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(83)貴族と王族(2)

 国王と娘であるソフィアが互いに笑顔で抱擁しているのだが、この場にいる二人……ソフィアと同じように下層に飛ばされたイリスとラビリアの表情は非常に厳しい。


「陛下。ソフィア様を危険に晒してしまいました。申し訳ございません」


「いかなる処罰も、甘んじてお受けします」


 未だに抱き合っている国王とその娘二人に対して跪いて謝罪する、留学生として同行している侯爵令嬢のイリスとラビリア。


「何を言っているのだ?その方らは良く娘を守ってくれたと褒美を渡そうと思っていた所だ。罰など有ろうはずがないだろう?と、そう言えば、最大の功労者にお礼を伝えていなかったな。私としたことが。君がジニアスか?」


「は、はい」


 何故かもうガチガチになっているジニアス。


「ハハハ、そう固くなるな。と言っても難しいか。う~ん、ヒューレット、お前の力で何とかならんか?」


「いえ、陛下。それは無理と言うものですよ」


 そんなやり取りが行われて、少しだけ緊張が解れたジニアスと改めて事情を明らかにする三人の留学生。


 因みにジニアスの母であるレンファは、他国の国王がいる緊張感に耐えられずにさっさとこの場から逃げている。


「やはりあの三人が絡んでいますか。ですが、ご存じの通りダンジョン内部の事故は例え故意であっても証明できないので、有耶無耶にならざるを得ないのですよ」


「ヒューレットの言う事は分かるがな。余の娘、国王の娘の命を奪おうとしたのだぞ?到底看過できる事ではない」


 国王と言う立場の為に事情は全て理解できているのだが、納得できるかどうかは別の話だ。


「お気持ちは良くわかりますが、あまり揉めると国家間の戦争になりますよ?民の為にそれだけは防ぐべきではないですか?更に、その後陛下達は国に戻られますが、この場に残るアズロン男爵、フローラ夫人、スミナさんにも要らぬ火の粉がかかるかもしれません」


「うっ、クソ。そうだな……アレ?その中にジニアスは入っておらんのか?」


「ジニアス君は、その程度の火の粉は問題ないですよ」


「ハハハ、そうだな。ダンジョンの深層を平気で突き進むような傑物だからな。良し分かった。腹は立つが、少しは呑み込もう。だが、何もしないわけには行かない。そこは申し訳ないが了解願いたい。な~に、場合によってはアズロン殿には我がシラバス王国に来ていただければ良いのだ」


 どこまで本気か分からないが、とんでもない事をサラッと言ってのけるジェイド国王。


「えっと……ちょっと良いですか?」


 安全の話が出たので、今がチャンスだと言わんばかりにオズオズと何故か手を上げながら話すジニアス。


「実は、アズロンさん、フローラさん、スミナ、そしてお礼も兼ねて操作系統の力をお持ちのヒューレットさん用の眷属を各一体連れてきました。あっ、それと自分の母親にもですが……これで安全はある程度確保できると思いますので、今呼んでも構いませんか?」


 ジニアスの提言に即食いつくジェイド国王。


「おぉ、ヒューレット達が揃って認めているジニアスが連れて来た眷属か。楽しみだな。なぁ皆?」


 その顔はまるでおもちゃを前にした少年のようだ。


「良し、出してみよ。今すぐに!!」


「もうっ、お父様の為に出すわけではありませんのよ!」


 少々暴走気味のジェイド国王を、苦笑いしながら諫めるソフィア。


「えっと、ジニアス君。俺の為に連れてきてくれたのかい?という事は……君ほどの人物が連れて来たとなるとちょっと期待しちゃうけど、レベル9の魔獣……で良いのかな?」


「はい、そうです」


 あっさりとなされる会話に、思わず騒いでいたジェイドも黙る。


 レベル9の魔獣など普通に考えて眷属にする事は出来ないからなのだが、目の前のヒューレットとジニアスは普通に話しているので、自分の感覚がおかしいのかとすら思っているジェイド国王は無意識に首を傾けていた。


「じゃあ俺は、直接従属魔法をかけ直すという事で良いのかな?」


 首肯するジニアスを見て、ヒューレットは続ける。


「で、残りの四体は……アズロンさんとフローラ殿達にも同じ魔獣かな?だとすると、直接従属魔法はかけられないだろう?その辺りはどうするんだい?」


「えっと、夫々を主として認識させます」


 普通は出来ない操作系統の力だが、レベル10のジニアスには関係ない。


「フ、ハハハハ、流石はジニアス君だ。じゃあ早速出してもらえるかい?」


「はい。三人を救出に行った際にいたので、丁度眷属にした霞狐です」


「……はぁ~!?!おい、ジニアス。いま霞狐と言ったな?言ったよな??」


「お父様、お気持ちは良く分かります。ええ、本当に良~く分かりますが落ち着いて下さいませ!」


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