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(60)アズロン領とダイマール公爵(2)

 現実的に、今回の作戦は準備時間があっても非情に危険な依頼に変わりはないので、そのような依頼を不利な態勢で強引に受けるという事まではしなかった冒険者達。


「では、その旨は伝えておこう」


 再び鳥の魔獣を召喚した操作系統の能力を持つムスラムが、四人の総意として今回の時間制限まで加えた依頼は実行不可能である事を書状に認め、ダイマール公爵邸に飛ばした。


 もちろん油断していると距離があるこの場所ですら危険なため、その後即全員が離脱している。


 判断が早く的確な行動を取っていたので、四人の冒険者、ドノロバ、ジリュウ、ムスラム、トステムの存在をヒューレット一行に気が付かれる事は無かった。


「バカな!ふざけおって。同じレベル9であるにもかかわらず、怖気づいたという事か?恥を知れ!!」


 再びムスラムの眷属である鳥の魔獣から届いた手紙を読んで、憤慨するダイマール公爵。


 返事は不要とばかりに眷属はさっさと飛び去っているので、手紙を丸めて壁に投げつけている。


 自宅にフローラ達を留める事にも失敗し、アズロン男爵の殺害も失敗が確定した。


 自分の要望は報奨金増加の依頼については問題なく飲むので、作戦決行時期を早めろと言うものだった為に、即回答の手紙が来た時には作戦終了の報告かと思い喜びに満ち溢れながら、流石はレベル9の冒険者だと感心しつつ手紙の封を開いていた。


 しかしそこに書かれていた内容は、報奨金はいらないので今回の依頼はキャンセルすると言う単純な説明だけだった。


 余りにも時間が無さすぎるので、依頼を受けないという事だけが書かれていた。


 ダイマール公爵は、彼らが今回依頼を受けなかった理由は書かれている通りに準備時間が無いからなのだろうとは推測できている。


 ヒューレット一行との対峙に対して、リスクが大きすぎると判断した結果だという事だ。


 下級冒険者であれば、手紙一通で依頼を断るという事などは決して許されない行為ではあるが、レベル9となり貴族と同等の地位と権力を有している四人だからこそ、公爵相手にこのような態度を取れるのだ。


 ダイマール公爵もこの事は良く分かっており、更には依頼内容が真っ黒な内容である為に表立って彼らを批判する事ができない。


 当然四人の冒険者達もそれを理解した上で、そっけない返事を書いている。


「くそっ、今回の作戦は全て失敗。フローラに対する毒の攻撃も二度と使えんだろう。どうする?」


 再び自室で唸るダイマール公爵。


 今まで長きに渡り優秀な暗部を使用してフローラを弱らせてきたのだが、あと一歩と言う所で、ジニアスと言う全く予想できないイレギュラーな存在が現れて全てが無に帰していた。


 フローラやアズロン男爵側にはこの一件()は明らかになっているだろうから、二度と同じ手は使えない。


「どうしようもないな。仕方がない、正攻法で行くか。それに、領地の荒れ具合によっては……フフフ」


 アズロン男爵領地内で畑等を荒らしている暗部については、適切に撤退するように指示した上で作戦を実行させているので、既に帰還している旨の報告を受けている。


 アズロン男爵側にヒューレットが同行せずとも、これは予定通りの行動であった。


 結果的に、暗部がヒューレット一行に捕縛される可能性は無くなっているので安心しているダイマール公爵。


 結局は皇帝からの仕事を実直にこなした上で、褒賞を聞かれた際に何とかフローラを要求する方向で動こうと思っていた。


 何もなければフローラを要求するような事は出来ないが、アズロン男爵側が大きな不手際や違反を犯したと認められればその限りではない。


 皇帝がそう判断すれば良いので、証拠もあまり重要ではないのが現実だ。


 どこが正攻法だ!と言いたくなる内容だが、公爵と言う地位を持つ者達の中ではこれは正攻法に含まれる。


 皇帝は現時点でアズロン男爵がダイマール公爵の善意を無下に断り続けて、妻であるフローラを危険な状況にまでしてしまったと言う認識でいるので、少々の違反や不手際でも心象は最悪になる事は間違いない。


 残念ながら爵位が低いアズロン男爵では自らの自発的な発言が認められる事はほとんどないが、逆に公爵ともなれば比較的意思疎通が容易であるのも、ダイマール公爵側に有り得はい程有利に働く一因でもある。


 こうして、シラバス王国との交流について頭を切り替えたダイマール公爵。


 一方、自分の領地に向かっていたアズロン男爵一行も、数日後に領地に到着した。


「これは……なんと申しますか、酷いですね、アズロンさん」


 ヒューレットが領地を一目見て、思わず漏らした感想がこれだ。


「仰る通りです。ここまで荒らされているとは……申し訳ありません、私は自宅に戻って確認することがありますので、ここで失礼させて頂いても宜しいでしょうか?皆さんは後程我が館に来ていただければと……」


 視界に入る範囲での全ての畑が一目でわかる程に荒らされており、家畜だった獣達も既に横たわっており動いていない。


 目に見える全てが破壊されている状況になっていた、アズロン男爵領だ。


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