(32)ジニアス、ブレイド、ネル(2)
……さて、一応能力の確認をするか。
間違いなく五力になっているだろうが、肝心なのは潜在能力のレベル、上限レベルだ。
通常は鑑定を行ってもらい確定するのだろうが、自分でも意識を強く向ければその程度は分かる。
分からなければ、自分が今後どのように鍛えるかを考える時にいちいち他人に鑑定してもらわなくてはならないからな。
よしっ、早速行ってみよう!
ジニアス
上限レベル:Lv10(MAX)
系統能力:攻撃、防御、補助、操作、回復
……やはりな。思った通りと言えば思った通りだ。
と当時に、俺が気絶した事も頷ける。
これだけの力を得たのだから対応する身体強化能力もかなり高い事は間違いないので、急激な力の上昇に今の俺の体が耐えられずに気を失ったのだろう。
目の前の二体、ブレイドとネルは既に俺の力は理解しているようだ。
特にネルは回復系統の能力である鑑定が出来るから、ブレイドよりも詳細に俺の力を理解しているだろう。
二体ともに俺を見た後、互いの目を見ている。
『ブレイド、流石はジニアス様ね。五系統全てでLv10よ』
『当然と言えば当然だろう?ジニアス様だからな』
「……おいおい、ブレイドとネルの言っている言葉がわかるんだけど!」
普通、系統能力を手に入れて上限レベルが分かれば、その上限レベルに成るべく必死で修行をしなくてはいけないはずだ。
つまり、俺が二人の会話を理解できるようになるためには、少なくとも操作系統の能力を使えるようになるための修行を行う必要があるのだ。
その工程をすっ飛ばして、気絶して意識が戻った後に使えるようになっているので驚いてしまうのは仕方がない。
そんな俺をよそに、二体は何を言っているんだと言わんばかりの顔で俺を見ている。
『ジニアス様、Lv10になれば何の修行もいりません。それが別格、Lv10の力の一つでもあるのですよ』
『やはり、記憶の方は完全には戻られないのですね。ですが、ご安心ください。私とブレイドは、何時、いかなる時でもジニアス様と共に在ります。私達の全ては、貴方様のためにあるのですから』
ブレイドの言っているLv10の力の事は理解した。
そう言う物なのだろう。
だが、ネルの言っている事は良く分からない。
記憶が戻らない?
「ネル、その記憶って、まさか俺、別人格があるのか?」
『いいえ、そうではありません。ジニアス様はジニアス様です。ですが、輪廻転生、全ての魂は再びこの世界のどこかで何らかの形で蘇ります。今のジニアス様の魂の前の存在に我ら二人はお仕えしていたのですよ』
『ネルの言う通りです。ジニアス様の一つ前の存在であったお方は、私達の希望である永遠にあなた様の魂を持つ者と共に在りたいと言う希望を叶えるべく、術を開発してくださいました。そのおかげで、我らは常にあなた様と共にいられるのです』
ハイッ、全く理解ができません!そもそも術を開発ってなんだ?
系統能力別に存在している術、現時点で俺が知っている力は……
攻撃系統:剣術、槍術、体術、攻撃魔法……
防御系統:防御魔法、盾術、探索術……
補助系統:隠密術、補助術、探索術……
操作系統:従属魔法、召喚術、収納術……
回復系統:回復術、鑑定術、結界術……
その中身はあまり詳しくないけれどこんな所だったはずで、現実的にはもっとあるのだろうが、今の俺の知識ではこれが限界。
そこに新たな術を開発する?
「あのさ、勝手に術を創れるってこと?」
『その通りです。Lv10の力の一つになりますが、持っている系統に関係なく術を創る事が可能です。実際に私やブレイドもそれぞれの術をいくつか開発しています。ですが、自身が持っていない系統能力に関連する術については、レベルは大きく下がってしまうのが現状です。ジニアス様は全系統をお持ちですから、何の問題もありません』
あっ、そっすか。
もうこうなったら、そう言うものだと理解するしかないだろう。
だけど、卵について色々知っている原因とこの二体が俺に付き従ってくれている理由は理解できた。
「二人共、俺は前の自分を良く知らないけど、こんな俺について来てくれてありがとう。感謝しかないよ。これからも宜しくな!」
『もったいないお言葉です』
『こちらこそ、ありがとうございます、ジニアス様!』




