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(106)学園イベント(卒業旅行4)

 不測の事態が起こってしまったのだが、何時までも生徒全員でこの場にいる訳にも行かず、ドノロバとムスラムがこの場に残って探索を継続して生徒の引率はジリュウとトステムが行い、帝都に到着するまでにムスラムから魔獣による連絡がなければリンの父親と探索に関する費用についての交渉をした上で合流する事になっている。


 護衛としての失態と言えなくもないのだが、彼等の主な仕事はヒムロや公爵家嫡男を護衛するついでに他の生徒達の面倒を見る契約になっているので問題はない一方、生徒の親、特に今回失踪してしまったリンの両親からすれば相当不条理と感じる事になる。


 ヒムロはあの場で護衛は任せろと言い、実際にレベル9の四人を護衛として同行させたのだが、その一言でクラスの生徒全員が完全に庇護対象になると思ってしまった所が大きな誤解ではあるが、担任のロンドルや学園長ですら費用も浮くし、学園で契約している冒険者よりもはるかに実力があるので安心しきってしまった。


 そうこうしている内にリンを除く全員が無事に帝都に到着して帰宅するのだが、今を持ってなおムスラムからの連絡がない以上は発見に至っていないので、リンの父親、豪商と呼ばれているマハームの元に向かうジリュウとトステム。


 その間に学園からマハームに大至急の連絡が行っていたようで、護衛として不手際があったと思っている上に、その当事者から探索について別途費用が必要だと言われて、普段温厚なマハームも怒りを露わにする。


「何を言っているのですか!そもそも護衛を任せられた以上は、無事に帰還できない時点で契約不履行。その不手際を補完するのに追加の費用?恥ずかしくないのですか?」


 レベル9で公爵家からの依頼を受ける程の実力者なので、簡単な依頼でも相当な費用が必要になる。


 豪商であればその程度は払えなくもないのだが、大切な娘を守れなかった挙句に調査をするのに追加費用を堂々と請求してくる目の前の二人、ジリュウとトステムが許せなかったのだが、言われた二人はあっさりとしたものだ。


「あー、うっとうしいぜ。おい!俺達はダイマール公爵からの依頼を受けただけにすぎねーんだよ。つまり、公爵達嫡男を守れればそれで依頼は達成だ」


「その通りですね。なので、貴方がそのような態度であれば交渉する余地はありません。善意から今もレベル9のドノロバとムスラムが探索している最中ですが、手を引く事にします。俺達も、もう用は無いのでこれで失礼しますよ」


 あまりにも勝手な言い分に聞こえなくもないが実際の契約はその通りであり、担任の日和見ロンドル、学園長、夫々の不手際によって祖語が発生した結果、正に救世主とも言える最高戦力のレベル9の冒険者はさっさと手を引くと宣言し、実際に退室してしまう。


 一人残されたマハームは今後どうすれば娘であるリンを救えるのかを必死で考えるのだが、伝説とも言えるレベル9の冒険者との伝手があるのはダイマール公爵であり、その冒険者達を今目の前で糾弾して手を引くと言われてしまったので、中々次の一手を考えだす事が出来ない。


「旦那様。担任のロンドル様がお見えです」


「……直ぐに通してください」


 責任の一端があるチャリト学園の担任が来たと執事から告げられ、どう責任をとるのか糾弾したい気持ちにかられるのだが、それよりも先にどのように救出すべきかを考えるべきだと気持ちを落ち着かせる。


「失礼します。その……この度は……」


「そんな事は今重要ではありません。どうすれば救出できるのか、それを早く報告するべきではないですか?」


 ロンドルは、ここでマハームが学園に対して色々と文句を言ってくれば自分(・・)の評価が下がるので挨拶に来ただけで、解決策を持ってきたわけではない為にこの場で必死に考える。


「そ、そう言えば、クラスメイトのスミナさんのご実家、アズロン男爵と専属契約をしているヒューレット様のパーティーにお願いするのは如何でしょうか?あっ、それに、あの邸宅には護衛の霞狐が複数いますから、彼等に捜索をお願いするのも手かもしれません!」


 慌てて考えたにしては真っ当な事を言っているのだが、お願いするべき対象にどう思われているのかは一切考慮できていないロンドル。


「そう言えば、霞狐の噂は私の所にも届いていますね。そうですか。アズロン男爵が従えているのですか。それにヒューレット様達であれば、確かにレベル9。リンを見つける事が出来る可能性が高いですね」


 実際はアズロンが霞狐を従えているわけではなく事実は多少異なるのだが、男爵家で生活している事は間違いないので余計な事は言わないロンドル。


「わかりました。貴方は教師として、責任をもってその生徒と渡りをつけて頂きましょうか。今、この時でもリンは恐ろしい目に合っているかもしれないのです。一刻の猶予もありません」


 鬼気迫る父親の気迫に圧され、慌てて屋敷を出てアズロン男爵の邸宅に向かうロンドルなのだが、スミナや男爵邸で共に生活をしているジニアスにも良く思われていない事は知っているので、足取りは重い。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 その頃、とあるダンジョンの一角にリンはいるのだが、今の所命に別状はない。


「おい、もう一度聞く。あの帝都の一角、俺が調査した結果アズロン男爵とか言う人族(・・)が住んでいる場所から異常な気配を感じる上、更に調査した結果、その男爵の領地でも同じように時折異常な気配を感じる。おかげでそっち方面に侵攻できずに困っているんだ。何があるのか、知っている事を全部話せ!」


 どう見ても人ではない魔()に脅しをかけられてはいるが……


 あのキャンプのような場所でレベル9の冒険者達に察知される事無くリン一人を攫ったのは、ネルやブレイドと同じく魔物に分類されているダンジョン生まれの自我の有る存在、そして有り得ないレベル10と言う別格の力を持つ存在によるものだ。


 彼を始めとした同じような魔物達は恐怖の対象であるレベル10のネルとブレイドの存在を久しく感知していないので、二人が過去に拠点としていた場所を恐る恐る調査し、偶然多数いた人族の一人を適当に攫って、何やら恐ろしい気配を感じるアズロン男爵邸宅や領地についての情報を聞こうと思っていた。


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