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取引はもちろん

 仮設ドックの屋上に空気中に漂う微細なキセノンを収集し固形化する装置を開発し設置した。人類では再現不可能なSF装置だがなぜ設置したかというと……。


「やっぱロボットは空を飛ぶ……まではいかないがある程度滞空できないとな」


 空間投影モニターに表示されているのは現代でも製造可能なイオンスラスター。その推進剤であるキセノンの携行性を上げるための固形化技術と数メートル程の機体なら滞空できるように推力の計算や機体のショックアブソーバーの機能をコクピットに備え付けるか脚部に重点を置くか……何度も何度もシミュレートしている最中だ。


 まあ。次元保管庫を使用している割には現実世界での反重力装置のシミュレートはすでにできているのだが、必須素材である特殊鉱石が地球外にしか存在していないという……。せめて実現可能な範囲で再現できる技術が固形キセノンを推進剤に採用したイオンスラスターなのだ。


 ビル程度なら浮上して超えることが出来るがスラスターのオーバーヒートする為、使用時間に制限がある。なので“飛行”ではなく“滞空”が限界なのだ。


「超技術……超技術ねぇ……。俺が再現可能な技術はどうしてもリアルロボット寄りになってしまうな。異文明の技術の中にはスーパーロボットの製造するのに必要なグルゼニウム鉱石や、OC元素、ファンタジー物質な魔石なんかもあるみたいだけど……欲しい……とっても欲しい資源だ……なんて夢が無いんだ地球産よぉ……地殻深くまで掘り進めば目づらしい鉱石を見つけられるかもしれないけどそれなら月に行った方が早いよな」


 次元保管庫内で設定した無重力下での合金の生成には成功している。航宙艦の装甲素材自体はできているのだ。必要なのは製造する時間だな。――どこかに精神感応物質だったり重力鉱石落ちてないかな。落ちてないよな。


 イオンスラスターの構造自体は簡素なので、まりかの専用機であるM.A.Sの基礎フレームに換装している。肩部には威力過多ぎみなレールガンと胸部には対人用ガトリングコイルガンを装備している。コイルガンの威力はあくまで対人用なので鉄板を貫いたりなどはできない。レールガンは……まぁ、戦車や航空機を撃墜する為に装備した。そうそう使用する事は無いと思うが念のためだ。


 自衛隊などの通常兵器である火砲装備を使用するにはガンパウダーや爆薬が必要なのだが将来的に兵装は光学系をメインで開発していきたいために電磁投射系の兵装である程度統一している。通常兵器の延長線上にあるのにわざわざ俺が二番煎じの兵器など開発しても……なぁ……って感じだ。


「ああ、煮詰まってきているな。ちょっと自衛隊の指揮官の所に取引でもしに行きますかね……そろそろこの拠点を怪しんでそうだし」


 かすみちゃんの報告によれば昼過ぎに自衛隊の指揮官が事情聴取に来たそうなので顔を出して軽く説明でもしておくかね。



 仮設指揮所には夜遅くになっても明かりが灯っているようだ。中には前回顔見せした指揮官っぽい男とオフィスラブを目論んでいる綺麗なねーちゃんがいるな……。


「失礼する――っと、前回のように撃たないでくれよ? もし撃たれたら殺さなきゃいけなくなっちまう」


「ッ失礼した。ゾンビの大群に暴徒化した民間人の対応と気が立っていたからな……山田君も銃を降ろしてくれ」


「ッチ。汚物が……ゾンビに喰われて死んでいれば良かったものを……」


「うわっ辛辣……。そこのダンディな上司とうまくいっていないのかね?」


 携行している自動拳銃が駄目だからって装備しているナイフが良いわけじゃないのよ? このねーちゃん気が短くない? 椅子を次元保管庫から取り出すと腰を下ろして腕を組む。話を聞く態勢になった事が分かったのか口を開く上司さん。


「改めて自己紹介しよう。この自衛隊の防衛拠点の最高責任者である山岸のぼるだ。こちらは山田れいこ一尉だ。事情聴取と言う訳ではないが……いくつかの質問と狭間君が得意とする兵器の取引が自衛隊とできるかどうかをお聞きしたい」


