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不遇と呼ばれる能力の卵を孵化した、少年ジニアスの成り上がり  作者: 焼納豆


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(76)留学生とダンジョン(2)

 突然の課外授業の引率を頼まれた、ある意味ダイマール公爵お抱えの四人の冒険者達は、この依頼が単純な引率である訳がない事位は全員が知っている。


 その予想通り、いや、予想以上の仕事が舞い込んできた。


 まさかの隣国の王女、侯爵令嬢の抹殺だ。


 いくら何でもその手で始末するのは少々憚れたためにダイマール公爵側と交渉の結果、既にドノロバ達が把握している転送の魔法陣による深層への強制転移が行われる事になっていた。


 かつてレベル9の冒険者が更なる富と名声を得ようとこの転送の魔法陣にわざと乗った事も有ったのだが、数年経過した今を持って生還していない以上、どのような結末になったのかは明白だ。


 その情報を掴んでいるダイマール公爵は、ドノロバ達の申し出を受けていた。


 浅層は特に問題なく進んで行く中で、ソフィア達三人の実力を見ると言う事である程度魔獣を始末させていたドノロバ。


「ほぉ~、レベル8は伊達じゃねーな。それに回復系統の結界を使って攻撃するとは、それなりに訓練もしているようだ。これなら……少々深くまで潜っても問題ねーだろ。お前らが口にしていた黄金の卵、ひょっとしたら見られるかもしれねーぞ」


 戦闘に関して褒めたのは事実で、後半の卵についてはそうは思っていない。


 今まで長い間深層と思われる階層まで潜ってきたドノロバ達ですら、自ら力を得た卵しか見た事が無い程レアだからだ。


 ヒムロ達もそこは理解しているが、実情を知らないソフィア達三人はその言葉に喜びを隠しきれない様子が見て取れる。


 本当に少しだけ罪悪感を覚えたドノロバだが、ダイマール公爵から受け取った前金を思い浮かべ、頭を振る。


「良いか、こっから先は五階層、中層と言われている。最終階層に到達した者がいねーから、本当に中層かは知らねーがな。今まで見たお前らの動きなら、ここでも問題ねーだろ。他の連中は六階層を予定しているが、もう少し先、八階層を目標とする」


 ドノロバの言葉通り、ソフィア達三人だけではなくヒムロ達でもこの階層の魔獣にはてこずる事も無く対処でき、目的としていた八階層に到着する。


 流石にこの階層になると少々苦戦する事が多くなってきたのだが、経験豊かでレベル9のドノロバのフォローも有って今の所かすり傷程度で済んでいる。


「よし、こっちだ」


 ドノロバが細い道に入るので、後を続く六人。


「見てみろ!」


 開けた先の壁面には斑や黒が無数にあるが、二つだけ紫の卵、そして一つだけ緑の卵が存在していた。


「これが……能力の卵の生息場所なのですね」


 感動している三人の留学生。


 ドノロバは、三人の最後の思い出の為に少しだけ寄り道をしたのだ。


 喜びながら何かを語り合っているソフィア達三人を暫く放置して好きにさせているドノロバだが、あまり時間をかける訳にもいかず、次の行動に移る事にした。


「おい、そろそろ行くぞ。もう一つとっておきの場所がある。そこを見て帰れば、丁度良い時間になるだろう」


 広い空間から戻り再び少々細い道を進むのだが、後方が騒がしくなってくる。


「……これはまずいな。少し厄介な奴がくる。このままだと追いつかれる可能性が高いから少し急ぐぞ。俺は殿で、ないとは思うが追いつかれた時の対応をする。このまま進めば道は三つに分かれる。そのうちの一番右を進め。良いな?後ろに意識は向けないように全力で行け。その道は細い。その先にさっきのように少し開けた場所があるからそこで待っていろ。細い道であれば、後ろから来ている魔獣が侵入する事は無いはずだ。良し、行け!」


 ドノロバの声と共にソフィア達三人は一気に走り出す。


 それもレベル8の力を使って全力で移動している。


 その少々後ろをドノロバやヒムロ達が進んでいるのだが、彼らは余り後方に意識を向けていない。


 当然だ。


 後方から追い立てるように向かってきている魔獣は、今回の作戦の参加者である冒険者ムスラムの眷属だからだ。


 初めてのダンジョンの奥に入り込み、より響く魔獣の声を聞いて少々パニックになってしまっているソフィア達三人は、後方に残ってくれているヒムロ達やドノロバに感謝をしつつ逃げている。


「ここを右!」


 指示されたとおりに全力で一番右の細くなっている通路に侵入する。


 三人が並べるほどの大きさはなく、一列になって全力疾走して暫くすると少し大きな空間に三人共が辿り着く。


 大きいとは言っても、人が5~6人程度入れるほどの大きさの空間だ。


「はぁ、はぁ、ここが指示された場所ですわね」


「そうみたいね、はぁ、はぁ」


「彼らは無事なのか?はぁ、はぁ、まさか、あの公爵嫡男すら身をもって守ってくれるとは、正直誤解をしていたぜ」

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