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博士、農地をゲットする

ここはとある異世界。


 その異世界の王都の外門。

 外は森林。

 門に立ち、外を眺める白衣を纏う壮年女性。

 彼女は博士。白髪で短髪、やや高くスッキリとした体型。見た目のイメージは恐そうな保健所のボス。


 大きな鞄を持って後ろについて来たのは荷物持ち兼助手の素子ちゃん。

 高校の時にモブ相手に罰ゲーム告白させられて、ネタばらしのタイミングを逃してモブと1ヶ月付き合い色々流出。疑いもせず気安く動画を撮らせる天然(アホ)である。



「素子君見たまえ」


「なんですか?」

「異世界では耕作地が圧倒的に足りない疑惑がある」

「うーん、町に畑もないし外にもほぼ無いですねえ」


 眺めると畑らしきものは遠くに見えるがあんまり広くない。とても王都を賄える面積ではない。地球の常識なら人の食生活には呆れるほどの面積の農地が必要だ。


「遠くに農村とか有るらしいが恐らくは大した面積ではないだろう。自動車、そもそもエンジンや電気のないこの世界では広い農地は管理出来ないであろう。しかも農村の防衛はいい加減らしい。危険きまわりない世界でこれは無理がある」

「あー、うちのじーちゃんの畑と田んぼだけでもすっごい広かったの覚えてます。殆んど自分ちの分だけだったのにすっごい広かったよ。軽トラないと無理よねー」

「そう、これではどう見ても耕作地が足りん、ちょっと足りんなどというもんではない、全く足りん。だがこの町は食糧難にはなっておらん。何故だと思う?」

「わかんなーい」

「素子君、秘密はこの門に有るのだよ」

「門?」

「素子君、我々が初めてこの町に来た時の景色を思い出してみい」

「あ!」

「そう、門の外は砂漠が有ったであろう」

「そう言えば!」

「この門こそがこの異世界の驚異に他ならない! この門の外は多重世界になっておる。この門だけでも推定15の世界の入り口になっておる。これで徒歩で行ける距離に大量の農地を確保できる。他の門にも同じように多数の世界が有るだろう。おそるべし異世界!」

「異世界すっごーい!」

「ここからが本題じゃ。私もひとつ世界をゲットしたいと思う」

「あ、異世界の定番『田舎でスローライフ』ですね!」

「まあ、そうと言えんこともない。我々は日本人だ。欠かせないものが有るであろう?」

「ごはんですね!」

「うむ、正解じゃ。いずれはカレーライスも食べたいのう。それに米粉でラーメンも出来ないことは無いらしい」

「カレー! ラーメン!」


 きゃあきゃあと素子ちゃんのテンションヤバい!

 それを見る優しい笑みの博士。


「では先ずは農地を確保しよう。どっか空いてるじゃろ」

「はいはい、しつもーん! 誰が育てるんですかー?」

「うむ。私も素子君も研究を優先したいので、誰かを雇わんとな。それに異世界の農業が遅れてるのはお約束じゃ。ここは科学の力も投入せんとな」

「あー良かった。私やらなくていいんだー。子供の頃じーちゃんのトマトやナス投げて遊んでたらすっごい怒られたんだ」

「酷いクソガキだのう。もう投げるでないぞ」

「もうしませーん!」


「うむ、では始めるとしよう。まずは役場に行くぞ」




 ーーーーーーーー




「ここか」


「げっ、ここって最初に来た場所じゃないですか!」


 そう。

 ここは博士と素子ちゃんが最初に来た場所。そう言えば耕作地は無かった。

 門の外はすぐ砂漠で緑地までは距離がある。なにより途中の砂漠が農作物運搬には適さない。車輪がズブズブと沈みやすい。しかも森にはゴブリンにオークが出る。他にも害獣が居るかもしれない。


