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(48)ダイマール公爵とヒューレット一行(3)

 余裕があるようにふるまっているダイマール公爵の言葉を聞いて、ヒューレットは持論を述べる。

 

「う~ん、確かに証拠はないのですよね。でも、暗部が絡めば証拠なんて一切出てこないでしょう?」


 これは世界共通の認識でもあるのだが、練度の低い暗部は別にして公爵に仕える様な暗部であれば完全に訓練されているので、関連性を含めて全ての事情が明らかになる事は絶対に無いと認識されている。


 その為、国家において原因不明の事故や事件が起こった際には確実にどこかの暗部が暗躍したと考えられており、また、事実でもある。


 その対策を思いついたかのように、ヒューレットのパーティーであるパインがサラッと爆弾発言をしてきた。


「そう言えばヒューレット、貴方がこの暗部を操作しちゃって自白させれば良いんじゃない?」


「そ、そのような事が?ですが、無理やり操作されて事実と反する事を言わせる事も出来るのでは?」


 慌ててダイマール公爵が予防線を張るが、ヒューレットは残念そうに首を振る。


「パイン、それをするには対象を屈服させる必要があるし、今俺の配下にいる全てを一度開放する必要があるんだよ。人の従属とはそれほど制約が多い。そもそも、暗部は屈服なんてしないだろう?」


「そっか~、良い案だと思ったのになぁ!」


 少し膨れた感じで残念がるパインだが、とても重大な話をしているとは思えないほどの余裕を見せつけている。


 ダイマール公爵は突然危機的状況に陥ったが、何とか窮地を脱出できた事にホッと一息ついたその態度もしっかりとヒューレット一行には把握されている。


「……わかりました。ジニアス君、聞いていた通り訓練されている暗部から情報を抜くのは不可能だ。どうして君がそこまで情報を得る事が出来たのかは聞かない。誰でも力は隠しておきたいからね。でも、明確な証拠がない以上は、これ以上の追求も出来ない事は理解してほしい」


 まるでダイマール公爵が完全に黒であると言わんばかりの物言いにダイマール公爵は口を開こうとするのだが、同じくレベル9のチャネルに睨まれて中途半端に口が開いた状態で固まってしまう。


「ヒューレットさんで宜しいですか?こちらを信じて頂きましてありがとうございます。それに、能力の件も……ご配慮感謝します。そもそも依頼主であるアズロン男爵からも同じような事を言われていますのでこの場で何かが明らかになるとは思っていませんが、二度とこのような事が無いように警告に来たのです」


 そう言いつつ、厳しくダイマール公爵を睨むジニアス。


 何故か視線が合っていないはずのヒムロまで極端に怯えている。


 ヒムロも相当な助力(・・・・・)のおかげで間もなく上限のレベル7にまで達する為、ジニアスの力を感じ取る力が増したせいなのだろうか。


「そうだったんだね。ではそう言う事で双方矛を収めると言う結論で宜しいですね?ダイマール公爵!」


 強めにヒューレットがこの場を〆にかかると、ダイマール公爵は壊れたおもちゃのように首を縦に振る。


 そんな中でもダイマール公爵は、これ以降ヒューレット一行は決して自分達の為に行動する事は無いだろうと比較的冷静に判断していた。


 その雰囲気を感じ取ったヒムロも、このパーティーに戦力増強を頼む事は不可能だと正しく判断していた。


「ダイマール公爵。恐らく、いえ、この暗部は目を覚ませば確実に自死するでしょう。既にエリンによって鑑定した結果レベル7の補助系統持ち。ここまでになるには相当な修練を行った事は間違いありません。有能な人材をむざむざ死亡させるのは忍びない。ですので、彼はここに置いて行きますよ。ジニアス君もそれで良いですか?」


 この暗部は、ダイマール公爵家に属するものだと言い切っているヒューレット。


 自分達の能力が上限のレベル9に達しているからわかるのだが、ここまでのレベルに至るためには尋常ではない修練を行い続ける必要がある。


 ヒムロ達の様に、全てが整えられた環境で膨大な費用を使えば抜け道はあるが、一般的には非常に稀で、そこまで努力をしてきた人材を無駄に散らす事を良しとしなかったのだ。


 自分が情報を得る事の出来ないレベルでシャウランの鑑定が行われた事を伝えられたダイマール公爵は、今後の自分の行動が自分の首を絞める行為に繋がる可能性があるので、何も言わないし動く事もない。


 その間に話は進んでいる。


「はい、構いません。この程度の者が何をしようが問題ありませんから。ですが、もう一度だけ伝えます。次にアズロン男爵家に手を出した場合にはここまで甘い対応はしませんので、今後の対応には十分気を付けた方が良いでしょうね。ヒムロ、お前もだ!」


「それが良いだろうね。そこまで釘を刺さないと何が行われるか分からないし、逆恨みされる可能性が高いからね」


 ジニアスの宣言にヒューレットが同意して彼のパーティーも深く頷いていた為、ダイマール公爵とヒムロは只々黙っているだけだった。


 その後、ヒューレットはダイマール公爵からシラバス王国のジェイド国王から受け取った手紙を強引に返却してもらい、ジニアスと共にダイマール公爵邸を後にする。


「じゃあ、ジニアス君も忙しいだろうから今日はこれで。でも、あの暗部、異常状態は解除しておいてくれよ!」


 暗部シャウランに対しては、ネルによって収納されている間に自死されないように強制睡眠の異常状態にしていたのだ。


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