表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/140

(46)ダイマール公爵とヒューレット一行(1)

 ダイマール公爵の思惑通り、にわかには信じられない話をされたヒューレット一行はジニアスに関する話に激しく食いついてきた。


「またまた御冗談を。系統能力を持たない者が魔物を従える事がそもそも有り得ませんし、その魔物が二力のレベル6を圧倒?どこかで情報に齟齬が発生したのでしょう」


「そうそう、そんな事は有り得ない。恐らくその冒険者共がレベルを偽っているか、余程堕落していたか……はたまた大怪我を隠していたかだ」


 ヒューレットだけではなく、攻撃系統の力を持つチャネルまでもが加わってきたのだ。


「ですが、その冒険者を手配していたのはこの私、ダイマールなのですよ?彼らには十分な実績もありますし、身辺調査も完璧です。それとこのヒムロ、私の息子であるヒムロはレベル7。その息子でさえも歯が立たなかったのです」


「……確かに上限レベル7の力をお持ちのようですね。今はレベル6の様ですが」


 ここまで言われた所で話の信憑性を確保する為か、パーティーの一員である回復系統の力を持つエリンがヒムロを瞬時に鑑定したようだ。


 同じパーティーの言葉を疑う要素がないので、俄然ジニアスに興味が湧いてくるヒューレット一行。


「私達は世界中で活動しております。そんな中で系統能力を持たない者が()を従えている状況を確認した事はありますが、その対象はレベルが低く、比較的人に懐き易い獣です。ある意味ペットですね。魔物ではなく獣です。ですが、レベル7や二力のレベル6を打ち破る程の魔()を従えている能力を持たない者……魔物でそのレベルであれば非常に高い知能があるでしょうから、それをどのように従わせたのか、正直に言うと興味がわきますね。魔()でもないのであれば、猶更どのように従わせたのか……」


「ああ、ヒューレットの言う通りだな。俺も直接見てみたい」


「二人とも……そうなるのは仕方がないでしょうが、本来の用件を忘れないようにしてくださいよ?」


 最後のエリンの一言で、肩をすくめつつリーダーのヒューレットがダイマール公爵に改めて向き合った。


「本来はシノバル皇帝陛下に直接話すべき件ではあるのですが、国家重鎮であるダイマール公爵にお話ししますので、後程陛下にお伝えください。ご存じの通り我らパーティーはシラバス王国から到着した所です。そこの国王陛下とも懇意にしておりまして、是非ともヨルダン帝国との親交を深めたいとの事でした」


 そう言って、書状をダイマールに渡す。


 確かにシラバス王国の国印が押されている為、しっかりとヒューレットから受け取るダイマール公爵。


「わかりました。私からお渡ししておきましょう。それで、具体的な親交の内容は聞いていますか?」


「何でも学園同士の交流との話でしたが、詳しくは書状に書き記したそうです」


 ヒムロやジニアス、スミナ達が通うような学園は他国にも存在している。


 どの学年で卵を得るか等の細かい所は異なっているようだが、対外的には広く門戸を広げているが実際は限られた人物が通い、市井の者とは隔絶した力を得るための施設だ。


 そこに通う者達は若く、次世代を担う人物の交流を活発にする事により、互いの国益になると判断したシラバス王国のジェイド国王の判断だ。


 ヒューレットから聞いた内容だけでも中々良い案だと感心していたダイマール公爵の元に、執事が連絡を入れる。


 アズロン男爵邸の使いの者と名乗る男が訪問してきたと言うのだ。


 その人物の風貌と、従えている大柄の美男子がいるという事からジニアスであると言う事を理解したダイマール公爵。


 正に関連の話をヒューレット達としていたダイマール公爵は、その訪問者を屋敷に迎え入れるように指示を出した。


「丁度今話題になっていたジニアスと言う平民が魔物と共にこちらに来たようです。魔物とはいえ、見た目は人族と大して違いはありません。ですが、油断なきようにお願いしますよ?あいつは化け物ですからな」


 この時の執事は、大柄であるブレイドの背中側に乱雑に扱われている暗部であるシャウランの姿を確認する事が出来なかった。


 まさか暗部と共にやってきたとは思っていないダイマール公爵は、ヒムロとヒューレットの大陸最強パーティー四人と共に、ジニアス達の待つ部屋に向かった。


「待たせたな。お前(・・)がアズロン男爵の使い……で間違いないか?」


「ジニアス、お前程度がこの帝都の別邸とは言え公爵邸に足を踏み入れるとは、随分と偉くなったな。えぇ?平民!」


 ジニアスとブレイドの姿を確認したダイマール公爵は、すっかり格下を扱う時の態度になっている。


 ダイマール公爵とヒムロの横には大陸最強冒険者である四人がいる事も有り、ヒムロの態度も元に戻っている。


 だが、尊大な態度を取られているにもかかわらずジニアスの態度に変化はない。


 堂々として、厳しい視線でダイマール公爵とヒムロを見ているのだ。


 ダイマール公爵のすぐ横にいる四人の冒険者はジニアスの視界に確実に入っているのだが、彼は見向きもしなかった。


「今の俺はアズロン男爵の使いと言う立場だ。ブレイド!」


『はっ』


 ジニアスの指示によって、少し後ろに控えていたブレイドは背後に隠すように持っていた暗部であるシャウランをダイマール公爵とヒムロの前に放り投げる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