博士、放送スタッフに徹する
ここはとある異世界。
その異世界の町のイベント会場。
ぴこーん!
【ミミズせんべい杯 弓大会実況はじまるよー!】
町中の会員カードが鳴り響く。今回、会場へ来ない人も楽しんで貰えるように現地から生配信が行われる。テキストで配信というのがアレだが、この世界としては最先端技術である。ちなみに今日は文字早打ちのバイトが解説陣の言葉を文字起こししている。
会長「全国ミミズせんべいファン、及び弓大会ファンの皆様こんにちは。只今よりミミズせんべい杯弓大会の生放送をいたします。解説と実況は我等が聖女様とせんべい普及委員であり弓に詳しいロンさんにお越し頂いてます」
聖女「こんにちは」
ロン「こんにちは」
ロンは実は御隠居様。
会長「本日は晴天に恵まれ実に大会日和ですね。懸念された災害も遠くにそれて一安心致しました。聖女様、ご尽力頂いたようで有り難うございます」
聖女「いえいえ、無事開催出来て何よりです」
実は会場に勇者が来るのではないかと心配された。そんなことになったら女性参加者が出れなくなってしまう。勇者の目に止まったらカップルや夫婦は破局間違いなし! なんとか聖女から国王に圧力をかけて勇者を当日出張にしてもらい、開催にこぎ着けた。事実、勇者が来たら運営としては大打撃。勇者の餌食になるのが出場者かスタッフか観客かは分からないが、運営として許すわけにはいかない。聖女に感謝である。
会長「ロンさんには屋内で先程まで行われていたコスプレコンテストの審査員に続き弓大会の解説もして頂く訳ですが、コスプレコンテストの方は如何でしたか?」
ロン「はい、大変レベルの高いコンテストでした。会場も盛り上がったようで素晴らしいイベントでした。また、コスプレコンテストの準優勝の方も弓大会に出場のようです。ああ、マリーナさんですね。コスプレコンテストでは海エルフ女王の仮装で惜し気もなく美しい肌を見せておりました。他にも弓大会に参加している方もおられます。楽しみです」
そういう御隠居様は魔人の姿をコスプレだと言い張っている。
会長「はい、会場に選手が現れました。予選一組目、5選手の中で予選突破は1人のみ。予選は10本の合計得点により決定いたします」
聖女「はい。予選一組目に参加してるリリーさんの旦那さんから応援のメッセージが入っています。「リリー!娘と応援してるから頑張って!」あ、手を振っています旦那さんとお子さんでしょうか。このリリーさん、結婚前は騎士団に所属していたようですね」
ロン「それは期待です。お子さんと旦那さんの為にもいい成績を残して欲しいです」
会長「はい、会場にお越しの聖女ファンクラブ西新町会からメッセージです。『聖女様今日も素敵です』あ、あれですね。聖女応援団が垂れ幕掲げています!」
聖女「私は解説なんですが・・」
予選は通常の丸い的に十本の矢をいって競われる。真ん中が10点、一番外が1点で全合計で獲得点数とされる。
そして審判員の合図の直後、スパーン! スパーン!と的を矢が射る音が鳴り響く! そして暫く後に全ての矢が打ち終わる。得点表をスタッフが持ってきた。
会長「予選第一組予選突破はやはりリリーさんに決まりです。64点で二位以下に15点以上の差を付けて圧巻の予選突破です。おめでとうございます」
ロン「はい、ブランクを感じさせない腕前です」
聖女「惜しくも予選落ちの四名の方には参加賞として米の甘酒がプレゼントされます」
因みに甘酒は異世界でわりと受け入れられた。しかも、あつ苦しい軍人が訓練の最中に汗だくでグビグビ飲む姿が異様である。異世界恐るべし。
会長「続いて第二組。ここで我々のよく知る人物の登場です」
聖女「ええ、米農家のキャリーさんですね。ミミズせんべいの材料はキャリーさんの村の特産品です。尚、ロンさんと同じくせんべい普及委員の一人でもあります」
ロン「はい。今大会の運営の重要人物の一人ですが、競技ではただのいち選手です」
会長「ロンさんはキャリーさんを指導したことがあるそうですが?」
ロン「はい。大変真面目で努力家です。それに彼女は弓に有利な体型をしております。頑張って欲しいものです」
だが残念。
人前に出るのでキャリーは胸パットを仕込んできた! しかもお出掛け用!
