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博士、稲の品種改良に挑む

 ここはとある異世界。





 キャリー(中身聖女)は博士の命令で会員カードを持つことにした。身代わりで勇者パーティー館に押し込まれた聖女(中身キャリー)との連絡の為だ。


 ぴこーん!

『冷まし途中の材料が何処にあるかわからない! あと、ペルリーニって誰?』


 ぴこーん!

『入口の脇のテーブル下。ペルリーニはマナル家の当主。エロジジイだから背後気を付けて。要望も無視していいし、贈り物も受け取らないで』


 ぴこーん!

『夕方勇者会議だって。どうしよう?』


 ぴこーん!

『内容の無い会議だから心配なし。聖女の席は勇者の右側白い椅子。なんか振られたら考えておきますで逃げて』


 ぴこーん!

『ジータ、ムカつく』


 ぴこーん!

『ボードに画鋲あるよ』



 入れ替わり作戦は今のところなんとかなっている。

 キャリーも数日通って勇者パーティー館の様子は把握したし、元は騎士団で王宮は何度も入ったこともある。まあなんとかなっている。なにせ事件や紛争がなければ問題はない。

 今は勇者はジータにべったりだし、聖女の中身が抱きつきゲーム12点のキャリーになったから、更に勇者が寄って来なくなった。


 そして、村はというと・・



「博士ー、会長が販路任せとけだって!」

「うむ。せんべいは受けがいいようじゃ。あとは安定供給じゃな」


 村で稲を栽培しているが、この地は冬がなく三毛作が出来る。ただ、日本のように水が多いわけではなく、育苗だけ育苗専用水田で田植え後はほぼ畑だ。するとどうなるかというと、土が水没してないから雑草がどんどん生える。雑草の発芽を抑える効果が無いからだ。

 そして、除草が結構重労働で人手を取られる。


「今回開発した稲はこれじゃ。キャリー(聖)君、今から実験栽培するぞ」

 博士は聖女を見た目でキャリーと呼ぶ。


 と、三人は少し離れた建物に行く。

 中に入るとキャリー(聖)は驚いた。意識の無い魔人が縛られ寝かされている!

「博士さん~、ちょとお~」

 実験田は魔人の体。見たら解る、これから何をするかも。聖なる鍬でザクザク耕す素子ちゃん。かなりアレな風景だ。

 そこに博士が芽出しした試験米を植える。そして、同じ場所に何かの種をばら蒔いた。


「博士さん、それは何ですか?」

「キャリー(聖)君、これは雑草の種じゃよ。この雑草に勝てばこの品種は成功じゃ。さあ、ヒールを始めてくれたまえ」

「はいはい」

「がんばー!」


 キャリー(聖)が手を構えるとヒールが出た。体の魔量がやや少ないといっても中身はプロ(聖女)だ。実に見事なヒールの光!


「おお、流石は聖女君じゃ! キャリー君は安定して出せんし、たまに間違うしのう」

 間違ったらどうなるんだろうと思いながらもヒールを続けるキャリー(聖)。

 そして発芽した稲と雑草。

 ぐんぐん育つ稲と雑草。

 そして、稲の丈が30センチ位になったらなんか変な葉が出てきた。穂ではない。

 ひとつの茎から平均2本の変なモノ。それが少し開くと、


「カマキリ?」

 聖女は思わずそう言った。

 茎の枝に鎌を構えたカマキリの腕みたいな葉が生えている。

 そしてそのカマキリが隣に伸びてきた雑草をじょきんと刈り取った! 更に別の雑草も刈り取るカマキリ! 植物のくせしてシャキンと鎌を振る稲!葉でなくて刃だったようだ。

 普通カマキリは小虫を狩るがこの葉カマキリは雑草を刈る!


「博士さん!」

「どうじゃ、これで草刈りは必要無いぞ。この稲は自分より上に伸びようとする異種族に攻撃するDQNな性質を持っておる。刈られた草は落ちて肥料になるし、いいことずくめじゃ」

「さっすが博士!」


「こ、こんな凄いものが・・」

「うむ。これは聖女君が散々ヒールを掛け続けた稲があったお陰じゃ。あの稲は可能性の塊じゃ」

「あの稲が・・」


 過去、関わったものが新たな生命の誕生に繋がり感動する聖女。

 感動的な場面だが、実験田になってる魔人の姿がシュール。


「よし、地力があるうちに、あと二回収穫じゃ! 聖女君、ペース配分にきをつけての」

「はい!」

「らじゃー! 」


 三人は協力して夕方まで種籾を収穫して作業は終わった。

 見たところ聖女は博士達に馴染んでしまったようだ。そしてぼろぼろの魔人(実験田)は堆肥として山に捨てられた。




 ぴこーん!

「会長から連絡きたよー」


「会長はなんと言っておる?」

「せんべいの米代に売上の1割つけてどうだって」

「よかろう。そう言っておいてくれたまえ」

「試作始めるから米くれって」

「うむ、明日持っていってくれ」


「あの、博士さん。それって何の話しですか?」

「うむ。ファンクラブ会長がせんべいの製作販売を請け負ってくれたのだ。こちらは米を出荷して、会長側は塩や砂糖に菓子工房と従業員を用意する。我々の村は米代の他に、技術料として利益の1割を貰うことになった。それを材料の米代に上乗せするという話じゃ。君は知らんだろうが、会長は有能じゃよ」

「会長が・・」

 聖女にとって会長は『でゅふふ』とキモいだけの男だったが、それは違った。出来る男だ。


「だが、会長の力も君のお陰じゃ。聖女ファンクラブの会員が国中に居るからこそ出来ることじゃ。そして会長の力は会員のお陰じゃ。」

「国中に・・」

 少し涙ぐむキャリー(聖)。

 キャリー(聖)はしらなかったが、聖女ファンクラブ会員はどんどん増え、今や国最大のネットワークで組織となりつつある。




 そしてその夜。





 ぴこーん!

『隣で勇者とジータのアヘアヘ声が煩くて寝れない!』


 キレ気味の聖女(中身キャリー)のメッセージが届いた!

 あんまりあちこち移動したくなかったから聖女室に泊まったのが悪かった。



 ぴこーん!

『壁殴れ!』




【聖女の部屋】

 勇者パーティー館の最上階の一室にある。住む訳ではなくたまに宿泊する程度の所。作業場はここにある。

 同じ最上階にメイドと職員の宿直室もあるが、全員アヘアヘ声を一晩中聞かされたらしい。


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