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(137)ダイマールと皇帝シノバル①

「へ、陛下・・・」


 皇帝との間に大きな亀裂が入った事を理解しつつも、自らの邸宅に届いた書面を皇帝シノバルに見せざるを得ないので謁見を行っているダイマール公爵。


 過去であれば謁見に対して正式な手順を踏まず共良かったのだが、最早他の貴族と変わらない扱いになっているので、アズロン男爵からの書状が来たために謁見を申し込むと具体的な内容まで申請しなくては会えなくなっている。


 単純に手紙が来た程度では謁見を認めるつもりはなかった皇帝シノバルだが、手紙の相手がアズロン男爵であれば話は異なってくる。


「ダイマールよ。例の作戦はどうなったのだ?」


 例の作戦とは、当然レベル9の冒険者達によるアズロン男爵家側の面々の殺害だ。


「そ、それですが・・・」


 アズロン男爵側から書面が来たとだけ聞き、作戦が成功して臣下としてあるまじき行動を謝罪する内容が書かれている事を期待して謁見していた皇帝シノバルだが、目の前のダイマール公爵の態度から間違いなく真逆の結果になっている事を悟ってしまう。


 国家的にも明確に傾いており、男爵と言う爵位が低い貴族すらも制御できないと思われる事自体が皇帝としての統治力を明確に疑われるので、不機嫌なままダイマールが差し出している手紙を受け取り読み進める。


「・・・!?お、おい!ダイマール。コレはどう言う事だ?」


 プルプルと震えながら手紙を握り潰している皇帝シノバルは、これ以上ない程に怒りをあらわにしてダイマールに詰め寄っている。


「その内容が事実だとは到底思えませんので、事実確認を行っております。事が事だけに、結果が出ていない状態ながらも、急ぎ陛下にご報告した次第です」


 手紙の内容には、ダイマールや皇帝の依頼を受けたレベル9の冒険者四人を捕らえているので、補償金と引き換えに返却する事が書かれていた。


 当初アズロン男爵としては特に保証金を取るつもりはなかったのだが、この話をした時に過去チャネルが怒りの余りアズロン男爵邸宅を飛び出してしまった時の事・・・ダイマールがフローラ夫人を手に入れるために裏で手を回し、自作自演でアズロン側に金銭を援助すると恩着せがましく言って来た時の事を話し、復讐とばかりに金銭を要求すべきだと告げていた。


 確かにあの時の怒りは口では表現できなかったアズロン男爵、そしてヒューレット一行だったので、珍しくチャネルの案は満場一致で採択されていた。


「あのレベル9の面々が捕縛されているだと?あり得ないだろうが。これは間違いなくアズロンの虚勢だ。忌々しいアズロンめ!皇帝であるこの余の命令を聞かないばかりか、ゆすりを働くとは言語道断!」


 第三者的に見れば皇帝とダイマール公爵がアズロンを不条理に攻撃して返り討ちにされ、補償を要求されるのは至極当然の流れと言えるのだが、最早後がない皇帝は過去の栄光に縋っているのか一臣下であるアズロン男爵程度から補償を要求された事に怒りを隠せない。


「で、では私の方で事実関係を調査しておりますので、結果を得次第、即ご報告させて頂きます!」


 未だ暗部だけは健在なダイマール公爵なので手紙を受け取った段階で暗部を動かしていたのだが、敵側にも最強戦力のヒューレット一行や謎のジニアスと言う存在、そして魔物二体や霞狐がいる事から慎重に行動するように指示をしていた。


 普通の命令であれば即日に経過報告があるのだが、相手が相手なだけに慎重に行動する必要があるのは当然で、今尚報告がないのも止む無しと考えているダイマール公爵。


「その必要はありませんよ」


 そこに扉を開けて堂々と入ってきたのは、皇帝シノバルやダイマール公爵も嫌でも恐怖の対象と理解できるジニアスに従っている魔物二体の内の一体・・・ブレイドと共にアズロンが悠々と入室してきた。


「ぶ、無礼だぞアズロン!」


 本来一下級貴族が突然謁見の間に侵入する事も出来ないし、皇帝の許可なく話しかける事もご法度なのだが・・・その両方を完全に無視する形で悠々と入室する。


 本来は騎士がこの行動を止めるべきなのだが、ここに至るまでに存在していた騎士は既に無力化されている。


 皇帝の怒りの言葉すら全く耳に入っていないかのような態度のままツカツカとダイマールがいる場所まで進むアズロンだが、皇帝シノバルとダイマール公爵の視線はブレイドと共にこの場に入って来た存在に釘付けになる。


 入って来たと言うよりも縄で括られて引きずられてきたと言う表現が正しいのだが、その縄には正に今話題になっていた四人のレベル9の冒険者達が繋がれていた。


 流石にこの状況であれば手紙の内容が真実であると認める他なく、皇帝シノバルも二の句が継げずにいる。 


「では、この四名からは色々と情報を教えて頂きましたので、差し当たり保証金として二十一億六千万マールを請求します」


 この金額は、過去に妖幻狐を納品した際に認定された二年分の納税金額になる。


 過去の皇帝シノバルやダイマール公爵であれば多少懐は痛いが出せない金額ではないのだが、没落している状態なのでその金額をポンと出せる訳もない。


「あぁ、何方が支払って頂いても構いませんが、物納は認めませんよ?それと、期限は一週間後。くれぐれもよろしくお願いしますね?仮に納付できなかった場合は、強制的に相応の価値ある品を差し押さえます。では、私はこれで」


 当初の目的とは大きく異なるが、皇帝シノバルとダイマール公爵に対して釘を刺せるばかりか間違いなく二人の間にはこれ以上ない程の決定的な溝が出来るので、悠々と冒険者四人を残して謁見の間からブレイドと共に去っていくアズロン男爵。


 即座にブレイドの力で領地に戻り、結果を報告している。


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