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(45)アズロン男爵邸への訪問(2)

 あまりにもレベルが高い術を行使され、暗部であるシャウランは術を掛けられた事すら分からずに全ての情報を抜かれていた。


 相変わらずブレイドが雑に抱えている男シャウランは、その風貌から暗部である事は一目瞭然。


 そんな人物から情報を抜いたと平気で言ってのけるジニアスに対し、改めてアズロン男爵はジニアスの力の凄さを思い知った。


「それで、この男はダイマール公爵の指示を受けてこのような活動を長期にわたって実施していたようです。大変申し上げにくいですが、目的はフローラさんご本人です。打つ手が無くなったフローラさんを助ける体でダイマール公爵邸に引き取り、実際にポーション等で治療は行いますが、その間に強制的に既成事実を作る事が目的です」


 ジニアスの暴露に、ある程度は理解していたアズロン男爵も苦い顔をしているし、当然フローラやスミナの表情も苦くなっている。


「ジニアス君の力は疑ってはいない。今までダイマール公爵からそのような申し出があった事も事実。だけど、いくら私達がそのような事を言っても白を切り通されれば何のダメージも与えられない。悔しいが、これがこの国の現実だよ」


 ダイマール公爵とアズロン男爵では爵位としての立場が大きく違っているので、アズロン男爵の言っている事は事実だ。


 このまま知り得た情報を暴露したとしても、この男自身は公の場では決して口を割らないだろうし、ダイマール公爵を売る事も無いだろう。


 暗部とはそう言う者達の集まりなのだ。


 その結果、第三者から見るとアズロン男爵がダイマール公爵に対して事実無根の言掛かりをつけているように見えてしまい、逆にアズロン男爵の立場が悪くなる事は想像に難くない。


「でも、結果的にフローラは助かったから良いものの、ここまでされて黙っているわけには行かないな」


「あなた、どうしたの?私なら大丈夫だから!」


 ここで話が終わるかと思ったジニアスだったが、アズロン男爵が発した一言に彼の覚悟を見た。


 もちろんフローラはまさかアズロン男爵がそんな事を言うとは思っていなかったので、何とか抑えようとしているのだが、アズロン男爵の決意は固かった。


「フローラ、そしてスミナ。二人には迷惑をかけてしまうかもしれないが、大切な家族を、妻をここまでされて黙っていては自分自身が許せないんだ。正直に言うと、私はフローラに毒を盛られているなどとは一切気が付かなかったし、ジニアス君が居なければ間違いなく君を失っていただろう。その結果、家庭だけではなく男爵領も纏めて崩壊していた可能性すらある。二度とこのような事が起きないようにする為にも、少なくともダイマール公爵の行いを把握していたと言う警告位はしておきたい」


 このまま単独で乗り込まんばかりの勢いだったため、ジニアスは何とか間に入って被害が最小限になるべく動く事にした。


「アズロン様」


「うん?敬称が間違っているよ、ジニアス君」


 ここでもどうでも良い事を突っ込まれてしまうジニアスは、緊迫した場面ではあるが思わず苦笑いをしてしまいつつも、気を取り直して再び話し始める。


「わかりました、アズロンさん。もし良ければですが、でしゃばるようで申し訳ありませんが、僕にその役を任せて頂けませんか?」


 ジニアスは、乗り掛かった舟と言う事もあるし大好きなスミナ、そして優しい両親であるアズロン男爵とフローラ夫人の力になりたかったのだ。


 自分が対応すれば、最悪悪意の矛先は自分に向くのでスミナ達の安全は確保されるだろうと言う思いもあっての提案だ。


 アズロン男爵はそこまでジニアスに負担をかけるわけにはいかないと申し出を断ったのだが、逆にジニアスの意志の強さに負けて全てを任せる事にした。


 当然ダイマール公爵から何か言われた際には、全ての責は自分が負うと伝える事だけは忘れずに……


「我儘を聞いて頂いてありがとうございます、アズロンさん」


「いや、こちらこそ貴族の無駄な争い……なのか微妙な所だけど、本来は私が向こうに出向いて釘を刺すべき所なのだが。せめてジニアス君が危険になりそうな場合には私の全てをかけてでも守らせてもらうよ」


「その気持ちだけでも嬉しいです。それに、アズロンさんがここまで動こうとした原因を作ったのはコイツを連れてきた僕とも言えますから、対処するのは当然です」


 未だに雑に抱えられている暗部シャウランを軽くはたいたジニアス。


「そうだ、スミナも心配いらないよ?俺にはブレイドがいるから。スミナはこの場の誰よりもブレイドの実力を知っているでしょ?」


 学園内の球技大会や学外授業での活躍を思い出したのか、少し不安そうな表情になっていたスミナの表情が明るくなり、つられて笑顔になるジニアスだ。


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