(4)ヨルダンと能力の卵(4)“説明回”
何故色によって上限レベルが異なるのかは・・・・・・これも人の醜い心とでも言うのだろうか、色が艶やかな程良い物であると言う先入観があるからだろう。
加えて、色によって与えるレベルが決まっているかのように長きに渡り伝えられれば、その様に期待するのは仕方がない。
その期待に対して素直に卵が呼応している。
レベルが低いと言われている卵に関しては、期待ではなく諦めの感情になるが……
人の期待によって卵は与える力の上限を変えているだけであり、卵と人の絆が太い程に高い能力が得られるのだ。
何故かその真実を知っている俺にしてみれば、この学園だけではなくこの国家、いや世界中の人々の行動は滑稽極まりない。
卵への期待、信頼によって得られる能力のレベルが変動すると言うのが能力の卵の真実ではあるのだが、その一切を無視して必死で行動しているのだから。
そう言った意味では、あのヒムロが言っている強い思いが卵に呼応する事はあながち間違いではないのかもしれないが、思いによって系統能力が選べると言う事は、残念ながら俺の知識の中にも存在していない。
「で、平民!お前はまだこの学園に居続けるのか?」
「本当ですね。このままだと学園はお前如きに貴重な時間を使って緑の卵を準備しなくてはいけなくなります。本来は、お前自身が身を引く発言をして即行動するべきだと思うんですが、如何ですかね?」
特に絡んでくる公爵家嫡男のヒムロとレグザ。
学園の中で三人しか存在しない公爵家嫡男三人の最後の一人も、残念ながら同じクラスに在籍している。
こいつも普段は絡んでくるのだが、今日の授業で卵の知識を新たに手に入れたからか、ノートに目を落として大人しくなっている。
だが、ヒムロとレグザはそうではない。
なんだか俺に絡むのが日常業務になっているのではないかと思う程だ。
クソ野郎に毎日絡まれても嬉しくもなんともないが、まぁ、この学園を卒業するまでの我慢だな。
今の雰囲気を変える為なのか、ロンドル先生がいつも以上に大声を出した。
「では、早速テストをします!」
時折何の前触れもなく行われるテスト。
これは、卒業年度に生徒に配布される上位の卵を得る為の権利を勝ち取るテストだ。
卒業年度に配られる卵のほぼすべてがレベル5を与えてくれる緑色で、それ以上の卵が入手できた際に、成績上位者から渡されるのだ。
逆に言うと、年度が始まってから即卵が渡される者は成績が悪かったという事になる。
ただし発見のタイミングによっては、必ずしも成績上位者が最高の卵を得られるとは限らない。
例えば系統能力レベル7を与えてくれる(と言われている)青の卵が見つかったとしよう。
もちろん通常のレベル5の緑の卵よりも非常に貴重なものである為、これは即成績上位者に振り分けられる。
その成績上位者は、即卵の孵化工程に入るだろう。
その一週間後にそれ以上の卵が見つかった場合、もう既に卵の能力を追加で得る事はできないので、次点の者がその卵を得る事になるからだ。
もちろん孵化工程開始直後に見つかったとしても、学園としては一人に一つの卵を与えると公言しているため、次点の者に回される。
このように、稀に見つかる貴重な卵を得る可能性を少しでも高めるために、テスト時の生徒の目は普段とは異なっている。
一部を除いては・・・・・・
このテスト、授業をきちんと聞いていれば特に問題なく埋められる問題ばかりなのだが、普段卵関連の授業以外を真面目に聞いていない連中にとっては、この授業のテストが唯一点数の取れる科目になる。
しかし、悲しい事に何事にも“例外”は存在する……
暗雲たる思いでテストを受け終わると、再び日常が始まる。
「おい、今日も俺は忙しいから掃除をしておけよ。行こうぜレグザ!」
「そうしましょう。じゃあよろしく頼みますよ」
こうしていつもの二人がさっさと教室を出て行き、残る公爵の嫡男一人もその二人が出て行くのに気が付いたのか、慌ててノートを仕舞って教室を出て行った。
彼等にとってみれば“お願い”らしいこの行為、流石に毎日飽きもせず行われているので、ロンドル先生も目撃している。
だが、改善はされずに翌日何故かヒムロ達の掃除が綺麗だと褒められる。
まったく、入学当初の俺の期待と希望を返せってんだ。
入学時点では、他の生徒と俺では立場が大きく異なるので多少は覚悟していたが、今の状態は多少じゃないからな。
でもまぁ、いいや……別に俺には何のダメージもないからな。
しかし、あの三人はどう考えても俺に対して良い思いを抱いていないので、今後この学園の生活がバラ色になる訳がないは確実だな。はぁー面倒くさい!あいつ等の愚行が原因なのに、なんで俺が神経をとがらせてあの三人を守らなくてはいけないのか……




