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(47)ダイマール公爵とヒューレット一行(2)

……ドサッ……


 突然目の前に投げられた暗部。

 それも見覚えのある暗部であったために、一瞬眉を寄せるダイマール公爵。


「こいつがどうかしたのですかな?」


 瞬時に状況を把握して全くの無関係であるかの如く問いかけるが、ジニアスは鬱陶しそうに、まるでそこらの質の悪い子供に話すように対応する。


「貴族って言うのは、自分の行いの責任も取れない臆病者の集まりか?こいつはお前の所の暗部、名前はシャウラン。何だったらもう少し情報を出そうか?こいつはな、お前の(・・・)指示でアズロン男爵の最愛の方に毎日毒を盛り続けていた。理由は……ゲス過ぎて呆れるが、その人を助ける体でお前が手籠めにする予定だったんだろ?これが公爵。呆れるばかりだ。先ずは自分のその不細工な面を見て立場を正確に理解する所から始めたらどうだ?今のお前(・・)はその醜さがあふれ出ているせいか、見苦しい事この上ない!」


「貴様……」


「ふざけるなよ、ジニア……」


 もちろん速攻でダイマール公爵とヒムロは反論しようとするが、既にジニアスの一歩前に出ているブレイドの一睨みで大人しくなってしまう。


「成程、これほどとは思わなかったな」


「そうね。それにあの子、ジニアス君?私じゃ鑑定できないわよ」


「はぁ?お前が鑑定できない?」


「えっ?それって??」


 その横で、ヒューレット一行が勝手に煩くなっている。


 ジニアスとしては、てっきりそこそこ(・・・・)の強さのこの四人がダイマール公爵の味方をして攻撃してくるかと身構えていたのだが、拍子抜けしていた。


「鑑定できないと言ってもレベルが見えないと言う訳じゃなくて、レベルの数値が絶え間なく変わっているの。きっと、本当のレベルを知られないようにしているのでしょうね。この私の鑑定ですらそう見えているという事は、かなりの使い手よ」


「ダイマール公爵、話が違うんじゃないですか?」


 全く系統能力がないと聞いていたのだが、どう見ても明らかに何らかの系統能力を持っており、更にはレベルを真面に鑑定できないほどに術を使いこなしている。


 鑑定術による鑑定を妨害するには、同じく鑑定術を使用する。


 偽の情報を鑑定させるようにするか、今ジニアスが行ったようにランダム表示にさせる事で、正確な情報を与えないようにするのだ。


 当然、熟練の最強冒険者であるレベル9のエリンによる鑑定を誤魔化して見せたジニアスは、準ずる力を持っていると判断された。


 その結果、冒険者四人はダイマール公爵から聞いた事前情報と全く異なる状況に対して文句を言っているのだ。


「そっちの付き人?も鑑定できないわね。これなら、レベル7や二力のレベル6は相手にならないわ。でも確かに従属魔法の痕跡も影響も見えない。どう言う事かしら……」


 次々と明らかになる、いや、詳細は不明だが、ジニアスがかなり強い力を持っている事だけは明らかになっているこの場。


 大陸最強の冒険者達のお墨付きである為に、疑う余地はないのだ。


 なんだか話の腰を折られて当初の勢いが削がれてしまったジニアスは、少し冒険者とダイマール公爵とのやり取りを静観する事にした。


「ダイマール公爵。それとジニアス君……で良いのかな?ジニアス君が連れてきたそこの男、シャウランと呼ばれている男は間違いなく暗部。もしその男の行動がジニアス君の言っている通りなのであれば、俺達は見過ごすわけには行かないですね」


「本当ね、手籠めって……最っ低~!」


 ヒューレットに続き、補助系統の能力を持つパインも嫌悪感を露わにしている。


「いや、待って下さい。安易にこんな平民の戯言を信じるのですか?」


 自分の力を得るために、操作系統の力である従属魔法を使って高レベルの魔物を従属させてもらう事を目的にしていたヒムロは、頼みの綱であるヒューレットにすら疑われている事に焦りを隠せない。


 ヒムロとしてはまさか実父がそこまで行動していた事は知らなかったが、目の前に放り投げられている男は明らかにダイマール公爵家に仕える暗部であり、ジニアスが伝えてきた通り名前もシャウランだとは分かっていた。


 通常暗部は自らの存在自体も含めて完璧に隠蔽する。それは自身の名前も含めてだ。


 その名前すら当てたジニアスが話した情報は、実父の性格からも正しいのであろうと判断せざるを得ない。


 しかしここで認めてしまえば、ヒューレット達からは助力が得られないと思ったヒムロは必死で打開策を考える。


 相手がその辺の有象無象の冒険者であれば一笑に付すダイマール公爵も、他国ではあるが国王とすら懇意にしているヒューレット一行となると話は違う。


 短時間で考えた結果、自らに仕える暗部が口を割る事は絶対にないと自信を持って言える為、白を切り通す以外の選択肢はなかった。


「ヒューレット殿、いくらあなた達パーティーでも聞き捨てなりませんな。そもそもこの平民が言っている事は何の証拠もありません。言い掛かりは止めて頂きましょうか。あなた方程の面々が戯言に振り回されるなど、非常に見苦しいですよ?」


 流石は公爵。まるで何も知らない冤罪だと言わんばかりの態度を完璧に取ってみせる。


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