「取引ねぇ……。まずは目的を遂行する上で必要な項目を言ってくれなくては困るな。任務内容……ゾンビの掃討を目的とするのか救助作戦を優先するのか拠点防衛を強化したいのか……。まぁ、山岸ちゃんの中の優先順にを言わなきゃな」


「何が山岸ちゃんだ……私だって呼んだことないのに……」


「山田君……のぼるくんでも、のぼるちゃんでもそう呼んでいいからちょっと大人しくしておいてくれ……そうだな。優先順位は全てが上位……とまではいかないが現在の日本の状況の概要と様々な状況説明が前提となるが時間は大丈夫かね?」


 もちろんオーケーの意を示した。山田君ちゃんは呼び名を許可されて舞い上がっているので使い物にならなさそうだ。







 室内に投影されたモニターと日本国内の自衛隊の生の情報を入力して擦り合わせていく。現場の状況は中々通信回線に乗らなかったりするからね。無線でのやり取りや紙媒体だと収集がグンと難しくなってくる。


 九州地方は日米合同作戦で都市制圧作戦決行中。アジア圏での核兵器の使用、汚染が確認され一都市が壊滅。米国では人的被害を抑えれ入る者のジリ貧状態。日本国内は……地方に大規模の避難を行うも小規模な感染拡大が止めることが出来ていない状況。各発電施設を掌握できているものの危機的状況は変わらずか……。


 ゾンビ:パンデミックから十日ぐらいか……頑張っている方ではあるが直にインフラが壊滅していきそうだな。


「絶望的だな」


 その俺の一言に向かいに座っている二人は顔を曇らせた。モニターには日本国内の感染状況や戦力図が数値化されどう予測しても絶望しか見えていない。


「……狭間君の未知の技術を持つ勢力へのコンタクトをお願いしたい……。このままでは……このままでは日本と言う国がなくなってしまう……」


 う~ん。確かにマズイ。色々と試算するも一番足りないのは……戦力か。


「食料自給率や医療関係はなんとか持ちこたえている、か。一番の課題は重火器のなどの戦力の枯渇。う~ん――――これなんかどう?」


 遠隔操作型に切り替えれば安全圏の確保はできるがどうしても通信可能距離と操縦の精密操縦の関係でパイロットは必要だ。M.A.Sの量産型の製造工程を簡略化したほぼ使い捨てと言ってもいい機体の詳細を二人見ているモニターに表示させる。


「これは……」


「M.A.S(マシン・アームド・スーツ)だ。見た事があるだろう? あの機体よりも性能を向上させ量産化にこぎつけた逸品だ(劣化も劣化品だけど)脚部を四脚に換装してあり様々な地形の走破性が向上している。背部コンテナに装備や人員を乗せることが出来るように改良も行っている(乗り心地最悪だけど)。搭載されているエンジン部のも高性能化してあるためにそこらへんに落ちている車のガソリンでも十分燃料として使える汎用性を追求している」


 フレームの数も減らしており次元保管庫内に製造プラントを作っている。自衛隊の戦力確保に必要だろうと用意しておいたのだ。特異技術もそこまで使われていないし、OSにもプロテクトが掛けてある。反乱防止機能として自爆機能ももちろん搭載済みだ。


「戦車一両よりもコストが掛かっていないし。戦車程速度は出ないが群がって来るゾンビ共をいちいち戦車砲で撃退できないだろう? アームに装備されている武装はチェーンソータイプやソードタイプへ換装できるアタッチメントも付いている。燃料満タンで数時間……予備の燃料タンクを積んでおけば半日は稼働可能だろう」


 そんなキラキラした目で見ないでくれよ。もちろんこれは取引なのだよ?


