ始まります嫡男共の躾祭り……ではなく、戦闘祭り!盛り上がってまいりましょう!」


 あからさますぎるアナウンスだが、ビルマス達はこの状況でイリスを返り討ちにすれば自分達の力を認めさせる事ができるし、無礼な態度を咎める事も容易だと思い、より力が入る。


「では、第一試合……イリス様対ビルマス、はじめ!」


 いよいよダンジョンでの報復措置である戦闘祭りが始まった。


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