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(16)スミナとジニアス

 本当かどうかはわからないが、スミナの家については今の所は問題ないと言ってくれている。


 これも、あの時に三バカと取り交わした書状の効果だと思いたい。


 だが彼女が誰かと話そうとすると、さっと波が引くように人が引いていく所を見た時には流石の俺も心が痛んだ。


 スミナもそのような皆の姿を見て、やはり悲しそうな表情をしていたからだ。


 そんな事もあり、俺とスミナは毎日のように共に行動するようになっていた。


 こんな時に不純で申し訳ないが、本当にスミナは素晴らしい女性だ。


 共にいるだけで心がとても温かくなるし、幸せな気分にしてくれる。


 これ程素晴らしい女性と常に共に行動ができている事は、嬉しくもあり、申し訳なくもある。


 自惚れになるかもしれないが、俺と共にいる事でスミナの心が少しでも軽くなっている事に期待したい。


「ジニアス君、学外授業。一緒に行くでしょ?」


 相変わらず俺の心を破壊する威力の笑顔で話しかけてくるスミナ。

 そう、学外授業があるのだ。


 これは常に学園が契約している高ランクの冒険者と共に卵を採取しているダンジョンに潜って、卵についての理解を深める事を目的にしていると言う事だ。


 しかし、腐ってもダンジョンに侵入するために、事前に健康診断が行われるらしい。


 鑑定では判定し辛い体の状況を把握するため、血液検査まであるほどの入念さなので、そこまで危険なのか?と少々気後れしてしまわない事もない。


 だが怖気づいている所を気取られる訳には行かないので、平静を装いつつスミナに回答する。


「もちろんですよ。所で、スミナさんは何色になるんでしょうかね?まぁ、レベル7の青はあまりにも貴重ですから、レベル6の赤ですかね?それとも、奇跡が起きてレベル8の白なんて出てくるかもしれませんよ?」


「フフフ、どうなるかしらね。ジニアス君も何色になるんだろ?こればかりは運だから、良い色が出る事を期待しましょうね。でも、レベル8の白なんて皇族の本当に一部の方々と同じ色・・・・・・ちょっと欲張りすぎじゃない?」


 ここまで仲良くなったと思っているスミナに対しても、俺は卵の真実を伝えるような事はしない。


 国家レベルで、いや、世界レベルで常識が覆る内容なので、何があっても、誰に対しても、永遠にこの秘密は明らかにしないと決めている。


「ただいま」


「おかえりなさい。今日はどうだった?」


「今日も楽しかったよ。フフ、母ちゃん、そう毎日同じ事を聞くなよ。もう子供じゃないんだから」


 なんだかんだ、母ちゃんは俺の事を心配してくれているのはわかっているので、少し安心させてやろう


「そうそう、スミナさんと言う人と仲良くなったよ、母ちゃん。男爵令嬢なのに俺なんかにも気さくに話しかけてくれてさ、凄く可愛い人だ。って、何ニヤニヤしてんだよ!何もないからな!」


「いや~、ジニアスもそんな事を言う年になったのかな~って思っただけよ」


 スミナとは種類の異なる暖かさをくれる母ちゃんと食卓を囲う。

 これが家に帰ってからの俺の日常だ。


 今の所はその兆候はないのだが、あいつらが俺と二人だけの家族の母ちゃんに何かしたら、次は全力で何があっても完膚なきまで叩き潰す事だけは決定している。


「おはよう、ジニアス君!楽しみだね」


「おはようございますスミナさん。今日は楽しみましょうね」


 学外授業当日、流れるように二人で行動するスミナと俺。


 他の連中はあの三人に配慮するように、遠巻きに俺達を見ている。


 あの一件以来、担任であるロンドル(・・・・)を含めて俺に強制的に何かを頼む事は無くなっていた。


 と言うより、俺が要求を突っぱねたのが始まりだ。


 少々凄んでやったら、スゴスゴ引き下がったのは気持ちが良かったな。


 あれだけ力の差を見せつけたのに、未だに理不尽な頼みができる所が相変わらずではある。


 ある意味底抜けのバカとも言えるが、あいつ等ならその程度だろうと納得できてしまうのも悲しいな。


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