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(21)学外授業(5)

 ヨルダン帝国の国内で公になっている高レベルの複数系統持ちは、皇帝であるシノバルの二力でLv8だ。


 そんな中でほぼそれに準ずる力を持っていると言い切るのだから、周囲が騒然とするのも仕方がない。


 あのゴミ三匹はLv7だが一系統。


 この冒険者よりはレベルは高いが系統の相性や熟練度も影響するので、恐らく冒険者単体でもあいつらには勝つ事が出来るのではないだろうか。


 そんな冒険者に守られる事になったあの三人の表情は明るくなっている。

 本当にわかりやすい奴等だ。


 おまけに周囲の連中まで何故か俺を睨んでくる始末なので、確実に立場が入れ替わったとでも思っているんだろうな。


 今回の騒動の原因、血液を斑の卵にかけると言う暴挙が否定される事は無く、単純に平民の俺が公爵家に歯向かっているのが気に入らないのだろう。


「良い大人が、人の人生を大きく変える様な悪事に積極的に加担する……と。なんだか冒険者の矜持のような事を偉そうに言っているが、単純に金に目が眩んだと言えば良いだろう?」


 図星なのか、三人の取り繕ったような笑顔が消える。

 こいつらの本性はこっちだろうな。


 真面な冒険者、いや、真面な人ならこんな悪事に加担する事はしないはずだ。


「お前、その言葉に責任を持てるんだろうな?」


「お前の為を思って優しくしてやっているのが理解できないらしい」


「流石にここまで言われてしまうと、見過ごすわけには行かないな」

 すっかり素が出ている冒険者の姿勢を見て明らかに俺に全力で攻撃すると判断したのか、ヒムロ達が追撃してくる。


「そ、そうだぞ、お前ら。高い金を払っているんだから、しっかりその分の仕事をしてもらおうか」


「この際、再起不能にして頂けませんかね?」


「殺しても俺達の力で無罪にしてやる。全力で行け」


 あの三人、相変わらずで嬉しいぜ。


 他の冒険者達は少々距離を取ってこちらを見ているので、取りあえず対処しなくてはならないのは目の前の三人だな。


 あいつらも今回の行動については把握していたはずだが、入り口にいた冒険者なんかは俺を見て悲しそうな、それでいて後悔しているような表情をしていたので、力関係で無理やり加担させられていたのだろう。


 そんな奴まで攻撃するつもりはないので、安心して貰おうか。


「は~、図星を突かれて偉そうに切れるなんざ、やっぱり小物の冒険者なんだな。とりあえずお前ら三人(・・)の相手はしてやるが、はっきり言って俺はこいつらもお前らも一切信用していない」


 クラスの連中と教師、そして目の前の三人の冒険者を睨みながらそう告げる。


「能力を持たない俺一人にボコボコにされた三人のエラそうな冒険者。ある事ない事言いふらされるかもしれないし、保身のためにあの三バカの力を使って冤罪をかぶせて来る事も有るだろう?」


 煽るように、顎でヒムロ達を示す。


「何が言いたい?」


 かなり切れている冒険者の言葉は少なくなっている。

 よしよし、冷静な判断が出来なくなっているので、今回も書状は問題なさそうだな。


「いや、これですよ、コレ」


 懐の中の卵がない位置に忍ばせている書状を出す。


 そう、ヒムロ達にも使ったある種の契約だ。


 俺は前回の騒動の時に、次が必ずあると踏んでこの書状を持ち歩いていた。


 その内容はざっくり言うと、負けても決して文句は言いません、相手に不利な嘘の噂や逆恨みによる行動をしません、賠償も請求しません。死亡しても文句は言いませんと言う物だ。


「この野郎……」


 俺が冒険者の前でヒラヒラ書面を見せてやると、ブチ切れながらも最終項目を確認した冒険者はサインをした。


 そう、死んでも文句を言わないという項目もきっちりと読んだうえでサインしたのだ。


 本当にバカだね、こいつら。


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