バカンス
ゾンビ:パンデミックが発生していなかった楽園――ハワイ。今、そのリゾート地に砂浜には様々な水着を着用し、ばいんばいんとたわわな乳たちが弾んでいる。血生臭い事ばかりでは気が滅入るだろうしせっかくのハワイに来るのなら……と小型の航宙揚陸艦の試験運用ついでにヴァルキュリアスのメンバーみんなで遊びに来ている。
「ジンベエちゃ~ん。ビーチチェアでメス臭い肉まんじゅうに包まってないで遊ぼうよ~」
金髪褐色ギャルのひとみが声を掛けてきた。なかなかに際どい黒のビキニを着ているが下乳がはみ出てきそうだ。
フリッグが右側に寄り添い、背後からみどりがうなじを舐め、左腕の中にはももかが恐縮そうに縮こまっていた。先程から交互に女の子が変わって行っているがみんな好きに遊んでいた。
腕の中にいるももかにキスをすると「行って来る」と声を掛け、ひとみに腕を引かれながら海辺に移動する。みどりに思いっきり首を噛まれてしまい歯形が残ってはいるが。
「ねぇねぇっ! 何して遊ぶ? ビーチバレー? フラッグゲーム? そ・れ・と・も、アオカン?」
「アオカンも素敵で魅力的だが……。――そらっ」
海面に浮かべるボール型の浮きを生成。遠くへと放り投げた。しばらくすると着水しプカプカと浮き始める。その方向へ指を指し示すと――
「ひとみ、あの水走りであの浮きをゲットする競争をしよう。俺に勝てばお願いを聞こう。――なんでも、と、言ったら恐ろしい事になりそうなのでできる範囲でな?」
「――まじぃ? お先っ!!」
ピクリ。周囲で聞き耳を立てていた連中がダッシュで海に駆け出した。パパパパパパッ、と水飛沫を上げながら数十名もの女性達が海面を駆けている光景はここでしか見れないだろ。――っと。俺も遅れないようにしないと!!
海面を高速で駆け抜けていると攻撃の意が近づく――側頭部に迫る蹴撃。流れに沿うように掌で救い上げ上空に放り投げる。その際に水着の喰い込んだむちむちのお尻が眼福でした。な――にぃッ! 二段構えで背面と正面から挟み込むように中段蹴り。身体の力を抜き、ふわりと足先に乗ると足場代わりにして跳躍――こいつら協力して俺を勝たせないつもりだなッ! ボチャン。海面に三人が沈み脱落する。
シュゴォッ――回避ッ! 浜辺からニタニタ笑っているみつこと真剣な表情のアメリアが小石を投擲して遠距離射撃を行い支援体制に入っていた。こいつらぁっ! ガチになりやがってぇ! そっちがその気なら――
掌を包み込むように丸め。駆けている少女達に砲撃――秘儀【包撃】。空気を瞬間的にとらえ傷つけないように優しく体制を崩す人間空気砲だッ!
――ボッ! ボッ! ボッ!
次々に少女達がひっくり返って頭から海面に叩きつけられていく。海面を駆ける速度が速くモーターボートから落下したように海面を跳ねながら回転しやがて沈んで行く……。まるで水切りしている小石のようだ……。ちと、やり過ぎたか……?
だが、目標の浮きさえ獲得すればッ! そして、手の先に浮きが近づいてようやく――なっ!? 浮きを掴み取る瞬間ひとみが水着の上の部分をぺろりとめくりあげ、そこには二つの綺麗な色をしたポッチとぽよんと揺れ動く巨乳――しまったぁ!
ひとみは浮きを獲得すると天高く掲げ勝利宣言をした!!
