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(128)学園イベント(卒業6)

「本当に、卒業おめでとう!スミナさん、ジニアス君。異国の地なれど、貴方達の苦労は我がシラバス王国のジェイド陛下より聞き及んでいます。呆れるばかりのどこぞの国の対応ですが、それでも腐る事無く前を向いて立派に卒業した事、ここに証します!」


「「ありがとうございます!!」」


 二人に卒業証書を渡しているのは部外者であるシラバス王国のジョレニュー男爵だが、誰も止める事は出来ないし、文句をつける事も出来ない。


――バチバチバチ――


 壇上でのこのやり取りに対して、親族が待機している場所、そして生徒が待機している場所夫々から本当にささやかながらもしっかりとした拍手が聞こえてきたので、振り返ってその方向を確認するジニアスとスミナ。


 その視線の先には豪商であるマハームとその娘でありクラスメイトであるリンの姿が見えたので、笑顔で二人に向かって一礼する。


「フフフ、ヨルダン帝国にも少数ですが気骨のある人物がいるのですね。本当に少しだけですが、見直しましたよ」


 ジニアスとスミナの背後にいる形になっているジョレニュー男爵は、僅か二人の拍手ながらしっかりと、そして明確に祝う気持ちを表明している豪商とその娘を記憶した。


 この場でここまですると言う事は今後ヨルダン帝国からは相当目をつけられる事は明らかであり、この学園に入学できるほどの地位を持っている人物であれば例え商人であろうがその程度は理解できているはずだ。


 今回はジニアスと言う本当に一般的な人物が例外的に入学したが、本来チャリト学園は謳い文句だけは平等だが、実際はそう言った学園なのだ。


 そもそも、祝った対象であるジニアスとスミナはヨルダン帝国内部とは言っても、シラバス王国と隣接した位置に領土を持っているアズロン男爵邸に戻ってしまう事は明らかであり、周囲が完全に敵……とは言わないまでも、国家権力を敵にした商人に対して助力を行うような人物はいない可能性が高く、間違いなく孤立するだろう。


 今尚二人しか拍手をしていない事が如実にヨルダン帝国の状況を表しているのだが、豪商マハームや娘のリンもその程度は分かっており、覚悟の上で命の恩人に対してお祝いの気持ちを表したのだ。


 その後ジニアスとスミナは後方の席に戻りジョレニューも自席に戻った事から、霞狐は殺気を飛ばすのを止め、無駄に固まっていた護衛の者達とワナワナしているダイマール公爵も黙って席に戻る。


 何とも言えない式の終盤だったのだが、このままでは何も進まないので司会者が閉会を宣言する。


「こ、これで栄えあるチャリト学園の卒業式を終了したいと思います。今後皆様の更なる活躍を祈っております!」


 ワラワラと消えて行く卒業生とその親だが、実はもっと早くにこの周辺から消えていた存在がある。


 それは……ダイマール達と同じくスミナを手中に収めようと必死で行動していた魔物達であり、スミナが単独で立ち上がった瞬間にチャンスが訪れたのかと思い行動し始めようとした所、一瞬ではあるがジニアスからブレイドが出てきた気配を感じ取った。


 流石に各魔物がレベル10の猛者であり、一瞬ではあるが脅威の対象の存在を感じ取り、誰しもが事前に打ち合わせでもしていたかのように揃って一目散にこの場所から離脱していた。


「お、おい!チャリト学園も危険なのか!」


「知るか!そんな事は後で考えれば良いだろう!」


 恐怖の対象から遠ざかる事だけに意識が集中しており、今まではかろうじて安全かもしれないと認識していたチャリト学園周辺も危険であると認識した魔物達はあっという間に相当遠方に消えて行った。


 結果的にヨルダン帝国のダンジョン全てとは言わないが、結構な数のダンジョンの異常が解消された事になったのだが、この事実は公の場でダンジョンに対する異常状態を引き起こしたと宣言されてしまったヨルダン帝国、ダイマール公爵の疑惑を更に深める結果に繋がった。


 第三者から見ればダンジョン異常状態に対する現状を慌てて改善し、異常状態を引き起き起こした証拠隠滅を図っているように映ったのだ。


「へ、陛下!各国、特にシラバス王国より、未だに異常状態が解消されていないダンジョンも速やかに通常状態に戻すようにとの宣言が出ております」


「何を言っているのだ!我らは何もしていないのに、改善などできる訳がないだろうが!そもそもシラバス王国のダンジョンには異常がないのではないか?それを……余計な事を言って来るとは、偉そうに!ダイマール!お前はこの状況を打開する術を持っているのだろうな?事の発端はお前が卒業式で醜態を晒したのが原因だぞ!!」


 全てがダイマールのせいではないのだが、ここぞとばかりにダイマールに責任を負わせようとする皇帝シノバル。


「そ、それは……わかりました。もうこうなったら、ドノロバを筆頭にレベル9の人外達に期限を設けずにアズロン達を始末する依頼を出す他ないでしょう」


 以前期限を設けて依頼を断られた経緯があるので、そこは柔軟に対応している所は流石ではあるのだが、依頼内容は程度が低いと言うレベルではなく、正に人外だ。


「フム、あのヒューレット達と同じレベル9の者達……か。ならば可能性はあるかもしれないな。良し、その方向で行け。それと、卒業式の最後の状況は余の耳にも入っている。ここで甘い顔をしては帝国として舐められる。マハームだったか?対応は分かっているだろうな?」


「承知しております、陛下」


 ここまで来てしまっては、逆にアズロン男爵に何かあれば更にヨルダン帝国が疑われるし、仮にアズロン一行を仕留めても状況が改善する事は無いのだが、何もかも上手く行かずに視界が狭くなっている皇帝とダイマールは迷わず有り得ない決断をしてしまい、ダイマールお抱えとも言えるドノロバ達も、期限がない上に超高額の報酬を提示された事から依頼を受けていた。


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