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(53)アズロン男爵邸にて(1)

 ダイマール公爵が邸宅で荒れている頃、アズロン男爵も沈んだ表情で家に戻っていた。


 当然家にジニアスはいない。


「スミナ。明日の学園終了後、もう一度ジニアス君を呼んできてもらえないだろうか?絶対に連れてきてくれ。頼んだよ?」


「えっ、良いのですかお父様!わかりました」


 内容を一切知らないスミナは、再びジニアスを家に誘える事に嬉しさを隠しきれないようだ。


「フフフ、スミナはジニアス君が大好きなのね」


「もう、お母様!」


 少し頬を膨らませているスミナ。


 アズロン男爵の横にいてスミナをからかっているフローラは既に全ての事情を聞いているのだが、表情や態度には一切出さない。


 翌日スミナは学園に向かって、教室に入る。


 もちろん教室の中は静かだったのだが、目的の人物であるジニアスに話しかける前になんとヒムロから声がかかったのだ。


「スミナ!明日、楽しみにしているぜ?」


 当然、ヒムロが何の事を言っているのか全くわからないスミナ。


 突然話しかけられて内容がよくわからなかったので、内心不思議に思いつつジニアスの元に向かう。

 

「ジニアス君、お父様が今日また来てくれないかって言っているのだけど、大丈夫?」


「え“、あぁ、わかった。だけど手土産をどうするか・・・・・・また同じものだと芸がないし」


 少々ずれたところで悩むジニアス。


「ウフフ、大丈夫だよ、ジニアス君。あんなに凄い物そうそう頂くわけにもいかないよ。それに、お父様は急いでいるようだったので、終わったらすぐに行こう!」


 かなり仲が深まった二人は、第三者から見ても既に互いの間にある壁は一切なくなっているように見える。


 その姿をいつも悔しそうに見ていたヒムロ達だが、何故か今日は余裕の笑顔だったのだ。


「おお、待っていたよ、ジニアス君。急に呼び出してしまって申し訳ない」


「とんでもありません、アズロンさん。えっと、スミナにも確認したのですが、まさかフローラさんの体調に変化があったのでしょうか?」


「いやいや、そうじゃないが・・・・・・詳しく話したい事があるから、来てくれるかい?スミナも来なさい。お前にも関係の有る事だ」


 これ程落ち着きのない父親を見るのはフローラの体調を何とかしようと必死で行動している時だけだったスミナは、間もなく話される事が良い話ではない事は気が付いていた。


「フフ、スミナ、大丈夫ですよ。アズロンさんが私達の為に必死になってくれている。それにジニアス君もいる。何も心配する事はありませんよ?」


 流石は母であるフローラ。


 娘であるスミナの感情の揺れを即座に感じ取ってフォローしているのだが、スミナとしてはジニアスと言う名前が母であるフローラの口から出た瞬間、何故か真っ赤になり下を向いてしまったのだ。


 こうして食堂に辿り着く。


「改めてジニアス君、突然の呼び出しに応じてくれてありがとう」


 スミナの言う通りにただならぬ雰囲気を出しているアズロンを見て、何か問題が起こった事は把握しているジニアスは、緊張した面持ちのまま話を聞くために勧められた席に座る。


 まるでそのタイミングを見計らっていたかのように、執事がアズロン男爵に来客を告げる。


「旦那様、ヒューレット様一行がお見えです」


「今?いや、ひょっとしたらこちらの事情を把握されたのか?ジニアス君、突然だが彼等にも話を聞いて貰っても良いだろうか?」


「え?はい」


 何もわからないジニアスは断る選択肢があろうはずもなく、肯定する。


 その後何とも言えない雰囲気で待っているジニアス達が少々たわいもない話をしていると、数分でヒューレット一行は執事に連れられて食堂にやってきたが、それぞれのメンバーの表情は非常に厳しいものになっている。


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