「その……M.A.Sは何機納入できるのかい? できれば……できればだが……今、作戦行動可能な部隊が二十部隊あるのだが……」


 ここで取り出したるはポイント交換表。女子高生集団に無限ポイント稼ぎをされたのでその対策も練っているのだ。


≪お・し・な・が・き≫


商品購入の為のポイント交換表(男性NG・各種提供商品は要相談・武器在ります)


・握手(一人一回のみ)

1ポイント


・ハグ 

10ポイント


・おっぱい1揉み

1000ポイント


・ほっぺにちゅう

1000ポイント


・おパンツ五回までOK(新品の商品を提供致しますので更衣室をご利用ください)

10000ポイント


 おパンツはポイント効率が良すぎる為五回までと制限させてもらった……。決して欲しく無いわけではないがキリが無くなってしまう。ポイントで交換できる物資の評も手渡す。食料品や衣料品は製造コストが低い為お安くなっている。さすがにH.P.M.SはNGだあんなもの装備して逆襲されたら怠い。大型の機体であればいくらでも制御権は握れるし対策を組み込みやすいのだ。


 おや、なぜか二人の表情が固まっているのだが……。


「………………この女性の下着とM.A.Sがほぼ等価交換なのは……冗談では……無いようだね……はぁ……この事から推察するに勢力……ではなく君個人の力が大いに関係しているようだね――この、空間投影型のモニターといい兵器といい……」


「もちろん俺一人の独力だが? ああ、反乱防止のためにリバースエンジニアリングをできないようにプロテクトをかけるからそれは了承してくれ。自衛隊自体は立派な行動をしていると思うが碌でもない人間はどこにでもいるからね? それに美人のねーちゃんのパンツ一枚と交換してくれるなんてとっても良心的だろう? ああ、提供する機体は無制限ではない何事も限度はある」


 乗用車数台の資源があれば一機製造できる程度のコストまで下げることはできたが。


 脱ぎ脱ぎと頬を染めながら視界の隅でパンツを脱ぎ始めている山田君ちゃん……。その愛しの上司の為に仕方なく……仕方なくなんだからねッ!? の表情……愛い愛い。あ、テーブルにパンツを叩きつけてきた……。仕返しに脱衣シーンをモニターに投影してやろうっと。この映像は永久保存ね。


「なッ!! 貴様ぁぁぁぁああぁぁぁぁぁあぁッ!! 消せぇえぇぇぇ!!」


「やだよ。取引じゃん。んで? 何処に用意する? 他にも食料や防刃防汚の素敵な装備もあるんだけど。キャンプ用品や化粧品にお菓子だってあるよ?」


「今日はもう遅いので明日の朝にお願いできないだろうか……? 女性隊員に希望を募ってみる……信じてくれるか分からないがな……」


 それなら、と。指揮所の外にM.A.Sを一機ドドンと出しておく。おパンツをくれた山田君ちゃんの為に可愛い下着にTバックなどを色とりどりにテーブルに並べた。


「…………ッチ」


 山田君ちゃんは可愛い下着とTバック両方引っ手繰るとそそくさとTバックの方を履きだした。可愛い方も気に入ったのかな? 今後の取引先としておまけに高級珈琲豆にお菓子をテーブルにどっさりと出しておく。


「これで信用できるかな? それと殺人犯扱いされている事は知っているけれど今のまま扱いを変えないのならば亡国の憂き目をみるだけだよ? 気を付けておいてね」


「わかった……私の権限で全てを改善はできないがここに来る間は問題ないように手配して置く。珈琲豆は助かる。嗜好品の支給が途絶えていてね……また、明日会おう」


 カッコよく去ってい――かなくてもいいや。今日はドック兼私室でのんびり寝るとしようかな。



 パタン。狭間君は指揮所のドアから出て行くと部屋の中には沈黙が漂う。


「M.A.S……凄い機体だな……私にも子供心と言うものがあったらしい……」


 窓から見える暗がりには五メートル程の重機のような多脚型の人型ロボット……。ゴツゴツした重機を思わせる無骨なフォルムはとても……そう、とても好みだ。


 これで救助活動に弾みが付けばいいのだが……。それとこの機体は拠点の拡張や工事にも使える汎用性の高いものなのだろうと予測する。


「山岸指揮官……いえ、のぼるさん。ロボットに夢中になるのもいいですが女性自衛官にはどう説明なさるので? 私はあなたの為なら……とパンツをあの下品な男に奪われたのですが?」


「!! そ、それはだね……山田君……」


「れいこ。――れいこって呼んで頂けるなら……チャラにしましょう」


「よ、喜んで呼ばせてもらうよ……」

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