「ジンベエちゃんに超勝ったよ~みんなぁ~! なんでも言う事聞いてくれるんだって!!」
「な゛っ!?」
再び、浜辺へと駆け出すとぽつんと海面に浮かび取り残された俺……。浜辺では何をおねだりしようかときゃっきゃと騒いでいた。その姿はとても眩しく――楽しそうだしなんでもいいや……。
敗者は大人しく沙汰を待ち。皆の分のBBQの準備をする。そこへももかがやって来ると。
「みんな楽しそうですね? 最初は戸惑いましたけど……こういう時間を忘れていた気がします……。あの時ジンベエさんと会えた私は運が良かったんですね……葉隠……いえ、みつこに感謝しなきゃですね~」
ちょっと、しんみりとした雰囲気を出す彼女。だが、みつこが背後から近づくとおっぱいを後ろから鷲づかみにして揉みしだく。
「ジンちゃ~ん、こいつ昔っから幸薄い儚い女あっぴるして男を漁ろうと涙ぐましい事を良くしてっから騙されんなよ? んで、結局若い女に搔っ攫われてんだわ。ウケル。あ、ちなみにこいつ幼い見た目してっけど私より年上だぞ?」
――ふんっ!
自衛隊は格闘技の必須科目があるのだろうか? 見事な崩拳がみつこに決まるも――両腕を重ね見事にガード。あまりの威力に腕にはチリチリと煙が舞う。
「ほらな? こいつ格闘分野で私とやり合えるぐらいつええんだよ。ま、私の方が強いけど」
「――ボコすぞ。みつこぉ……せっかく、男にちやほやされる人生最後のチャンスなんじゃけ。邪魔すんなガサツ女がぁ……いっぺん殺すぞ?」
みつこが二十八歳だったよな……ということは――フンヌッ! 右手の掌でみつこの貫き手を逸らし、左足を上げ、ももかの前蹴りを防御する。こいつらマジで殺傷できる威力を出してやがるッ!
「――ッチ! もう、私にたっぷり出すもん出したんじゃけぇ、やり逃げはゆるさんど! ちっちぇ子を産んで庭付きの家で幸せに暮らすんじゃっ!!」
「その夢は私が先に叶えちゃったもんねぇ~産んだ凛子の事、ジンちゃんがたっぷり可愛がってくれるしぃ~夢のマイホームを建てて貰っちゃったっ! アハッ」
「死んどけぇぇぇええぇぇぇぇ!!」
アメリアが真剣な表情でガチバトルを観戦している。ヴァルキュリアスは二人の勝敗で賭け事すら始めている。何気に武闘派うちの家族多いんだけど俺いつかボッコボコにされるんじゃないかな? 葉隠流道場も建ててたし。
◇
散々遊び尽くし体力が尽きた彼女達と海が見える大浴場に入っている。この場所は断崖絶壁を掘削してこっそり秘密基地を作っておいた。なるべく誰も近づかず気付かれにくい場所を選んだつもりだ。海風が吹き込んでくるが大浴場を利用しているとき以外はシャッターが下りる仕組みだ。
総勢五十人以上の裸に包まれると眼福な事も当然だが家族のような連帯感を感じる。こうして久しぶりに地球で遊んだりすることも彼女達のストレス解消になったのも良かったな。――こっそり野外でやる事をちょこちょこやって非常に満足です。
浴槽の縁に置いた冷酒を手に取りちびちびと飲む。足の間には自傷癖のあった長瀬りおんがすっぽり収まっていた。皆がいる時は一切会話が成立しないが二人になった時のマシンガントークが凄い。背中とお尻を一生懸命擦り付けてきているのは構って欲しいか愛情を感じたいのだろう。なぜわかるかと言えば二人っきりの時にストレートにりおん取り扱い説明を懇々と聞かされたからだ。
彼女の髪の毛は腰元に届くくらい長くサラサラしている。切れ長の目でいつも眠たそうにしており、八重歯が少し長い。自己紹介の時に教わったが血液フェチだそうな。良く俺に噛みついて引きちぎる勢いのみどりとは親友のように仲が良く現在、唯一会話が成立しているとの事。
取り敢えず引っ付いていれば彼女の愛情メーターが上がるらしいのでチャージしつつのんびりさせてもらう。
右手に反発力の高いおっぱいが押し付けられた。みつこだな。
「ジィ~ンちゃん。今日、ヤリに行く? すぐ行く? ぶっ殺す?」
「リゾート地の警戒度が上がったらバカンスどころではないから、決行は休暇の最終日にする予定だ。情報収集が先だ――だが……目標はもう捕捉しているんだよな……ここまで情報がガバガバなのは本当にアホかと思う」
「そうかそうか。なら……今日はすんごい特殊プレイでもすっか?」
ギョロリ。大浴場の視線が集まって来る。みつこぉ……。
大浴場が凄い事になった――後はわかるな? まさかあんなことをみつこがするなんて……。涙を流しながら喜んでいたな……。気を失う最後のセリフは「サイッコウッ……」だったな。
◇
「どういうことだ、どういうことだっ! どういうことだなのだッ!?」
米国との取引で日本の領土を正式に割譲する事で儂たち国会議員数百名の家族をハワイへ亡命する事に成功した……売国奴と言われようとも安全には変えられまいよ!!
