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(37)ポーション(3)

 食事も進み和やかに話が出来るようになっていたジニアスは、漸く手土産を渡していない事に思い至った。


 招待して頂いたにもかかわらず、碌な挨拶も出来ないまま食事を頬張ってしまった事実に気が付いたのだ。


 突然大人しくなり再び若干挙動不審になったジニアスを見て、アズロン男爵とスミナは何があったのか怪訝そうな顔をする。


 ひょっとして、直前に口にした料理が合わなかったのだろうか?何か異物でも入っていたのだろうか?と心配になっていた。


「あの、ジニアス君?どうしたの?お料理に何かあったのかな?」


 心配そうな表情で問いかけるスミナ。


 その表情を見て、どんな顔でも可愛いなーと言う頓珍漢な事を思って現実逃避をしているジニアス。


「ジニアス君、もし料理に不手際があったのなら謝罪しよう」


 まさかのアズロン男爵からの謝罪宣言に、一気に現実に引き戻される。


「とととと、とんでもございませんでありますです。はい。その、全てが食べた事もなくて、信じられないほどの美味しさです」


「フフフ、そう言ってもらえるとありがたい。ジニアス君、君はまた緊張してしまったのかい?」


 こちらも、流石はスミナの父だと思させるほどの優しい表情でジニアスに問いかける。


 その心遣いを感じ取り自分に活を入れるジニアスは、深く息を吸い、正直に話した。


「あの、大変申し訳ありません。ご招待頂いたにもかかわらず、ご厚意に甘えて何もせずにお食事を頂いてしまって、自分の行いに恥じていた所です。えっと、実はですね、少々つまらない物ですがお土産を用意させて頂いておりまして……是非とも受け取って頂ければ嬉しいのですが」


 必死に言葉を繋ぐジニアスの姿をみて、思った以上に誠実な男であると認識したアズロン男爵。


 スミナも、ジニアスの不思議な行動がアズロン男爵家の不手際ではないと理解して、安心した表情をしている。


「既に皆様ご存じだと思いますが、オ……私には強大な力を持つ者が付き従ってくれています。先ずは今ご紹介させて頂いても良いでしょうか?」


「ん?あぁ、スミナから聞かせて貰っているよ。未熟ではあるがLv7の者達や、熟練の二力であるLv6の冒険者を圧倒して見せた人だろう?是非とも紹介してもらいたい」


 スミナから直接色々と、本当に色々とジニアスの事を聞いているアズロン男爵は、この程度は知っているので驚くことなくジニアスの提案を受け入れる。


 ジニアスの命により、右手の痣からその姿を現したブレイド。


 流石にこの場でジニアスには跪く事が無いようにときつく釘を刺されている為にジニアスに軽く一礼した後に、アズロン男爵に向かい、再び深く頭を下げる。


「彼の名前はブレイドです。事情は明かせませんが、オ……私の大切な、そして信頼できる仲間です」


「なるほど。私はLv5で大した力を持っていないが、ブレイド殿からはかなり強者の気配を感じるね。私程度で感じる事が出来るのだから、相当なのだろう」


「お父様、ジニアス君に力を貸してくれているブレイドさんは本当にすごいのですよ!ついこの間も……」


「フフフ、スミナ。今はジニアス君が話しをしているから、その話はまた後でね」


 ジニアスに関する事を話す時には周囲が見えなくなってしまうスミナに対し、軽く抑えるアズロン男爵。


 一方で、指摘されたスミナは真っ赤な顔をしている。


「えっと、ありがとうございます?それで、つまらない物ですけれど……ブレイド、出してくれ!」


 ジニアスの指示によって、ブレイドは独自で創造した収納魔法を行使してネルから渡されていたポーションを取り出す。


 そのポーションを恭しくジニアスに渡して、一歩下がった。


 席から立ち上がり、ポーションを持ったままアズロン男爵に近づくジニアス。


 対してアズロン男爵は、ジニアスが手にしているポーションに釘付けになっていた。


 あからさまに最高級品質、いや、それ以上の存在であると主張している神々しさを感じさせるポーション。


 妻のフローラの事を抜きにして、その美しさ、神々しさに魅入られていたのだ。


 それは、その二人を見ていたスミナも同じ。


 ジニアスは、突然何も話さなくなってしまったアズロン男爵達を見て、やはり手土産としては少々宜しくなかったのかもしれないと後悔しつつも今更後には引けず、何とかアズロン男爵の元に辿り着いた。


「えっと、アズロン様。もしよろしければ、本当につまらない物ですが……このポーションをお納めいただけますでしょうか?欠損や万が一の死亡時にも、即使用すれば復活できる効果があります」


「お、おいおい、ジニアス君。本当にそんな御伽噺のような効果……いや、この雰囲気から本当なのだろうな。どうやってこれ程の品を?」


 思わず口にしてしまったのは当然の疑問だ。


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