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博士、魔力に興味を持つ

ここはとある異世界。

 そのとある異世界のとある安アパートのトイレ。



 バンバンバンバン!

 激しくドアを叩く素子ちゃん。

「博士ー!」

「五月蝿いのう」

「博士ー!はやくー!」

「五月蝿いと言っておる。今考え事をしていて良いとこなんじゃ」

「もれるー!」


 朝、トイレにのんびり籠る博士とドアの外で脂汗を流す素子ちゃん。異世界に来たって出るものは出る。

 因みにこのアパートのトイレは共同だ。しかもひとつ。



「よし」


 何故かよしと言いながら出てくる博士。何がよしなんだ? 入れ替わりに慌ててドアに飛び込む素子ちゃん。直後なんか凄い音がする。




 そして場面はキャリーの部屋に変わる。

 今日も大事な博士の研究がある。


「キャリー君は魔法を使えるのかね?」


 そう、ここは異世界。

 キャリーも異世界人。


「ええ、ほんの少しですけど」

「まじ! 見せて!」

「じゃあ、少しだけ」


 そう言うとキャリーは掌に自分の髪の毛を数本抜いて載せた。

「燃やします」

 その言葉の後、掌の上で髪の毛がチリチリと捩れながら燃えた。火は使っていないのに火がついた。


「おお、火がつけられるのだな。興味深いのう」

「マジだった! ただのモブではなかった!」


「これは火の魔法です。暗闇では灯りにも使えます」

「おお、便利じゃ。威力はどのくらいじゃ?」

「私は小さいのしか出せません。灯りにするにも十数秒しか続きません。釜とかの着火に使ってます。

 ヒールも頑張って覚えましたが残念ながらあまり役にたってません。なんか効いてるかなーって程度です。実は先日の聖女様のヒールを今更初めて見ました。流石は聖女様です、凄すぎます」


「勇者の魔法はどのくらいなんじゃ?」

「見たことは有りませんが、見たことがある騎士団長の話では家を丸ごと灰にするほどのファイヤーボールを連続で撃つのだそうです」

「ほほう、それは一度見てみたいものだのう」

「更には聖剣を使うと様々な種類の魔法攻撃が使えるのだそうですが・・」


 言いつつキャリーはちらりと部屋の隅を見る。そこには博士が勇者からカツアゲした聖剣がホウキと刈り取った稲の残りと一緒に立て掛けられている。

 博士は聖剣を丁度いいから包丁がわりに使おうと思ったが、重いし長くて邪魔じゃと放置されてる。キャリーにとっては見ることすら叶わなかった憧れの聖剣だが酷い扱いだ。


「はいはい! しつもーん!」

「なんじゃ素子君」

「どうやったら魔法使えるんですかー?」


「はい、キャリー君」

「ええと、体内の魔力を温めながら前に押し出すようなふうにして出口の手に殻のよ・・・・」

「キャリー君、悪いが我々にはその魔力が無いようじゃ。その感触は全く無い」

「魔力がない? そんな事って!」

「残念だがそのようだ。素子君もそうじゃろう」

「全然でませーん! やっぱりダメ?」


「そこでじゃ、そもそも魔力はなんなのか調べたいと思う。あくまでこの世界での魔力だがの。他所の異世界ではまた違うかも知れんし」

「博士ー! それが解れば私も魔法使えるんですかー?」

「わからん。まあ調べてみる価値はある。先ずは調べよう」





 ーーーーーーーー





 ここは王宮の隣にある勇者パーティー本拠地。

 勇者パーティー一軍(いちぐん)のオフィス(宿泊可で勇者は自身の部屋もある)に二軍控え室に装備倉庫と運営スタッフ15人が常駐している。

 因みに勇者パーティー一軍は現在五人(勇者含まず)で二軍は20人だ。

 王国最強の部隊であり、高給取りである。



「ここが勇者パーティーの家か」


 勇者パーティー本拠地の前に立つZ博士と素子ちゃん。


まな板(キャリー)の説明どおりの場所だし、間違いないわ。ほらなんか気取った建物だし」


「では手筈どおり行くぞ素子君」


 その言葉の後、博士は鞄からマントを取り出し身体に巻く。素子ちゃんも同じようにマントを巻く。

 これは博士の発明品『次元ステルスマント』である。身体を次元の陰に隠して姿をくらます便利グッツ。因みに挟まる次元を合わせておけば博士と素子ちゃんは交流ができる。

 因みにキャリーはギルドに行った(バイトさがし)

