表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/140

(57)ダイマール公爵宅鄭にて(3)

 ネルからしてみれば出来損ないの玩具にも等しい魔道具ではあるのだが、フローラの安全に意識を向けつつ、黙って魔道具が動きを止めるのを待っていた。


「お前はネルと言うのか。種族はなんだ?」


 その間に必死にネルに話しかけるダイマール公爵だが、ネルからは何の反応もない。


 もちろん反応しようにも、言葉が通じないので何かを伝える事はできないのだが・・・・・・


 何の反応も示さないネルに対してダイマール公爵は何とか自分に気を引こうと色々話すのだが、勢いのまま話しているので、ついに超えてはいけない一線を越えてしまった。


「どうだ?あんな男(・・・・)に付き従うのであれば、この私、ダイマール公爵であるユルハンに仕えた方が有益だぞ?将来の展望もある!」


 ネルの主人は今ではジニアスとなっているが、その魂と永遠に共に行動したいと心底願っており、その願いが叶っている所だ。


 その対象、ジニアスに対してあんな男(・・・・)呼ばわりしたダイマール公爵を見逃すわけには行かないのだが、決して余計な力は使うなとダイマール公爵邸に来る前にブレイドと共にジニアスから釘を刺されている。


 その為、その言葉を聞いた瞬間にネルはダイマールに向き直り、殺気を抑える事なく睨みつける。


 普段の美しい顔が怒りに染まっており、その銀目が明らかに赤く染まり始めているネルの表情を見て確実に地雷を踏んだと確信したダイマール公爵は、その口を噤んだ。


 いや、それ以上は恐怖から何も言葉を紡げなかったと言う方が正しい。


・・・・・・ビィ~・・・・・・


 ダイマール公爵としては果てしない時間が経過した感覚ではあったのだが、ものの数分で終了する魔道具による検査が終了した音が聞こえ、我に返る。


「こ、これで終了です。お疲れ様ですフローラ殿」


 ダイマールの一言を待たずに、ネルはフローラの元に笑顔で近づいてその体を優しく支える。


「ありがとうございます、ネルさん。ダイマール様、これで全て終わりですか?」


「えっ?いいえ。この結果によっては、詳細を確認する別の検査を行う事になります」


 ネルの鑑定術によれば、都度回復させていた状況ではあるがこの魔道具での検査を行うと少々体に異常が発生していた。


 発見即回復を繰り返しており、問題のない状態に戻してはいるのだが……


 ダイマール公爵としては、この自慢の魔道具の性能によって細かい異常を発見する事ができると思っていたのだが、実のところはこの魔道具のせいで異常状態になっていたのだった。


 今迄の経緯から、当然どこかに異常状態が見つかり詳細な検査の実行、そしてその治療の為に数日は引き留められるはずだったのだが、結果、この魔道具を使用し始めてから初めて何の異常もないと言う結果が出たのだ。


「こ、これは?バカな!」


 フローラが健康である事は喜ぶべき事ではあるのだが、毒を平気で盛るような男にそのような感性はないので、感情が直接声に出てしまっている。


「あら、何をそんなに驚かれているのですか?私は健康には自信があるのですよ。一時期、毒によって体調を大きく崩しましたが」


 驚愕するダイマール公爵に対して、フローラは全てを知っているかのような物言いでダイマール公爵に告げる。


 事実、ジニアスだけではなく夫のアズロン男爵からも事の詳細を聞いていたので、この辺りで一撃入れておこうと判断していたのだ。


 フローラの一撃に対して何も言い返せないダイマール公爵。


 こんな事になるのであれば今回の結果は自分一人で確認して偽装でもすれば良かったと思っていたのだが、未だかつて何の異常もないと言う人はいなかったので、完全に油断していた。


 逆に直接異常箇所がある事を告げる事により、ダイマール公爵家の力によって治癒可能である事を誇示したかったのだが、完全に裏目に出た。


「それでは、お手数をおかけしましたが何の異常もない事が確認されましたので、私達はお暇させて頂きますね」


「まっ、お待ちくださいフローラ殿」


 即帰宅されると今までの行動が無駄骨になるので、とりあえず引き留めるダイマール公爵だが、その後はどうするか・・・・・・何も考えていなかった。


 少なくとも、アズロン男爵の訃報が届くまでにはこの家にいてもらわなくてはならないと考えていたのだ。


「旦那様」


 そこに執事が至急の用事があると告げてくるので、助かったと思いつつダイマール公爵はこの場を後にする事にした。


「フローラ殿、今後については後で説明します。おい、フローラ殿とネル殿を食堂にお連れしておけ」


 こうして、慌てるようにダイマール公爵は検査の部屋を出て行く。


 流石に食堂にスミナとジニアスを残しているフローラとしても、ここから突然帰宅する訳には行かないので、先導する執事の後に黙ってついて行く事にしたのだ。


「それで、どうしたのだ?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