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(113)学園イベント(就業体験1)スミナ

 参加は自由であると言われているこの就業体験イベントには、公爵家を継ぐと決まっている三バカは自然と不参加の流れが出来上がっており、他の生徒達……著名な冒険者、他の貴族、豪商の子供達は、親の後を継ぐにしても他の職業を経験しておきたいと言う気持ちがあるので、ほぼ全員が参加している。


「俺は……どう考えても冒険者、かな?」


「フフ、似合っていますよ、ジニアス君。私は、折角回復系統の力を手に入れてネルさんに修行をつけてもらったので、町の皆さんの為に活動したいと思います!」


 スミナの優しい性格がにじみ出ており、就業と言うよりも奉仕活動と言った方が近いのだが、教会に出向いて周辺住民に対する活動を行う事にしたようだ。


 相変わらず帝国内のアズロン男爵が絡んでいない場所については、ダンジョンが騒がしい事になっている影響を受けて帝都もざわついているが、スミナも護衛にレベル9の霞狐がいるので、最近は時折単独行動をしている。


 今回の就業体験も経験する職業が全く違う為にどう考えても個別行動になるので、一応ネルがスミナと共に同行する事にしており、この頃にはすっかり眷属の二人に関しても一切隠す事をしなくなっているジニアスだ。


 基本的に戦力全てを晒すような事は愚策だと思っているジニアスだが、結局自分自身の力は疑いの域を出ずに公になっていないので、眷属の二人には痣に収まっているよりも顕現してある程度自由に行動してもらいたいと考えていた。


 残念ながらスミナは回復系統であり操作系統を持たないので直接的にネルと会話をする事は不可能だが、筆談、雰囲気である程度カバーできている。


「じゃあ、行ってきます!」


 ネルとヒラヒラしている服を着させられている霞狐を伴って指定されている教会に向かっているスミナは、道中の人々から笑顔で声をかけられる。


「おはようございます、スミナさん」


 ネルや霞狐に見慣れている周辺住民はこのような対応なのだが、少々距離のある教会では相当な力を持っているとの噂を聞いてはいるのだが直接その目で見る機会がないために、力を抑えてはいるが美しい羽根を持っているネル、そして無駄にヒラヒラしている服を着させられてはいるが、よく見なければ存在が把握できない霞狐に対して興味津々だ。


 力を抑えているからこそ興味津々の態度でいられるのだが、今日はスミナの大切な授業、体験であると理解しているネルと霞狐は、不躾な視線を向けられても特に反応する事は無く極めて冷静な態度を貫いている。


「こんにちは。チャリト学園から来ましたスミナです。今日はこの教会のお手伝いをさせて頂きますので、よろしくお願いします!」


 教会の仕事は多岐にわたり、炊き出し、癒し、不自由な方の住んでいる場所に出向いての各種補助、それでいて報酬は善意の寄付から支払われるだけで決して十分とは言えないのだが、所属している面々はその高い志から誇りをもってこの仕事をしている。


「良く来てくださいました。宜しくお願いしますね。届きました資料によれば回復系統のレベル7をお持ちとの事で、できれば回復術を行っていただけると助かるのですが」


「はい!頑張ります!」


 各種仕事の中で、普通では得る事の出来ない上限レベルであるレベル7を持っているスミナの力を効率的に民に還元する方法を考えていた教会の神父は、癒しを求める人々に対する対応を任せる事にした。


 あくまで今回はスミナの就業体験なので、同じく回復系統の力を持っているネルが一切手を出さない事は事前に打ち合わせ済みであり、真剣な表情に変わったスミナの後ろを周辺を警戒しつつ霞狐と共について行く。


「こちらです」


 神父に先導される形で境界の一角に到着したスミナ達は、長蛇の列が出来ている事に驚く。


 自分達が教会に来た道とは真逆の方向に列が伸びていたようで、ここまで大量の民が癒しを求めてきているのか……と何とも言えない気持ちになったのだが、良く見ると相当数の冒険者がいる事に気が付く。


「最近はダンジョンが少々おかしくなっているようで、今までの経験、情報がすべて役に立たなくなっている様なのですよ。そのおかげで冒険者の対応も増加する一方なのです。では、よろしくお願いしますね」


 スミナの視線を確認した神父は、軽く状況だけを説明すると自分の仕事があるのか忙しそうに去って行く。


 教会に来る冒険者は自らポーションや回復術を持っていない者、放っておけば治りそうな怪我だが無料で早く治してもらえれば仕事に復帰しやすいと安易に考えている者、しっかりと寄付をしたうえで少しでも状態を改善したいと思っている者、色々な人物が列をなしている。


 怪我の程度もまちまちで、並んでいるだけでフラフラしている状態の人もいれば仲間と談笑している者もおり、どの様に癒しを行えば良いのか判断が付かないスミナに対し、同じくこの場で作業を行う教会所属の職員が話しかけてくれた。


「チャリト学園のスミナさんですよね?今日はよろしくお願いします。今後問題になる可能性があるので、個人的(・・・)な寄付は遠慮する様にお願いします。それと、上限レベル7をお持ちとの事ですが、今はどの程度で術を行使できるのでしょうか?」


「こちらこそよろしくお願いします。えっと、上限レベル相当では行使できますが、そのレベルを継続し続ける事は難しいです」


 本当は上限レベルを突破した形で術が使え、更に魔力を効率よく使えるので一日近く術を行使できる実力はあるのだが、これもジニアス達と事前に決めていた事であり、無駄に力を公開した結果、今後問題になる事を防いだのだ。


「では、ある程度重症、重病の方の対処に回って頂いてよろしいでしょうか?魔力が無くなりかけたと感じた時には、誰かに声をかけて休憩をして頂ければと思います。では、こちらへどうぞ」


 こうして列の先頭の先にある仕切りのある部屋の一室に案内され、いよいよスミナの就業体験が始まるのだった。


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