(15)球技大会(5)
三度同じ工程……ヒムロが吹き飛ばされると言う工程が行われ、三人仲良く遥か彼方で下を向いて座り込んで痙攣している。
意識はなさそうではあるが。
だが、ネルによれば三人とも死んではいないようなので問題ないだろう。
正式な書状もあるし、俺は安全だ。
「凄いよ、ジニアス君。これで球技大会はジニアス君チームの勝利!」
あくまで球技大会であり、チームの勝利だと大声で告げるスミナのその勢いに乗ってきたのは、日和見ぎみの担任だった。
「そうですね、ジニアス君のチームの勝利です。おめでとうございます。これで球当ては終了になります!」
その後仲良く並んで無様を晒している三人は、スミナの家から強制的に買い占めたポーションを全て使って、ようやく動けるようになっていた。
その後は即各自の家に帰り、更に高級なポーションを惜しげもなく使用して復活したようだ。
だが、後日三人からクレームが入ったのか、何故か俺だけ再び鑑定が行われたのは言うまでもないだろう。
当然と言えば当然だが、俺自身には何の能力もない事が再び証明されただけだった。
聞くところによると、勝手に卵の力を得ている事が証明できた場合には強制退学が待っていたらしい。
アハハハハ、残念でした!
こうして再び日常がやってくるが、俺の扱いは一気に変わった。
力技では敵わないと身をもって思い知った三人は、地位、権力を使った精神的な攻撃に切り替えてきたのだ。
おまけに、互いに学内で力を使えば退学と釘を刺されているので、物理的な反撃がないと理解している三人のやり口は陰湿だ。
何故一方的ではなく互いに力を使う事を禁止されたかと言うと、あの三バカは俺には力では敵わないと、珍しく正しい判断をしたようだ。
結果、互いに力を使う争いに発展すると、三バカは負けると判断しているのだ。
その対策として、あたかも両成敗のような形を取りつつも自分達が有利な方法、そう、立場・権力のみを使って良いと言う状況に持ち込んだのだ。
その様な状態になっているので、当然クラス中からはスミナを除いて完全に無視をされている。
そもそも俺から何かを話しかける事は今までも一切なかったので、何も変わっていないと言う事をあいつらは理解していない。
ではなぜ無視されているのかが分かったかと言うと、これ見よがしに聞こえるように俺の悪口を言い、絶対に話しかけられても対応しない・・・・・・と日々話しているからだ。
本当に暇な連中だ。
フフフ、だが、あいつらは何かを勘違いしている。
今までも俺は一人。
いや、スミナはいてくれていたのだが、俺にとってはむしろ邪魔な連中が鬱陶しく絡んで来る事が無くなっているので、過ごしやすいと言えるのだ。
唯一の失敗と言えばあの三人の意思なのか、クラスのスミナに対する扱いも悪化している事だ。
あの球技大会の時に、明らかにスミナは俺の味方をしてくれた。
今まで通りに俺の味方をしてくれていただけなのだが、あまりにもあからさまだと判断されたのだろう。
既に戦意を喪失していたヒムロに対して、半ば強制的に球を渡して球技を継続させていたスミナが攻撃対象になってしまうのは当然と言えば当然だ。
普通に考えればただの球技大会を継続しただけに過ぎないのだが、俺はあの時にそこまで考えが至らず、何も対処する事が出来なかった。
ここだけが本当に悔やまれる。
とは言えそのおかげか、スミナと俺が会話をしていても何か邪魔をされる事は一切ない。
「あの、スミナさん。大丈夫なのですか?僕にはわかりませんが、その……貴族としての対応と言いますか」
スミナは何も言ってこないが、彼女の家とあいつら三人では爵位が全く異なっている。
片や下級貴族と言われている男爵、片や上級貴族である公爵だ。それも三家。
どう考えても家としての立場が悪くなっている可能性が高い。
「フフフ、まだそんな話し方をするの?大丈夫です!今の所は何も問題は有りませんから心配しないで下さい」
俺の心配を払拭するかのように、見惚れるような微笑を携えてこう伝えてくれるスミナだ。