表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/37

博士、ミリアに期待する

 ここはとある異世界。

 その異世界の菓子屋さん。


 お昼の品だしと同時に外で待っていた行列が流れ始める。今日から新作のミミズせんべいの売り出しだ。

 商品情報を聞いた素子ちゃんはミミズというネーミングにぎょっとしたが、地球のミミズとは違うらしい。ミミズとはこの世界のにがみの有る野菜の葉っぱで厚くて中がねばねばしている。その葉っぱが芋せんべいにトッピングしてあるのだけども、試食一口で素子ちゃんはリタイヤした。

 不味い、不味すぎる!

 会長やキャリーがこの葉っぱが最高なのよ!とウマウマと食べていたが、解せぬ。このねばねばが許せて何故納豆は駄目なのか。異世界人は不思議だ。

 ていうか、もうせんべいと呼んでいいのかすら疑問だ。そして、お菓子屋さんは新作ミミズせんべいのお陰で今週売上記録を更新する。


「そうか、田んぼを増やさねばならんか」

「是非お願いします」

 キャリー村長は博士の了承を得た。村長はキャリーだが、財政的権力は博士と素子ちゃんが握っている。

 博士と素子ちゃんとしては次の開墾予定地は麦を作りたかったが、それは先送りになった。お菓子とラーメンへの野望も先送り。代用米粉麺でこってりラーメンを作る予定もせんべいの大ヒットでお流れになった。米が足りないのだ。

 そして一生懸命作った米がミミズせんべいになるかと思うと素子ちゃんは憂鬱になる。キャリーは次の収穫の喜びにキラキラしているが。



【ミミズせんべい杯 弓大会】


「会長、なにこれー」


 素子ちゃんが店頭ポスターのことを会長に尋ねる

 ポスターはこの店だけでなく、会長の仲の良いお店に張りまくられてる。

「でゅふふ、せんべいが儲かったし、お店の宣伝も兼ねて弓の大会をしようと思ってね。まあ、お祭りだよ」

「なんで格闘技とか剣とかしないのー」

「でゅふふ、弓はちゃんとすれば怪我人が出にくいし、予選から決勝まで1日で終わらせられるからね。

 それに出場弓士を女性限定にすれば盛り上がること間違いない!」

 まさかまた美人コンテストとか考えているんだろうか?

「なーる。まさか商品はミミズせんべい?」

「でゅふふ、当然! あと、新作優先引換券とかもつける予定だ」

「・・・・(いらねえー)」


「面白いのう、皆で出て見よう」

「博士も?」

「私は出ん」

「やっぱし」

「代わりにミリアを出して見よう」

「うーん、ミリアってアナログな武器使えるのかな?」

「わからん、だが古代テクノロジーのレベルに興味もあるしの。バズー君の許可は後で取っておこう」



 ーーーーーーーーーー






 急遽大会に出される事になったキャリー、ミリア、素子ちゃん。

 だが、少しやってみて素子ちゃんは壊滅的に下手くそで死人が出かねないということでキャリーの荷物持ちとなった。弓士には、荷物持ちが付くというのがこの国の常識。単に荷物持ちというだけでなく、弓士が目の前に集中する間の周辺警護と次の目標物選定の役割を持つ。

 まあ、素子ちゃんが荷物持ちになったからといっても問題は無い。ただの大会中の付き人だし。



「弓か」

 御隠居様が目を閉じる。

 こういうのはこの人に聞くのが一番。今ここには御隠居様、キャリー、素子ちゃん、ミリア、バズー君、博士。

「御隠居様は弓は得意なのですか?」

「まあ、得意というほどではないがお前らよりも上手いぞ」

 お前らと言っても実質キャリーだけだが。

 御隠居様が大会要項をひととおり読む。

「うむ、威力はいらんようだな。弓士の移動も無い。要はコントロールだけだな。放った矢への魔力の付加は禁止と。矢は運営が用意するのか。どれ、予選と本戦があるのか」

「せめて予選は突破したいです!」

「キャリー君、目標が低い。優勝するといいたまえ」

「いやでも・・」

 そう言って見つめる先にはミリア。

 キャリーは練習でミリアに圧倒された。機械の精度の良さなんて知らなかったし、度肝を抜かれた。

「ミリア君、撃ってくれ」

「はい」

 立ち上がってミリアが弓を構える。目標はわりと遠くの木。

 フォッ!

 ただの弓から発射された矢は木の幹に刺さる。

 フォッ!

 二射目は一本目の少し下に刺さる。

 フォッ!

 三射目は二本目の少し下。

 フォッ!

 四射目は三本目の少し下。

 四本は等間隔で縦一直線上に並ぶ。とんでもない精度。

「これは凄い!」

 御隠居様も溜息。

「さっすがミリア」

 機械の精度に対する性能を知る素子ちゃんが自分のことでもないのにドヤる。

「ミリア君には教える必要は無さそうだ。まあ、参考に見ていってくれ」

「はい」

 ミリアは見学決定。


「ではキャリー君、特訓だ。まず私がやってみよう」

 そういうと御隠居様は大弓を構えた。狙うはミリアが射ったのと同じ木。

「弓の用途は狙撃、手紙、攻撃と何種類か有るがどれも精度が重要だ。魔力を付着させなければ察知されにくい利点もある。ファイアーボールよりも速度も速い。今回魔力の付与は禁止となっているがあくまで矢のことで魔力を手元で使うには問題ない」

 御隠居様が構えて引いた弦と矢の当たる部分が小さく光ってる。そして矢が発射前なのに回転する。どんどん回転は速くなりまるでドリルのよう。


 フォッ!

 放たれた矢が軸回転しながら飛んでいく、

 ターン!

 ミリアの一本目の真横に当たる矢。

「成る程、回転させてブレを無くし、貫通力も稼ごうというのじゃな。魔力で発射前にフローティングさせれるから出来る技じゃな。面白い」

「ご名答博士。魔法が器用な者なら、これと同時に魔法でレールを作って発射まで安定させる方法もあるが、私は回転のみを主に使っている。これをするためには技術を磨くことも大事だが、矢の管理も大切だ。ブレのデカイ矢では逆効果になる」

 そういうと御隠居様は籠から矢を一本とり、皆の前で矢を魔法で少し加熱して曲がり直しをしてバランス取りの研磨をした。それに要した時間は僅か数秒。

「これは本来荷物持ちの仕事だ。できるかね?」

 キャリーとバズー君が目を丸くした。





「45点60点81点63点70点・・」

 バズー君が調整する矢を容赦なく点付けするミリア。

 かつてジータの荷物持ちをしていた時もここまでの手入れはしていなかった。

 ミリアは手に取っだけで矢のバランスを感じる事が出来るが、自分で直せる訳ではない。矢の精度は良ければ良いほど良い。バランスの良い矢が必要なのはミリアも一緒。


 因みにキャリーの荷物持ちの筈の素子ちゃんは全くやる気無し。キャリーがひいこらバランス取りの練習をしている。

 ついでにキャリーの練習に付き合うミリア。点付けは容赦ない。

「78点20点44点69点34点・・」

 尚ものっぺりサボり続ける素子ちゃん。


「荷物持ちチェンジいいい!」

 キャリーが嘆いた。




 ぴこーん!

 素子ちゃんのカードが鳴った。


「あ」

「どうしたの?」

 キャリーが覗き込む。




「会長から報告。大会にジータがエントリーしたって」




【こってりラーメン計画】

 現在麦栽培予定地が稲に取られて先送り。

 しかも、食用豚が無く、代わりの家畜を選定中。

 田んぼの隙間でニンニクの栽培はすでに始まっている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