「なんでここ誰も使わないんでしょうね?」

「うむ、役場の話では希望者は居たらしい。だがゴブリンやオークが出るので農地に出来なかったらしい。農地開拓のためのオーク討伐隊も返り討ちになったといっとる」

「あ、それって!」

「うむ、キャリー達じゃな」

「ここにはキャリー君にも来て貰う予定じゃ。オークに襲われない貴重な人材じゃ」

「私はどうなんの!」

「心配いらん。ほれ」


 そう言うと博士は木と木の間を指差した。

 そこには数体のオーク。


「ガ♥️」


「いやあああああ!」

「心配いらんと言うのに」


 オークは博士と素子ちゃんの側に歩いてくる。

 そしてうやうやしく異世界高級バナナを差し出してくる。結構多い。


「おお、久しぶりじゃな」


 するとオーク達は素子ちゃんの目の前で片方膝を折った。


「ガ ガ モトコググ」


「うむ、素子君を神の使いと崇拝しておる」

「げ!」


 神の使いを集団でマワすとか酷いけど。


「これでオーク問題は片付いたのう。残るは稲の品種改良と農機具じゃの」

「え、この間のゆめぴかりじゃダメなんですか?」

「うむ。稲は土地に合わせて改良する必要がある。それは日本でも同じじゃったろう」

「ふーん、よくわかんない」

「あとは農機具と小作人じゃが・・・・」





 ーーーーーーーー





 ここはキャリーのアパート。時は既に夕方。



「ただいま戻りました」


「おお、戻ったかねキャリー君。ギルド(しごと)はどうじゃったかね?」

「今日はなんにも無かったです、すいません」


「まあ、仕方ないじゃろ。ほれ、バナナでも食べて元気出したまえ」


 そう言うと博士はどさりと高級バナナを置く。


「こ、これは伝説のバナナ! ひとふさで二万Gする高級品よ! 滅多に出回らないし!」

「まあ、食べたまえ」


 半泣きでウマイウマイとバナナを食べるキャリー。高級過ぎて今まで食べたこと無いらしい。しかもお昼は何も食べてないから余計に感動する。

 旨いだけではない。仕事探しの辛さの後の幸せは感情を昂らせる。


「どうじゃねキャリー君。我々はこれから農業をしようと思っておる。上手くいけば儲かるかもしれん。君もやらんかね?」


 目の前には大量の高級バナナ。キャリーは勘違いしていた。これを育てるのだと。高額で取引される高額バナナ。上手くいけば儲かること間違いなし。しかも生産者は食べる機会も多いだろう。だが実際は稲作で売るためではなく、博士が食いたいからである。



「やります!」


「素子君、聞いたかね?」

「ええ、しっかりと。録画もオッケーです」


「え?」


「素子君、キャリー君の服をひんむきたまえ」

「らじゃー!」


「いやあああああああ!」



 その夜、キャリーの小作人化改造手術が行われた。





【キャリー改造とは】

 聖女の腸から採取した細胞とキャリーから採取した細胞を使い、キャリーの身体にギリギリまで抵抗しないとこまで聖女の遺伝子を組み込んだ『人工培養腸』を移植。これによりキャリー(モブ)聖女(チート)の77.7パーセントの出力を得ることに成功。


 手術は女性に優しい無開腹手術。キャリーのお腹の肌は美しいままだ。

 だが、手術中はキャリーのケツにずっほし手を突っ込む博士(両手)の姿がかなりアレだったと素子ちゃんは語る。

 後日、手術写真を見せられたキャリーは気絶した。

ちなみにこの世界の冒険者の平均月収は10万以下。

キャリーは更に下。

本来なら選ばない職業だが、ごくわずかな一握りの冒険者が数百万の売り上げを出すことがある。

これを見ると夢を見てしまって冒険者で居続けてしまう。だが実際はそんなには支払われていない。そしてギルドは本来の報酬額は秘密にするように契約させている。

ギルドはそんなことも織り込み済み。しかも身元保証や無資格でもなれるようにしてある。

さらにはギルドカードで個人情報管理して生かさず殺さず。

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