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(44)アズロン男爵邸への訪問(1)

「どうしようかな……」


 ジニアスは、早朝自室で悩んでいた。


 もちろん学園が休みの今日、再びアズロン男爵邸に出向いて侵入者であるシャウランについての説明をするつもりだったのだが、この男をどのようにアズロンの前に出すかで悩んでいたのだ。


 既に姿を晒しているブレイドは、残念ながら生物を入れられる収納魔法は使えない。


 当然ジニアスは使えるが、自分の力を明らかにしたくない。


 同じ理由でネルの姿も見せたくなかったので、この男をどのようにアズロン男爵に見せるか悩んでいた。


 かなり悩み、結果的にはアズロン男爵邸近くまでネルが魔法に収納した状態で運び、その後は、気絶させた状態でブレイドが抱えて行く事に決定した。


 場合によっては少々目立ってしまうかもしれないが、既にブレイドの事は公になっているので問題ないと割り切っていた。


 ジニアスとブレイド、そして背中に抱えられている謎の男の姿を見たアズロン男爵邸の使用人は、大恩人が再び現れたと認識しているために即アズロン男爵に連絡を取ったようで、ジニアスが門に近づく頃には、既に出迎えの準備が整っている。


「え?あの、こんな朝から申し訳ありません。えっと、少しお話ししたいことがありまして、お時間を頂けないでしょうか?」


「何をかしこまっているのですか?ジニアス君。貴方は私の命の恩人。普通に接してくださいな。ね?あなた?」


「ああ、フローラの言う通りだよ、ジニアス君。それに……な?」


 何故か朝から嬉しそうな顔をしているスミナを横目で見ているアズロン男爵。


 こうして、突然の訪問にも拘らず大歓迎されたまま邸宅に入る。


 アズロン男爵はブレイドの肩に軽々と抱えられている気絶している男もいる事、そしてジニアスのとてつもない力を理解している事からジニアスの伝えたい事はある程度予測できていた。


 そのために、食堂ではなく大広間にジニアス達を招き入れて使用人達は全員下がらせる。


「ジニアス君、ひょっとしてだが……その男がフローラの病気の原因かい?」


 突然核心を突かれたジニアスは驚いてしまう。


「え?はい。その通りです。最早お見通しなのですね。恐れ入りました」


「ハハハ、神妙な顔つきをしながらウチに来ているのに、一人だけ扱いが非常に雑。こんな事があった後だから、想像するのは難しい事じゃないさ」


 何でもないように言うアズロン男爵。


「それで、この男の持っていたコレ、中身は毒ですね。コレをフローラ様の食事に混ぜていたようです」


「ジニアス君?フローラ()ってなーに?」


 突然話に関係のない所に突っ込みを受けたジニアス。それもフローラ本人から。


「えっと、言葉遣い、間違っていましたでしょうか?」


「フフ、そうじゃないわよ、ジニアス君。さっきも言ったでしょう?普通に接してって。それが普通なのかしら?」


 何やら圧が凄いので、諦めて普通に話す……事などできる訳もなく、妥協案として本当に少しだけ崩す事にした。


「では、フローラさん、これで宜しいですか?と言うよりも、これでお願いします!」


「まだまだ堅いけど、あまりイジメてもスミナに怒られちゃうから今日の所はそれでいいわよ」


「お母様!」


 赤くなりつつも嫌な顔はしていないスミナを見つつ、ジニアスは話を続ける事にした。


「えっと、改めまして、この毒を摂取する事によってフローラさんは体調を崩していました。この毒は、はっきり言って長期的に苦しむような毒素を持っており、何故このような物をフローラさんに摂取させたのか……と思い、勝手にコイツから情報を抜かせてもらいました。独断で申し訳ありません」


 通常暗部から情報を得る事は不可能と言って良い。


 拷問に対する耐性もつけているし、情報漏洩を防ぐためならば自死するように訓練されているからだ。


 しかし、Lv10の力を持つネルには関係がなかった。


 収納魔法で保管している間に、直接脳から情報を吸い上げていた。


 これは回復系統の力の一端で、本来は精神的に病んだ際の原因を突き止めたり回復させたりするために使う回復術の力だが、今の所このレベルで力を行使できるものは他には存在しないので、そのような術があると認識できる者すら存在しない。


 そもそも一般的には生物を保管したまま情報を抜き取るなど想像すらできないレベルなのだから、誰も認識できないのは当然だ。


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