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安息と散歩

間に合いました。

よろしくお願いします。

 次の日。


 あのドタバタ騒動が一応終わりを告げ、私のごくごく一般的な幼少期は同時期に終わりを告げたのだった。


 今までは二歳と言う事で専属のメイドも付いていなかった。しかし、フィリィとの結婚(今は婚約状態)が決められてからは、元々メイドであった彼女が私の専属メイドになった。


 そんなこんなで、イレギュラーな状態は割と長く続いてしまっている。


 これで、良いのだろうか?


 いや、ほらさ?可愛いんだよ。そりゃもう、この世のどの女性よりもフィリィが可愛いのは分かっている。当然だろう、惚れたのだから。


 だけども、あんな状況に任されて決断を決めてしまっては絶対に彼女は後悔する。


 一緒に居てくれるのは私的には大歓迎ではあるけれど、その、何かトリガーになるような出来事が欲しい。そう、私を好きになるような。


「んな事わかるかっ!!」

 

 私は考えた果てに思考回路が全ロストし、小さな体で抱きしめていた柔らかいボールを、床に叩きつけた。


 ボヨン!!ボヨン!!とはならず、スタッ!と情けない音を立ててボールは止まる。


 ボールの停止によって免れた静寂。


 この時間がとても長く感じられたのは、昨日までの数日間がとても濃い時間だったからだろう。


「嗚呼、安息最高」


 神に感謝とは正にこの事。


 こんな時間がいつまでも永遠に────


「────リア様!お散歩に行きましょう!!」


 続かなかった。


 丁寧に開けられたドア、そこから飛び出す元気一杯のフィリィ。


 彼女の登場によって、私は休日のニートムーブを終わらせる事になり、二歳の幼気な女の子を演じる羽目になるのだ。


 さて、動きますか。


「フィリィー!!」


 我ながらナイス演技だったのかも知れない。


 あの日の夜、少しずつ両親たちとの会話の中で使える言葉を増やしていったのだ。だから、フィリィと言っても何も問題はない。


 流暢に言葉を喋っても大体は容認されて来ている。良いぞ、この感じ。


 私はフィリィの決してあるとは言えない胸元に飛び込み、ぎゅっと抱きしめて見せる。


 硬いけど普通に壁だけど、この抱きしめた時の安心する良い匂いは最高だ。


 と言うより、私は元々貧乳好きなのだ。


 分かるだろう?諸君。貧乳は最高なのだよ。


「リア様ー!よしよし、やっぱり可愛いー!」


 あんな事態があった翌日の私を、彼女はこれでもかと可愛がってくれる。なんて優しい人だろう。


 でも、何だろう。


 とても、私といることを嫌がっているようには思えない。先程までの私の考えは、日本人ならではの杞憂なのだろうか。


 結局それも、共に生きれば分かる話なのかも知れない。


「フィリィ、今日も!可愛いー!」


 見上げるようにして、彼女の蒼色の瞳に視線を移し、自分が出せる最大限の笑顔を振り撒く。


「ああー!!可愛いいい!!」


 本音を言った方が彼女には刺さるようだ。覚えておこう。


 フィリィに手を握られながら、私たちは広い屋敷の中にある庭を散歩していた。


 流石、異世界。庭に存在するありとあらゆる植物に手入れが施され、一つの手抜きも見られない。


 これを私のいた世界でやろうものなら、どれだけの維持費がかかる事やら。


 前世が男である私でも圧巻の光景なので、多分だが万人に愛される芸術なのだろう。良いね。


「フィリィ、薔薇!!」


 私はその中の、一つの赤い薔薇を指差す。


「赤薔薇ですね。赤薔薇が作られた経緯はあまり好ましくはないですが、美しいです」


 なんだろう、凄い不穏な気配が漂う。


「好ましく、ない?」


「はい」


 フィリィの表情は暗い。赤薔薇について説明し始めてからだ。


 地雷を踏む前に話題転換をしよう。


「あれはー?」


 次に指差したのは青薔薇。これなら、赤薔薇と違って不穏な気配も佇むまい!!


「これは青薔薇ですね。こちらも、何と言いますか‥‥不憫な理由で生まれたものではありますね‥‥」


 駄目だぁ⤵︎。もうどれを選んでも暗いよ。暗いよ、話題が。


 でも逆を取れば、彼女はピュアなのだろう。


 一般的な人は、いちいち花の生まれた由来を聞いても顔を暗くする事はない。要するに、感情移入をし過ぎないのだ。


 だからこそ、他とは違うフィリィの可愛さは引き立つ。彼女の良いところだ。


「それはそうと、リア様!明日は何を致しましょう?今日はもう既に夕暮れに近いですから、今から明日の事を考えませんか?」


 彼女は上手く話をすり替えた。けれども、確かにもう一日は終わりかけている。


 フィリィの意見には賛成だ。

 

「良い!それ、したい!」


 なので最高の笑顔を込めて、返答をする。


────刹那。


「とても華やかな光景に、誠に申し訳ないのだけれど‥‥貴方たちには死んでもらうわ」


 黒髪の、ローブを纏う女性が私たちの前に降り立った。

次回も早く!!!

良ければ、感想や評価、ブックマークもよろしくお願いします。

初作品ですので、至らぬ点が多いです。

そんな作品を読んでいただきありがとうございます。

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