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(63)アズロン領とダイマール公爵(5)

 一先ず一室に集まり、今後について話し合っているヒューレット一行。


「確かにダイマールを消すのも良い手かと思っていましたが、皇帝が介入する可能性もありますね。それに、ダイマールはレベル9のジリュウやムスラム達と繋がっていたはず。あの狡賢い男ですから、あの連中を護衛に付けているのかもしれません」


 ヒューレットの予想は若干ずれている。


 ダイマール公爵の護衛ではなくアズロン男爵殺害の任に就かせていたのだが、そこまでは知る由もないヒューレット。


「あのムカつくムスラムか。確かに公爵家ともなればレベル9の連中とも繋がっているだろうな。それに、薄汚い公爵と、黒い噂が絶えない冒険者連中。繋がっていない方が不思議ってもんだぜ!」


 流石はレベル9の冒険者であるチャネル。本能で事実を突き止める。


 既にこれ以上今この場で出来る事は何もないので、パーティーとしての今後の活動についての話をし始めるのだが……方針は全員が既に決めており、これ以上ない程完全に一致した意見だった。


「俺達はこのままアズロン男爵の護衛をします。今後も、継続して護衛をする方向で調整しましょう。当然無償です。公にはしませんがね。それでいいですね?」


「「「当然だ(よ)!」」」


 失意のままに帝都の別邸に戻ったアズロン男爵。


「では、パーティー全員も暫くこちらに滞在させて頂きます。どこかに行かれる際は、必ず誰かに声を掛けて下さい」


「ありがとうございます」


 同行していたヒューレット一行は道中にアズロン男爵を説き伏せ、対外的には有償だが、実際は無償でアズロン男爵一家を護衛する任務に就いていた。


 そのため、ヒューレット一行はアズロン男爵の館に宿泊する事になっている。


 この時点でダイマール公爵はアズロン男爵領の惨状を暗部より聞き及んでいるので、アズロン男爵の次の行動を待ち望んでいた。


 ダイマール公爵が考えているアズロン男爵の行動とは、当然皇帝への直訴。


 次点で、ほぼ有り得ないと思っているが、他の貴族への援助申請だ。


 当然他の貴族達にはそのような依頼は突っぱねるように公爵家の立場を利用して厳しく指導(命令)しているので、全ての貴族に断られて自分の所に来たならば書状で公にしたうえでフローラとスミナを引き取ろうかと思っている。


 対外的には、経済的に窮地に陥った人達を救うと言う体で……


ユルハン様(ダイマール公爵)、どうやらアズロン様は皇帝陛下に謁見申請をしたようです。急を要するとの申請で、恐らく明後日には謁見する事になるでしょう」


「わかった。そこにはこの私、ダイマール公爵も同席するとしよう。後程皇帝陛下にその旨連絡をしておこう。フフフ。良し、下がって良い」


 予想通りの展開を伝えてきた執事を下がらせ、早速アズロン男爵の謁見時の同席を頼むダイマール公爵。


 常日頃の蜜月ぶりから、何の問題もなく許可された。


 そして謁見の日、何故かアズロン男爵の護衛としてヒューレットパーティーのヒューレットとエリン、そしてジニアスまでが来ていたので少々眉を顰めるダイマール公爵。


 ヒューレットパーティーの二人はアズロン男爵の護衛と言う形で、残りの二人パインとチャネルは館に残ってフローラやスミナの護衛をしている。


 ジニアスが来たのは、学園でスミナがかなり落ち込んでいた事から半ば強引に事情を聞き出して、何か力になりたいとの思いでここにいる。


 もちろんジニアスの姿を確認したダイマール公爵は、即座に排除しようとする。


 得体のしれない力を持っている人物、平民であろうと不穏分子は排除する必要がある事は立場上本能で理解できている。


「何故平民如きがこの場にいる。皇帝陛下の御前だぞ。おい、摘み出せ!」


 その声に反応したのはヒューレットだ。


「お待ちください。このジニアスは、私達パーティーに一時的に同行して冒険者のイロハを学んでいる所です。ヨルダン帝国としても屈強な冒険者が増える事は益になるのではないですか?」


「……確かに尤もな意見だ」


 ダイマール公爵とアズロン男爵の軋轢を知らない皇帝シノバルは、あっさりとヒューレットの意見を取り入れた。


 皇帝に言われてしまっては引き下がるしかないダイマール公爵は、内心で舌打ちをしつつも黙っている。


「それで、至急の謁見とは何用だ?」


 皇帝に問いかけられたために返事をする事が出来るアズロン男爵。


「はい、実は我が領地ですが農作物や家畜、全てが破壊されておりました。それもここ数週間の間で全てを……です。それまでは順調に育ち、収穫を待つ状態であったところまでは確認しております。ですが、理由は不明ですが、明らかに人為的に全てが破壊されていたのです。その状況はこちらのヒューレット一行も確認済みです」


 ヒューレットパーティーはここに至るまでに何とか手助けをしたいと考えた結果、この場で自分達も惨状の証人になる事をアズロン男爵に提言していた。


 当然これは、その惨状を引き起こしたダイマール公爵を敵に回す行為であると知りつつも……


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