折角の弓に有利な体型が台無しである。
会長「おや? 先程予選突破したリリーさんがキャリーさんに駆け寄って何やら話しています」
聖女「キャリーさんは騎士団出身です。旧知の仲なのでしょう。リリーさんは元同僚の応援をしているのでしょう」
だが、実際は二人は小声でこんなことを話していた。
リリー「キャリー、久しぶり。オークに一晩中酷い目にあったて聞いたけど大丈夫? お腹痛くない?」
キャリー「だ、大丈夫。な、なんとも無かったから・・」
リリー「あなた(アソコが)強いのね。元気そうで良かったわ」
キャリー「え、ええ、元気です」
リリー「じゃあ」
リリーの認識では完全に一晩中ヤられたことになっている。
そして、キャリーは見栄をはって仕込んだ胸パットが災いして予選落ちである。練習中は使って無かったから胸パット有りで調子を狂わせた。胸パットには神経などない。弦が胸に変な当たりをしてるのも分からない。あーあ、練習ではわりと良かったのに。
因みに素子ちゃんは予選忘れてコスプレ即売会で遊んでいて来なかった。居てもなんにもならないけど。
まあ、荷物持ち無しのソロエントリーはザラだ。
会長「予選三組目、大変変わった選手の登場です」
ロン「流石にスキンヘッドの女性は目立ちます」
聖女「荷物持ちには以前話題になった少年バズーさんです」
会長「バズーさんと言えばアレですね」
聖女「そのバズーさんです。大会宛に届いた応援メッセージの中で一番多かったのはバズーさん宛です。しかも、荷物持ちでこの人気は異常です」
会長「解説で応援メッセージ貰ってる人も居ますが」
聖女「ロンさん。三組目突破はミリア選手に決まりました。得点は72点です。いかがですか?」
ロン「はい、大変綺麗なフォームで良い選手です(ミリア、わざと外したな)」
会長「さあ、予選最終組。ここで会場が一際大きな歓声に包まれます! 予選第四組、勇者パーティーの弓士。異例のスピード出世で勇者パーティー一軍入りをしたジータ様と荷物持ちのマリー。今日も凄まじい衣装で登場です!」
ロン「これはコスプレ審査をした私もビックリな衣装です」
聖女「私と殆んど入れ違いで勇者パーティーに入った人なので良くは存じませんが多くの男性ファンが居るようです」
裏掲示板は荒れていた。
勇者が来ないせいで大会は、無事開催できたが、それはつまりジータとマリーと勇者の青姦を見れる可能性がなくなったということでもある。多くの男性ファンは仕方なくエロ衣装で我慢している状態。彼女の居ない男にとっては恋人たちがどうなろうが関係ない。
会長「最高得点が出ました! 96点! 二位のミリアさんの72点を大きく引き雛します! 如何ですかロンさん」
ロン「流石は勇者のお気に入りと言った所でしょう。この腕前は本物です。異例の出世も納得です」
会長「さて、これで予選終了です。休憩を挟みまして決勝は4名によるトーナメント形式で行います。では、30分の休憩の後、トーナメント初戦リリー選手対ミリア選手から行います。その後、ライラ選手対ジータ様の対戦です。では一回放送を終了します。提供はマルマン菓子店とザンバル芋粉店でおおくりしました」
ブツッ!
御隠居様が席を立つ。御隠居様の背中に声をかける聖女。
「どこへ?」
「キャリーを説教してくる!」
アーメン。
【提供】
マルマン菓子店
言わずと知れたミミズせんべいの製造元
ザンバル芋粉店
ミミズせんべいのトッピング材料を納める問屋
当然ファンクラブ員
【ジータ】
ほとんど見えてるだろ!って衣装を着ている。
バズー君が一度も触ることが無かったおっぱいは、弓士としては失格レベルの立派なモノだが、顔の前だけで射つ子供用みたいな形の強弓で最高点を叩きだす。それは本来コントロールが難しい弓。ジータは余程の事がなければ和弓のような弓は使わない。魔力アシストで弦を引くので小型の強弓を顔の前で引ける。
これで当てるのは流石の腕前。




