(30)スミナとアズロン男爵(2)
変に勘違いしているジニアス君……おどおどしているのを見るのも可愛いけれど、あまりイジメすぎてはいけませんね。
「違います!もちろん話し方は今まで通りの方が私も凄く嬉しいです。ただ単に、お父様がジニアス君に会ってみたいだけです。えっと、ブレイドさんの事は既に知っているので、その事に興味を持ったのかもしれませんね」
ブレイドさんの話をした所、漸くジニアス君は納得してくれたみたいでワタワタする事が無くなりました。
少しだけ残念。
でもあまり困らせても可哀そうですよね?
「そ、そうですか。いや、そうか~。そうだよね。ブレイドの話を聞けば、会ってみたくもなるよね。わかった。勇気を出してお邪魔するよ。俺如きがお断りするなんてできないし、喜んでお伺いさせてもらおうかな」
緊張した顔のまま了承の意を伝えてくれるジニアス君。
「ありがとう。本当に嬉しい!勇気が必要な程の家じゃないので、気楽に来て欲しいな。じゃあ何時にしようか?」
ここで一気に畳み込まないと何時尻込みされてしまうかもわからないので、多少強引に行く事にしましょう。
「そうだな。ちょっと色々あるので、一週間後位になりそうかな?」
色々……ジニアス君は、表情を一切変えずにこう言っているけれど、私にはその内容がわかります。
そう、あの卵の孵化工程が始まってから相当時間が経っているので、そろそろ孵化するのでしょう。
恐らく、孵化が終わって落ち着いてから来たいと言っているのです。
私にその辺りを心配させないように、正確な事を言わずに調整してくれているのが分かります。
やっぱりジニアス君は素敵ですが、そうなると時間が少々読めませんね。
「えっと、ジニアス君?都合が良くなった時に教えて貰った方が良いかもしれないね。こっちの事は気にせずに連絡してほしいな」
少しだけジニアス君の表情が曇りました。
私が斑の卵の孵化の件に気が付いたと思っているのかもしれませんが、あえてここではその話はしません。
せっかくジニアス君が気を遣って避けて下さった話題なのですから、私から話す事は有り得ません。
「わかったよ。じゃあ、お言葉に甘えて都合が良くなったらこっちから言わせてもらう事にするよ。確定は出来ないけど、その時はよろしくね。そう長くはないと思うから」
「うん、楽しみにしているね!」
ふ~、何とか上手く行きました。
日程は決まらなかったけど、これで確実にジニアス君は我が家に来てくれますし、その日は一緒に帰れますね。
フフフ、楽しみすぎて今日は眠れないかもしれません。
そんな私の気も知らないで、ジニアス君は緊張した表情でお土産どうしようとか、どうでも良い事に意識が向いているようで、ブツブツ独り言のように呟いています。
もうっ!でも、可愛いからこのままにしておきましょうか。
早くその日が来ないかな!




