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(65)納税(1)

 ある意味直接的に貶されるような物言いをされたダイマール公爵だが、自分が優位に立っていると確信できているので余裕の態度を崩す事は無い。


「そうですか。それで、その不埒な者の気配はどうなりましたかね?」


「それが、何とも言えません。私達の調子も変動するので、常に絶好調と言う訳ではありません。ですから、会話ができる超至近距離でも感知できない場合もありますし、遠距離で感知できる場合もあるのですよ。今はどちらでしょうね?」


 本当はそこまでの事実はないのだが、あいまいに答えるヒューレットの視線は厳しくダイマールを見ているまま。


 これ以上この件で押し問答しても仕方がないと思ったのか、ダイマール公爵は本来の目的を告げる。


「まあ、不埒な者に関してはもう良いでしょう。話が進みませんからな。それで、今日来た目的ですが……謁見の間での税の話に関してですが、どう見てもアズロン殿にとっては厳しい事は理解できます。ですから、この私ダイマールが一肌脱ごうと思いましてこうして態々お伺いしたのですよ……っと、何ですかね、あなたは?」


 未だに動けないチャネルは、正にこのダイマールのふざけた言葉を聞いて睨む視線が一気に強くなったのだが、チャネルは何故か動けないと分かっているダイマール公爵は少し怯えた表情に変わったままではあるが話を続ける。


「それで、陛下は物納でも現金でも何でも良いと慈悲を下さいました。その内容であれば、我が公爵家が即日ご用意させて頂く事が出来ます。どうでしょう?」


 あえて対価については言わないダイマール公爵と、同様にあえてそのことには触れないアズロン男爵。


 どちらも態々聞かずとも全てを理解しているからだ。


 ダイマール公爵の問いかけには、何故か問いかけられたアズロン男爵ではなく即座にヒューレットが反応する。


「ダイマール公爵。その件についてはこちらで対応できると先程話していたところです。ですから、その申し出はお気持ちだけ受け取っておきます。ですよね?アズロンさん!」


「え、えぇ、はい。そうですね。そうです」


 本当はヒューレットの申し出は彼らの貯蓄の全てを吐き出す事になっており、非常に申し訳ないので頑なに断っていたのだが、この場でここまでされては否とは言えないアズロン男爵。 


 自分の行動の結果によって、妻と娘の安全がかかっているのだから……


「フム、そうですか。私の知っている範囲ではヒューレット殿のパーティーの資産を全て吐き出しても納税額には至っていないと思っていたのですが、間違いだったようですな。なんと言っても期日はもうすぐ。私としても納期直前に援助のお申し出があった場合には、それなりの対価を頂く事になるのをお忘れなく」


 直前でなくとも対価を取るつもりであったダイマール公爵は、無駄に豪華な馬車に乗って去っていく。


「あの狸野郎、俺達の情報もすっかり調べていやがる」


 すっかり動けるようになったチャネルが、遠くに見える馬車を睨みながら呟く。


「皆さん、ウチのチャネルが暴走して申し訳ありません。今後の事を改めて話したいので、戻りましょうか」


 さり気なく自分が切れていた事もなかった事にしてヒューレットがその場を仕切り、名指しで暴走を指摘されたチャネルは少々バツが悪そうに、頭を掻きつつ部屋に戻る。


「それで、アズロンさん。先ずは税の差額、二億八千万マールについての話をしましょう。この金額であれば高位の魔獣、相手としては非常に厳しいですが妖幻狼一匹で事足りる金額になります。正直我らがパーティーでもその強さから簡単に手に入れる事は出来ないでしょう。ですが……」


 ヒューレットは言葉を切ってジニアスと共にいるブレイドを見ているので、言わんとしている事は流石のジニアスでも理解できる。


「任せて下さい。可能であれば数匹狩ってきますよ」


「ジニアス君、そんな危険な……」


 娘の同級生、つまり学生のジニアスにレベル9のパーティーでも撃破できないと明言している魔獣の狩りに向かわせるのをためらうアズロン男爵は、既にブレイド達の力を知っているのでこれ以上の言葉を発する事は無かったが、あまりにも自分の不甲斐なさが悔しく唇をかんでいた。


 その中でも、納税期日は待ったなしなので話は進んで行く。


「えっと、ヒューレットさん。その、魔獣の相場が良く分からないのですが、その妖幻狼ってどの程度のレベルですか?」


「一応レベル9という事になっているけど、ほぼレベル10と言っても良いだろうね。一度だけ見た事はあるけど、遠目ながらにも一目見て俺達では全く敵わないと悟ったほどだからね」


 即時撤退した為に事無きを得たと付け加えているヒューレットだが、その話を聞いて何故かジニアスは少々バツの悪い顔をしながらこう告げる。


「その……妖幻狼って、虹色の体毛を持つ巨大な狼で合っていますか?」


「その通りだよ。良く知っているね?学園で習ったのかい?本当に厄介な個体だけど、ジニアス君の力なら問題ないだろうね」


 ヒューレットは、ジニアスが初めて魔獣を相手にするために少々気後れしているのかと思い、油断はダメだが心配する必要はないと告げた……のだが、ジニアスの表情は不安によるものでは無かったようだ。


「その、申し訳ありません。魔獣の価値が良く分からなくて。今言われた妖幻狼と言う魔獣ですが、その……ネルが十体ほど持っているそうです」


「………」


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