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(101)学園イベント(学園祭2)

「さぁ、いらっしゃい!今日、ウチのクラスでは癒しもあれば綺麗な魔術も見る事が出来ますよ!可愛い獣とのふれあいコーナーも充実しています!是非楽しんでください!いらっしゃーい!」


 ジニアスのクラスではロンドルの提案の通りに各人が得られた能力を使って訪れてくれる人々に対して力を行使しているのだが、上限レベルにまで到達できている生徒は稀で、更には各人の術の練度も低い事から、教師が安全の為に付き従っている。


「はぁ……いくら依頼とは言え、なんで俺がこんな学生がはしゃぐだけのイベントに参加しなくてはいけないのか」


 そんな中で、外部から依頼を受けた人材として……最悪の事態が起きた際に対応する人材と言う体で、ダイマール公爵お抱えの回復系統レベル9を持つトステムも教師と共にこの教室に待機している。


 ダイマール公爵からの依頼では初めてと言って良い程に普通の依頼であった為に、絶対に裏があるので油断しないようにしつつも言われた通りにこの場にいるのだが、目の前では生徒やその親、周辺住民が訪れて楽しそうにしているだけ。


 まるで拍子抜けしてしまったのだが、それでも一切気を抜けないのはジニアスがいるからだ。


 以前シラバス王国からの留学生であるソフィアを始めとした三人を意図的に下層送りにした事から、何時どのように報復されるかもしれないと言う思いを抱きつつ教室に佇んでいる。


 一方のジニアスとしては、粗方事情を聞いているのでトステムが敵であるとは知っているが、最も被害を受けたソフィア達やジェイド国王が三バカを躾た後に今の所一切動く気配がなく、またアズロン男爵やヒューレット一行からもそのような話が聞こえてこない事から静観している。


 それに、折角のイベントなので場を荒らす事をせずに、自分も思い出を作る為に楽しみたいと言う思いがあった。


「じゃあスミナ、俺達の出番はないから他のクラスに行ってみようか?」


「うん!」


 クラスの大多数とは異なって相当格上の上限レベルを持っている状態で、あり得ない程の格上のネルから術について手解きを受けているおかげか、通常では相当厳しい修練を長期間しなくてはならないはずが、既に上限レベル7の力に至っているスミナ。


 実際はネルの影響もあってレベル以上の力を得ているのだが、その力を使っては学園のイベントとは言えない程の効果をもたらしてしまう事は火を見るよりも明らかな為、自分達の力を使う事は避ける事にしていた二人。


 三バカ、ロンドル、クラスの生徒達、更にはトステムにとって最大の脅威となる存在が去って行ったので、これを境に一気に盛り上がって行く。


 生徒達としては自分の得た力を自慢げに行使したい所だったのだが、相当格上であるジニアスを前に偉そうに行使する事は憚られており、その制約が外れた事によって成果……特に回復系統を持つ者達の成果が上がり始める。


 補助系統の力によって上昇されている上での術の行使なのだから、多少の怪我をしっかりと治せるレベルの回復術を行使できるに至っていた。


「おや!?腰の痛みが取れたよ。ありがとうねぇ~。本当に、痛みを感じないのは何時ぶりかねぇ?」


 少々離れた場所では……


「わー!可愛いウサギさん!!」


 一次的ではあるがウサギを使役した生徒や、他の使役された動物と戯れるコーナーでは、幼い子供達が笑顔で触れ合っている。


「綺麗!」


 一方で、本来は攻撃魔術ではあるが相当力を抑えて制御する事で、まるで花火の様に綺麗な景色を作り出している……それぞれの場所で楽しそうな声が聞こえてきているのだが、間もなく昼休みになる。


 食事を提供しているクラスは最も書き入れ時となるのだが、ジニアスのクラスでは逆に空き時間となるので各自が食事をしに教室から出て行く中で、ロンドルが一部の生徒達を止める。


「あっ、回復と補助の皆さんは少し時間をずらして休憩をとって頂きますので、こちらに来て頂けますでしょうか?」


 言われた生徒達は、込み合う時間をずらしてくれる良い対応だと思いながらロンドルの指示通りにクラスの一角に移動して椅子に座るのだが、何故かそこには三バカであるヒムロ、レグザ、ビルマスが大人しくしつつも既に座っており、その背後にはヒムロの…ダイマール公爵家の依頼でこの場に来ている回復系統のレベル9、トステムが控えている。


「皆さん、折角ですから皆さんの回復術と補助術の練度を上げてみてはどうでしょうか?何とレベル9のトステムさんもダイマール公爵のご厚意でこの場にいらっしゃるので、間もなく社会に出る準備としては有り得ない高待遇ですよ?」


 そもそもトステムは回復系統なので補助系統の力は使えず、何故かこの場に集められている補助系統を持つ生徒達には全く益はないのだが、今まで術を行使して喜んでいただけた事、自分の力が通じている事に気を良くしているのでロンドルの言葉を受け入れる。


「では、補助系統の皆さんはトステムさんと今迄通りにクラスの皆に補助術の行使をお願いします!その後、今までこのクラスを引っ張ってくれていた三人を癒す為に全力で術を行使してください!」


 何故か周囲に回復系統や補助系統を持つ見張りの教師も集まってきたので、流れに乗ったまま術を半ば強制的に行使させられるのだが……


「ほら、皆さん!全く術が効いていませんよ?死ぬ気で行使していますか?」


 一応当人も回復系統を持っているはずなのだが一切術を行使する素振りすら見せずに、只管周囲の生徒達に激を飛ばしているロンドル。


 やがて一人、また一人……と魔力切れになって意識を失って行ったのだが、残念な事に三バカの状態に変化はなかった。


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