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(19)学外授業(3)

 どう見ても相当気に病んでいるスミナを励ますべく、俺が現時点でもあの三人よりも強いと言う事実を思い出してもらおう。


「スミナさん・・・・・・あの、僕はまったく気にしていないのですよ?慰めるために言っているのではなく、本心です。スミナさんは見たでしょう?青の卵を持つあの三バ……三人を圧倒する力を。つまり、今の僕でも青色以上の力があるのですよ」


「でも、その後の鑑定で、系統能力の力は無いって判断されたじゃないですか!」


 ダメだ。取り付く島もない。


 偉そうに言える事ではないが、そもそも俺にはこんな修羅場を潜り抜ける能力なんてないのだ。


 本当に少しだけ、ヒントになる事が含まれてしまうけど、本心を話すしかないだろうな。


スミナ(・・・)、良く聞いてくれ!」


 いつもと全く違う話し方……俺にとってはいつもの通りの話し方をしたために、スミナは漸く俺の目を見てくれた。


()は心底卵の外観はどうでも良いと思っている。これは、この学園に入る前から思っていた事だ。正直に言うと、おそらく俺に回ってくる卵は最低保証の緑色で間違いないと思っていたので、その卵を売っぱらって生活費にしようと思っていたんだ」


 まだ疑いの感情が見て取れるが、こればかりは仕方がないな。


「俺がこの学園に通っている目的は、俺の母ちゃんの想いを踏みにじりたくなかったためだ。必死で働いて俺をこの学園に通わせてくれているからな。だから、心底卵の色はどうでも良く卒業できれば良いと思っている。今回の件も、むしろ、速く系統能力を得る事が出来て嬉しい位だ」


「でも、最低レベルの1が確定する斑・・・・・・」


「だから言っているだろう?俺()色は関係ない。そもそも、今の時点で青色以上の力を見せつけただろう?」


 こう言っておけば、今後あり得ないレベルの系統能力を使っても俺自身が持つ体質のせいだとか訳の分からない言い訳が出来る余地を残しておきつつ、不敬とは思ったがスミナの頭を軽く叩いてみた。


 内心はドキドキしているし何か良い匂いがしているので、このままずっとここにいても良いかな・・・・・・と思っている程だったりする。


「ありがとう、ジニアス君」


 そう言いながら、スミナは俺の胸の中に顔をうずめてきた。


 何かスミナは誤解しているようだ。


 俺がスミナの為に強がっていると思われているのかもしれないが、俺にはこれ以上どうしようもないので今の状況を堪能させてもらうとしよう。


 うん?だとすると、今の状況を生み出した三バカの行動は……意外とヒムロ達は良い仕事をしたのかもしれない。


 考えが飛び飛びになるが、俺が今後考えなくてはいけない事は・・・・・・あの卵を孵化させて常識ではありえないレベルを手に入れた時の言い訳だな。


 俺が斑の卵を手にした事は、光の速さで間違いなくあいつ等がクラス中に広めているだろうし、あいつ等には俺独自の体質と言っても絶対に疑って来るだろう。


 俺の力がLv1ではないと知られた場合、卵の真実が公になる可能性があるのだ。


 まっ、ひたすらバレないように力を隠すか……いや、隠す必要すらないか?


 そもそも、今の時点であいつ等を圧倒する力がある事は公になっているんだ。


 当時はこの力の開示を相当悩んだが、今となっては助かったな。


 卵の力に関しては鑑定されない限り明らかにはならないから今後は拒否すれば良いだけだし、場合によっては元から持っていた力と言い切れば問題ないだろう。


 ある程度俺の胸の中でスミナが落ち着くのを待つと、俺は血液が付着して孵化の工程に入っている斑の卵を五個、適当に選択して持ち帰る事にした。


 五個以上の卵を持ち帰っても、何も変化がない事を知っているからだ。


「じゃあ行きましょうか、スミナさん」


「・・・・・・行きましょうか、じゃヤダ。それに、“さん”はいらない」


 未だに少々涙目のスミナが、その悲しそうな表情で俺を見る。


 くっそ~、本当に可愛すぎるだろう。これはアレか?犯罪か?事案か?


 未だに俺に対して負い目を感じているかもしれないので、彼女の希望はなるべく叶えるようにしよう。


「わかったよ、スミナ」


「うん。ジニアス君、ありがとう!」


 俺の右腕にギュッと抱き着いてきたスミナ。

 おいおい、何がとは言わないが当たっているぞ!


 伝えてしまうと離れてしまう可能性が捨てきれない事から、俺は敢えて黙って入口に戻る事にした。


 決して下心がある訳ではなく、スミナの意思を尊重したが故の紳士的な行動だぞ!


 こうして俺の懐には孵化の工程に入っている斑の卵五個と、腕にしがみつくスミナと言う状況で入口に到着した。


 入口で待機していた冒険者は俺を見ると少し悲しそうな、それでいて後悔の念があるような表情をしていたのだが、今の俺はまさに天国にいるので何も気にならない。


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