 そして二人は中に向かった。



 ここは勇者パーティー館の食堂。もうすぐ昼飯で二十人近くの強そうな者達が集まっている。

 姿を消した博士と素子ちゃんがこれから小分けされるスープの大鍋の前に立つ。

 素子ちゃん以外には見えないが、博士はグロそうな液体をスープに注ぐ。

 そして二人は部屋の隅に陣取った。ここまで誰も気付いていない。


 そして職員の食事が始まった。




「暫く経ったけど何も起こりませんね」(小声)

「やはりな」(小声)

「キャリー君の言うにはここの者達は魔力の強い者揃いだから、実験にはもってこいだったが予想どおりだ」(小声)

まな板(キャリー)もなんとも無かったしね」(小声)


「やはり仮説は正しいようだ」(小声)

「アレが魔力の元だなんてなんか幻滅します」(小声)



「では次に移ろうぞ」(小声)

「はーい」(小声)







 ーーーーーーーー





 ここは勇者パーティー館の最上階の勇者の部屋。

 ベッドには仰向けで横たわる勇者。今は眠っている。側には悲痛な面持ちで勇者から生える稲を刈る聖女。残念ながらこの世界のにノコギリ鎌なんてものは無い。小さいナイフで稲を無理して刈る度に勇者の顔が痛みに歪む。