『おい、一体警備はどうなっているんだ! 黒田防衛大臣と連絡が付かないぞ総理!! まったく契約では――――あぎゃっ』
「おいっ!! 山木!! ――っち! 本当にどうなっている……」
最初は議員ので誰かが首なしの惨殺死体で発見された事から始まった。玄関の真ん中に綺麗に揃えられた生首……護衛に付いていた軍人も一緒に、だ。それから一方的に繰り広げられる殺人劇。米軍内でも軍人が多く出動し鎮静化を図っているが銃声と悲鳴が通信装置から伝わってくる一方……。
「死にとうない死にとうない死にとうない……儂は老衰まで遊んで遊んで遊びつくすんじゃ……役に立たん軍人どもめッ! 儂の代わりに死んでいいから救っておくれ……尊い儂の命じゃ! 内閣総理大臣だる高き血じゃ! 守れ! 守れ! 守るんじゃよ!!」
夜遅くまで乱痴気騒ぎをした部屋の中には娼婦共がクスリと酒に酔って寝たままじゃ……。この際殺人鬼にはこやつらを囮にして、どこかに隠れて凌ぐしか……。
「――老害の妄言もここまでくるとファンタスティックな脳みそだな。中身入ってんのか?」
グチュリ。なにか儂の腹に突き刺さり暖かい――あ゛ぁ……。痛い痛いよぉ……。
「あ゛あ゛ぁぁぁああぁ、いだい、いだい、いだい、いだいよぉ……儂は死にとうない死にとうないんじゃよ……遊んで遊んで遊び足りないぃぃぃいいぃぃっ!!」
掻きまわされる掻きまわされる、儂の大切な身体がグリグリと――
「これ、本当に一国の最高権力者だったのか? 夢じゃないよな? 高度なギャグか?」
「……はぁ。今までの議員の方がマシ……なのか五十歩百歩なのか……。何もかもがハエのようにうっとおしい。さっさと殺していくぞ」
何かが抜き取られると身体が冷たくなっていく……そんな……まだ、死にとう……ないんじゃ……。
「これで最後か、あっけないものだな」
意識が薄く……なって……。
「死ね」
視界が回る。回る。回る。あひゃ――
◇
肉の焼ける焦げ臭いが室内に漂う。酒に酔って寝ている娼婦は昏睡状態に陥っているようだ。――ふむ。放置すると不味いな。
通信機を作動させテーブルに置いた。これで軍人がここに駆け込んでくるだろう。その時にでも彼女達は救出されるだろう。
『お優しいこって』
通信機に入らない程度の声でみつこが囁く。すでにヒートブレードは納刀している。すでに数百人もの人間を斬り刻んでスッキリしたのだろう。――戦闘後はセックスが激しくなるのでもう少し落ち着いて欲しいのだが……。
『ついでに沖に停戦している軍艦でも沈めるか?』
『う~ん。人類の軍事力を残す塩梅難しいよなぁ~、ジンちゃんそこんとこどうよ?』
『まもなく人類にテコ入れの兵器を投入していくから交易の為の軍艦はあった方が……いいだろうな』
『あいあい。――んじゃ、帰ってしけこもうぜ? 昂ってしょうがねえ……秘密基地も小娘たちが月に帰ったしジンちゃんと二人っきりで楽しめる……ね?』
一体子供を何人作るつもりだ……。派手な殺戮現場でする会話でもないがこれで報復は完了した。後は人類の後押しを……したくないけどするしかねぇか。機巧の神様の使命だからな。みつこの奴……「もう、あるけな~い」って背中に抱き着いて来て本当に歩く気がないな。しょうがない。少しは甘やかしてあげようか。