表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/140

(87)戦闘祭り(1)

「これで良いだろう!俺達の本当の実力を嫌と言う程見せてやる」


「全く、嘆かわしい。王女や侯爵令嬢ともあろう者達が真の強さを理解していないようだ」


「対戦相手がどうなっても知らねーぞ?」


 それぞれが記入済みの参加登録用の紙をソフィア達に見せつけた後、受付に投げつける。


 その行為だけで嫌悪感が溢れ出るのだが、きっちりと受領されるまでは大人しくしているソフィア達。


「お三方の参加、承認されました」


 受付のこの一言を聞いて、三人の表情は獰猛な笑みに代わる。


 その急変ぶりに少々気後れしてしまうヒムロ達だが、そんな事はお構いなしにイリスが参加登録用紙を受付から貰い、注意事項をわざと大声で呼んだ後に記入する。


「ソフィア、この制約によれば怪我を含めて(・・・)何があっても文句は言わねーって書いてあるな。死んじまっても問題ね~んだろ?」


「フフフ、イリスが指摘した通りですわね。よく読まずにさっさと名前を書いたバカがいますが、相当な自信家なのでしょうか?」


「そんなわけないわよ、ソフィア。きっと文字も読めない未開の地から来たのよ!」


 ラビリアの一言で大笑いしだすソフィアとイリス。


 確かにヒムロ達は制約について一切読まずに勢いでサインしたが、自分達が最強だと信じているので今更出場を撤回するつもりはなかった。


 逆にイリスと対戦する事になった場合には、負けを認めても更にボコボコにしてやろうと固く心に誓っている。


「で、偉そうな王女とそのお付きの者(ラビリア)は出場しないのか?」


 当然ヒムロが笑っている三人に対して煽り返すのだが、ラビリアはレベル8とは言え回復系統であり直接戦闘向きではない事、ソフィアは操作系統と言う事もあるが王女と言う立場であり、無駄に民の前で戦闘するわけにはいかないので出場する事は無い。


「ご心配なく。あの時のふざけた冒険者……何と言いましたか?忘れましたがレベル9の冒険者の力がない状態で偉そうにできるその根性だけは褒めてあげますわよ。正直に言って貴方達程度であればイリス一人で十分ですわ。どれほど未熟なのか、その身をもって思い知ると良いと思います」


 これだけ言うと、異国の地に初めて連れてきた他国の公爵嫡男を完全に無視してソフィア達はこの場から消えて行く。


 残されたヒムロ達は右も左もわからない状態で放逐されたので、その被害は受付に向かってしまったのだが……そこは同行した騎士が何とか諫めて事なきを得ている。


 急遽開催されるとは言え一応は国王主体で動いている祭りであるために会場周辺は非常に賑やかになっており、当然宿が空いているわけもなく……公爵家から同行している騎士が持っていたテントで寝ているヒムロ達。


「くそっ、なんだこの扱いは!異国の公爵家嫡男を野宿させるなど、有ってはならない事だろうが!これは国際問題だぞ!」


 他国の王女達を暗殺しようとした事の方がよほど国際問題なのだが、想定していない程の劣悪な待遇に怒り心頭のヒムロ達。


「こうなったら、国民の前で非礼な態度をとったイリスを痛めつけて恥をかかせてやる」


 最も好戦的なヒムロが願望を呟いて自らを落ち着かせると、やがて眠りにつく。


 翌日、祭り開催当日の熱気と騒ぎで目が覚めた三人は、騎士が持ち歩いている非常食を口にした後に軽く体を解す。


 立場上このような野営はあまり経験がないので、体中が痛くなってしまうのは避けられなかった。


「随分と立派な……立場に相応しい寝床ですわね」


「このせいで実力が出なかったと、明確な言い訳が出来て良いじゃねーか?」


「フフ、イリス、あまり本当の事を言ったら可哀そう……でもないですね」


 三人が凝り固まってしまった体を解していると、ソフィア達が到着したようで軽い挨拶とばかりに話しかけ……煽ってくる。


「はっ、言ってろ!この程度は何も問題ね~んだよ。寧ろハンデにすらならねーって事をこのヒムロ様が思い知らせてやる」


「全く、この国の王族や貴族は品が無くて困りますね」


「そもそも、戦闘に参加すらしねー奴に偉そうな事を言われたくないがな」


 ヒムロ達も反撃するのだが、その言葉を全て聞き終える前にソフィア達はさっさとこの場から去って行く。


「グッ、あいつ等……おい、レグザ、ビルマス、俺達の本当の強さを見せてやるぞ。特にあのイリスとか言うのが対戦相手であった場合には容赦するな!」


 ルールすら理解していない状態で怒りのまま勢いで会場に入って行くヒムロ達は、登録されている事を知っているこの騒動を見ていた受付の対応によって出場者控室に何とか到着し、そこで初めてこの祭りはトーナメント戦である事を知る。


 控室の壁にはそれぞれの出場者の名前が既に書かれており、誰が誰と闘い、その勝者が別の勝者と闘うのか、一連の流れが一目でわかるようになっている。


「明らかに……作為的ですね」


 ヒムロ達の中では比較的冷静だったレグザがその表を見てこう漏らしていたのには理由があり、少ない参加者ながらもイリスがビルマスと対戦し、仮に勝ち上がればその後は自分(レグザ)と対戦し、最後にヒムロと対戦するようになっていたからだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