 苦しそうな勇者にヒールをかける度に稲が復活する。ヒールの直後疲れて居眠りしたら穂が出た事もある。しかも、稲が進化してる。稲も生き残る戦いをしているのだ。

 そして部屋の床はワラで一杯だ。

 実は聖女に見殺しにされた大剣士は自宅でひっそり完治した。稲が自然に枯れたのだ。普通なら枯れる。

 まだ本調子ではないが、そのうち出勤するだろう。

 そんなことは聖女は知らない。大剣士のことなど彼女にとってどうでもいいのだ。

 不幸にも勇者は真面目な聖女にちまちまヒールをかけられ続け、稲は今でも元気だ。何度でも株から新芽を出す。


 勇者の不幸は聖女のせいである。



 ギィーー


「おお、元気じゃったか?」

「やっほー!」


「お前は!」


 突然現れた博士と素子ちゃん(悪魔達)に驚く聖女。

 今の今まで全く気配がなかったのに現れたら驚く。しかも憎っくき博士。

 聖女にとっては憎いが怖い。勇者も大剣士も全く敵わず、それどころか生捕りにする恐ろしい存在。勝てない。それでも博士に短剣を構えるのは聖女の意地である。



「これはとんだ歓迎じゃな」

「うるさい、お前のせいで勇者様は!」


「うむ、このままでは仕事にならん。聖女とやら、これを見たまえ」


 そう言うと博士は懐から白いペットボトルを取り出した。緑のキャップでなんかラベルが貼ってある。

 疑いながらも興味を引かれる聖女。しかし聖女にはこれがなんなのかは分からない。


「これは除草剤、草を枯らす薬じゃ。水で薄めて草に掛ければ葉から入って根の先まで枯らす凄いやつじゃ。勇者にもよく効くぞ。どうじゃ、取引せんかね?」

「あー博士、これうちにもあったー! じーちゃんがよく撒いてたよー」


 動揺する聖女。

 軽いノリの素子ちゃんの言葉がヤケに心に響く。

 この国に除草剤などというものはない。



「と、取引とは・・・・」



 博士は悪い笑みをした。



 ー ー ー ー ー ー




 勇者の部屋のとなりの部屋。

 ベッドの上には服の裾を捲りあげられ下半身丸出しで尻を上に突きだした聖女。必死に枕に顔を押し付けて恐怖と羞恥心と戦っている。


「おお、見たまえ素子君。綺麗なピンクじゃ。まだ誰も見たことの無い秘部じゃぞ」

「綺麗ですねー美人ってアソコも綺麗なんですねー」

「よし、もっと奥へ挿入したまえ」

「嫌がる割にはどんどん入りますよー」


 聞こえる会話に顔をあげられない聖女。願わくばこの姿を勇者に見られませんようにと願う。しかし逆らう訳にはいかない。除草剤を得るまでは。


「あ、右に曲がる。ここもからっぽねー」

 スマホ(仮)に映るのは聖女の腸の内壁。美しいピンクでポリープは無いようだ。

「おお、まだまだ行かねば。素子君、ちゃんとサンプル採ってるかね?」

「今、8箇所めです。そろそろ一杯になります。一度抜きます?」

「素子君、今来たとこまでマーカーを打ちたまえ」

「はーい。も と こ さ ん じ ょ う・・・・っと」

 ご機嫌である。


「よし、サンプルケース付け直したらもう一度じゃ」

「はい博士!」


 当の聖女は抜いたり入れたりする度に味わったことの無いアナルの感覚に震えていた。恐怖と安堵と肛門の変な感覚の繰り返しでおかしくなりそうだ。博士の内視鏡はオプション満載で結構太いし、サンプルケースと各種カメラがイボイボしてる。

 まさか処女喪失より早く後ろの穴の処女を喪うとは。


 博士の仮説。

 それは『この世界の魔力は腸で作られる』だ。

 この世界の人たちは驚くほどトイレに行かない。博士と素子ちゃんはトイレを使うがトイレの汚れは殆んど無いのに驚いた。殆んど使われてない。キャリーに聞いても具合が悪いときしか行かないらしい。つまり言い方は悪いが魔力の原材料はウンコである。

 勇者パーティー館の下の階の人達の食事に博士は特殊下剤を仕込んだが、誰もトイレに駆け込まなかった。腸に大便が存在しないのだ。しかも魔力の強い皆様は腸の吸収が良くて何も残ってない。下剤で未消化物が出るかと予想できたが、全く出ない。魔力の強い者は腸のかなり上流で消化吸収しきってるらしい。特殊下剤は空振りとなった。だがそれも大事なデータ。



 博士による聖女の直腸観察と細胞サンプル採取。サービスでがん検診も。

 そして取引条件の勇者の除草が全部終わると、聖女は博士達に短剣を構えた!


「殺してやる!」

 我慢してた聖女の怒りはついに放たれた。

 だが。



「これなーんだ!」



 素子ちゃんが聖女に見せつけたのはデコされた自分のスマホ(仮)。未知の映像装置に驚くがなにより驚くのは・・

 映し出されるのはおしり丸だしの聖女。ふっとい内視鏡がうごうご入っていくシーンが動画で再生されている。そう、全部映ってる、全部。顔は見えないがたまに胸チラもある。たまに漏れる聖女の甘声もしっかり聞こえる。こんなものが残っていたとは。


 聖女は力無く床にぺたんとおちた。



「この悪魔・・」



 ー ー ー ー ー ー




 部屋に戻って記録を整理する博士。

 素子ちゃんが道具を洗いながら博士に尋ねた。因みに帰って来たキャリーも聖女と同じ目に逢い、今トイレで泣いている。


「博士って魔法使う勇者を楽々ふん縛ったんですよね」

「当然じゃ」

「そんだけ凄いのに、なんで自分より弱い魔法なんか研究するんですか?」


「未知のものは素晴らしいからな。既に聖女の力を使えば時間を進める事が出来ることが解った。もし、その逆をする魔法があればアレが出来る」


「それって」


「そう、タイムマシンだ」

「すっごーい!」


「まあ、できる目処は立っていないがの。それ以外でも面白そうな物はあるぞ」


 そういって博士はナイロンの小袋に詰めた籾を見せた。


「それ何?」





「さんざん魔法にさらされ続けた稲じゃよ。ふっふっふ」






【登場人物】

 勇者パーティー二軍の皆様

 無事です。



健康診断は大事

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