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(54)アズロン男爵邸にて(2)

「こちらでございます」


「あっ、やっぱりいたね、ジニアス君。おそらく今この場にいるだろうと思って訪問させてもらったんだよ。アズロンさんも突然の訪問、申し訳ないです」


 ヒューレットは、ジニアスがこの場にいる事を推理した上で訪問してきたようだ。


「いえいえ、ですが突然の訪問、如何しましたか?」


「いやだな~、アズロンさん。わかっているでしょうに。あの手紙を本来届けるべき義務は我らにあったのですよ?その後の情報位は掴むのが当然です」


 このヒューレットの言葉だけでは、交流の大切な仕事から外された事を言っているのか、フローラやスミナの事を言っているのかわからないアズロン。


 そのせいか、曖昧な返事になってしまう。


「そ、そうでしたか。で、今後はどのように?」


「丁度ジニアス君もいる。アズロンさんもジニアス君の助力を得ようとしたのでしょう?狸の方はジニアス君。そうすると、アズロンさんの領地に同行する者がいなくなる。違いますか?」


 ヒューレットは全てを知っていると判断したアズロンは、隠す事なく全てを話した。


「・・・・・・と言う訳でジニアス君!勝手に決めてしまって申し訳ないが、何とか君だけは同行を許されたんだ。妻と娘を助けてくれ!」


 貴族の裏でのやり取りを聞いた事すらなかったジニアスは、ダイマール公爵にはあれ程釘を刺しておいたのにここまでしてくるとは・・・・・・と愕然としていた。


 しかし、尊敬できるアズロン男爵の頼み、スミナとその母を守る事に否はない。


「もちろん喜んで同行させて頂きますよ。あの野郎、あれ程忠告したにもかかわらず、覚悟はできているんだろうな!」


 後半に心の声がダダ洩れのジニアス。


「ジニアス君、気持ちはわかる。だが、皇帝が出てきている以上強引な力業を行ってしまうと、国家全体を敵に回す事になる。いくら君達(・・)の力が強くとも、国家相手では勝利する事は難しい。当然、君の肉親やアズロンさん一家にも危険が及ぶ事になるだろう。これが貴族と言う生き物なんだよ」


 国についてそこまで深い知識がある訳もない平民であるジニアスは、ヒューレットの言葉に反論する術はなかった。


「それで、俺達はアズロンさんの領地に同行させてもらおうと思っている。ここまでになってしまった責任を取らせてほしい。言うまでもなく、これは俺達が勝手にやる事なので報酬は一切発生しませんよ」


「ヒューレットさん、皆さん、ありがとうございます。申し訳ありませんが、何やら先ほど入った情報では畑も荒らされ始めているようですので、皆さんのお力を貸していただけるのであればこれ程心強い事はありません」


 とんとん拍子に話は進み、学園が休みの明朝、ジニアス、スミナ、フローラは帝都にあるダイマール公爵別邸に、アズロン男爵、ヒューレットパーティーはアズロン男爵領に夫々出発する事になった。


 アズロン男爵領は、隣国のシラバス王国領に接している場所にある為に帝都からは少々距離がある。


 ダイマール公爵としては手元にフローラを置く事が最終目標である為に公爵の伝手を最大限に活用して、この道中にアズロン男爵を亡き者にしようと企んでいた。


 自分の家に来るジニアスの対処は、どう考えてもこの短期間では対応できなかった。


 この現状を逆に好機とするには……と必死で考えた結果、アズロン男爵の手駒となり得る最高戦力であるジニアスを自分の家に留めておく事ができると考え、領地に戻るアズロン男爵に狙いを絞ったのだ。


 領主であり夫である存在のアズロン男爵がいなくなれば、フローラはどうとでもなると・・・・・・


 万が一もないように、準備した戦力はレベル9の冒険者。


 だが、ダイマールはアズロン男爵に同行している一行が同じくレベル9であるヒューレットパーティーである事を知らないままにこの作戦は実行されており、結果が上手く行くかは別の話だ。


「グフフフ、もう少しで漸くフローラが手に入る。本当に随分と待たされましたよ。逆にそれ故に喜びも大きくなると言うもの」


 ダイマールは、下種な笑みを浮かべてフローラが屋敷に来る事を心待ちにしながら就寝するのだった。


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