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(3)ヨルダンと能力の卵(3)“説明回”

 この世界では、高い上限レベルの系統能力を与えてくれる卵が簡単に手に入る訳もない。


 そんな中で上限レベル5以上が確定する卵を貰えるこの学園に在籍しているのだから、教師から言質を取りたくなるのも良く分かる。


「はい、その通りですね。皆さんは卒業年度の一年間に、発見し次第順次緑以上の卵を渡されます。楽しみにしていてくださいね」


「はんっ、平民如きに緑は贅沢だと思うんだがな!」


 先生が確約した事によって安心したのか、相変わらずこちらを侮蔑する行動を取るヒムロ。


 当然その言葉の攻撃先はこの俺ジニアスだが、今日は大人しい方だ。

 きっと卵に関する授業だから、機嫌が良いのだろう。


 ここで無駄に反応すると面倒くさい事になるので、黙って下を向く……と言うよりも痣に意識が向くので、下を向かざるを得ない。


 担任も慣れたもので、何もなかったかのように授業を続ける。


 俺としては、無駄に絡む行動を諫めて欲しい所ではあるのだが……


「では授業を続けます。得られる系統の力ですが、現在の五系統を全て高レベルで手に入れる事は厳しいでしょう。学園としても、一人一つの卵を提供する事しかできません……」


 こうして授業は続いていく。


「じゃあ先生、五個の卵を一気に孵せば操作系統の能力を手に入れる事ができるのではないですか?」


 あの女生徒とは違う、冒険者の息子だったか?おそらく親から卵の情報をある程度聞いていそうな男が先生に質問を投げる。


 現実的には、この国の皇帝ですら同時に二系統までの能力しか得られていない。


 低い上限レベルであれば複数の系統を得る事は比較的容易いが、明らかに力は弱いので、全員がこぞって単一系統の高レベルの卵を欲している。


「それはその通りですね。ですが、五個同時に卵を手に入れる必要があります。そうなると、おそらく斑。良くて黒。つまり、上限レベルは1か2になってしまいますよ?」


「おいおい、あの平民に相応しいレベルが出てきたじゃないか」


 本当に煩い奴だな。同じような事を何度も何度も・・・・・・授業に集中できない。


 だけど、流石は学園の先生だけあって淀みなく流れるように回答できている。


 確かに先生の言う通りで、卵から能力を得るためには卵を孵化させるために自らの血液を卵に付着させる必要があるのだが、能力を得てしまってからこの行動を行っても、追加で能力を得る事はできない。


 後追いで五系統全てを高レベル(・・・・)で手に入れる事はできないのだ。


 上限レベルが高い複数の系統能力を得るには、高位の卵を複数準備して同時に孵化の工程を行わなくてはならないが、いくら皇族と言え、価値の高い卵はそうそう入手する事はできない為に皇帝でも二系統が精一杯だと言うのが現実だ。


 更に、残念ながらダンジョンから出された卵には期限があり、ダンジョンでの魔力を糧に成長しているからだろうが、卵は設置されている位置から動かされて一週間もすると勝手に割れてしまい、何の系統能力も得る事が出来なくなるのだ。


 高い上限レベルの能力を複数得るためには、先生の言う通りに高レベルの卵を一週間以内に複数発見するか、二個目の卵を発見するまで一つ目の卵をダンジョン内で保管し続けるしか方法がないのだが、高レベルの卵は希望者が多く、皇帝と言う立場であっても長期間個人の権威で保管し続ける事は不可能だ。


 学園では、卒業年度に一年間かけてダンジョンから得た緑色以上の卵を発見し次第順次学生に渡している。


 卒業時に卵を全員同時に渡せないのは卵の期限と言う制約があり、指定期間内に緑以上の卵を該当数全て揃える事ができないからだが、俺は一般的なこれらの知識の他に、授業でも教わっていない内容だけではなく世界中の人族が知らない驚愕の事実を何故か知っている。


 どうして知っているのかは分からないとしか言いようがないが、何故かこの知識は本当の事であると確信できるのだ。


 その内容は、卵の外観に応じた上限レベルを得られると言う考えが大間違いであると言う事。


 こんな事を先生に言おうものなら、平民の俺は即刻退学になりそうだから何も言っていない。


 俺の知識によれば、そもそも虹色と言われている卵は該当する各色が着く場所に偶然移動した物が中途半端に複数色着色されたに過ぎず、元ある場所から移動してしまったために、割れてしまった所を発見された……はずだ。


 この知識があるからか、実は俺、こんな学園を卒業するかどうかなんて心底どうでも良いんだが、母ちゃんが悲しむ姿を見たくない……ただそれだけの為に、ヒムロのような鬱陶しい奴がいるこの学園に毎日真面目に通っている。


 改めて俺は平民のジニアス。


 物心ついた頃には父と言う存在はなかったが、その負い目だか何だか知らないが何時の間に母ちゃんは俺の将来の為にと、必死で学費を貯めてこの学園に入学させてくれたんだ。


 俺としては、学園から支給される上限が高レベルの系統能力を与えてくれる緑色以上の卵には、はっきり言って一切興味がない。


 外観()に応じて上限能力が決まるなんて言うのは、見かけに騙されやすい人の醜い心が如実に出ている結果であり、実際には卵の外観は設置されているダンジョンの場所に出ている魔力の影響を大きく受けているだけであり、その中身はどの色の卵であろうが何も違いはない。


 これが、俺が何故か知り得ている卵の真実だ。


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